労働・雇用

ブラック企業規制法案の提案にあたって

「ブラック企業規制法案」要綱

                    2013年10月15日  日本共産党


 日本共産党は、若者をはじめ働く人間を、過酷な労働に追い立て、モノのように「使い捨て」「使いつぶす」ブラック企業を国政の大問題として訴えてきましたが、参議院選挙の前進で獲得した議案提案権を活用して、国会にブラック企業規制法案を提出しました。

法案の概要――違法行為へのペナルティー強化と、ブラック企業の実態を社会に知らせる情報公開をすすめる

 ブラック企業は、現行法の弱点をかいくぐって、違法行為を隠ぺいしたり、脱法的な手法で過酷な労働を強いています。日本共産党が提案する法案は、こうした「手口」を封じて、ブラック企業の無法を許さないことを目的としています。

 法案は、以下にのべる3つの柱で構成され、違法行為へのペナルティーの強化や長時間労働の制限など“規制強化”と、離職率の公表などの情報公開で社会的な批判と抑止力をつくるという、二つの方向でブラック企業を規制します。

 同時に、この法案は、違法なサービス残業の根絶やパワハラへの規制など、いわゆるブラック企業にとどまらず、多くの労働者に共通する問題を解決する力にもなります。

(1)長時間労働を是正します。

――管理職を含めた全員の労働時間を正確に記帳した台帳をつくり、本人や本人の同意を得た職場の労働者や家族、友人が労働時間を閲覧できるようにします。みんなで職場の“働かせすぎ、働きすぎ”をチェックして、長時間労働を是正する仕組みをつくります。

――サービス残業には残業代を2倍にする制度をつくります。サービス残業は会社にとって「割に合わない」ものにして抑止力にします。

――年間の総残業時間を360時間に制限します。

――一日の勤務が終わったら次の出勤時間まで最低11時間の“休息時間”を保障します。

(2)離職者数の公表など労働条件や職場環境が求職者(就職活動をおこなう学生・生徒を含む)に正しく情報提供できるようにします。

――企業が採用数と離職者数を公表するようにします。

――就職を希望する会社がブラック企業に該当するかどうかの問い合わせに、ハローワークなどの公的機関が応じるようにします。

――フリーペーパーなどの求職広告で横行している、給料を高額に見せかける誇大宣伝や虚偽記載をやめさせます。

(3)パワーハラスメントをやめさせます。

 厚生労働省は、パワハラ行為をおこなった企業に対して、助言、指導、勧告をおこない、勧告に従わない企業名を公表します。

(法案の内容は、別添の「ブラック企業規制法案要綱」をご参照ください)

 

提案理由――ブラック企業の規制は、若者や労働者、日本社会と経済にとって緊急課題です

 日本共産党が、ブラック企業規制法案を提出したのは、大きく2つの理由があります。

  第一は、若者を「使い捨て」「使いつぶす」働かせ方を放置することはできないからです。

 いわゆるブラック企業では、採用した労働者を過重な労働に駆り立て、次々に離職に追い込むという、大量採用、大量離職・解雇を前提にした経営が行われています。

 会社や上司の命令に「絶対服従」させるために、暴行などの身体的攻撃、暴言、侮蔑、脅迫による精神的な攻撃など、パワーハラスメントも横行しています。厚生労働省の見解でも「過大な要求――遂行不可能なことの強制」はパワハラに該当しますが、深夜まで必死で働かないととても達成できない過大な目標や仕事量を押しつけ、長時間・過密労働に駆り立てることも常態化しています。こうした中で、多くの若者が心と身体の健康を壊して退職に追い込まれていきます。

 目先の利益や経営者一族に巨額の富をもたらすために、こんな働かせ方を強いることは許されません。どんな企業であれ、そこで働く人たちの生活と権利、人間としての尊厳が踏みにじられているときに、それを是正することは政治の責任です。

 第二は、ブラック企業を放置すれば、日本全体の労働条件の悪化をもたらし、日本の企業経営とそこで働くすべての人たちの生活に、大きな被害をもたらすからです。

 ブラック企業は、特定の企業とそこで働く人たちの問題だけではありません。放置すれば「普通の会社」は、違法行為や非人間的な働かせ方で低コストを実現するブラック企業に淘汰されてしまいます。対抗上〃ブラックな働き方〃を押しつける企業が増えていくことにもなります。すでに、ブラック企業は、ITなどの新興産業などからはじまり、飲食などのサービス業、衣料品、運送など様々な産業や分野の大企業に広がっており、その規制は日本社会と経済にとっても急務です。

 

非正規拡大の労働法制の規制緩和を許さず、人間らしい雇用を実現するルールを

 ブラック企業が成り立つのは、「正社員で募集すれば、いくらでも人は集まる」という労働市場になっているからです。働いている人は「辞めたら正社員での再就職はできない」という恐怖感から、連日、深夜になるまでの長時間労働にも、パワハラやいじめにも耐え、しがみつかざるを得ない状況に追い込まれていきます。

 派遣法をはじめとする労働法制の規制緩和で非正規雇用を労働者の4割近くにまで増やしたことが、ブラック企業の存立基盤となっているのです。ところが安倍内閣は、「派遣を常用雇用の代替にしない」という大原則を投げ捨て、正社員を派遣に置き換えることを完全に自由化し、禁止された日雇い派遣も復活させる労働者派遣法の大改悪案を来年の通常国会に提出しようとしています。「解雇自由」の「ブラック特区」もつくろうとしています。こんなことをすれば、非正規雇用がもっと増え、若者が正社員になる道をいっそう狭め、ブラック企業を増やし広げることになってしまいます。

 ブラック企業での無法な働かせ方を規制する新しい法律をつくる世論と運動を広げることと一体に、「使い捨て」「使いつぶし」の働かせ方を広げた労働法制の規制緩和の流れを転換させて、人間らしい雇用のルールをつくることは重要な課題となっています。

 

ブラック企業の「使い捨て」の働かせ方をやめさせるために、ともに力をあわせよう

 日本共産党は、国会に提出したブラック企業規制法案の真摯な検討と審議を行うよう、すべての会派に要請します。あわせて、労働者、労働組合はもとより、経営者のみなさんも含めて国民的な議論で、ブラック企業を規制し、「使い捨て」「使いつぶす」働かせ方をやめさせる法改正が実現するよう、ともに力をあわせることをよびかけます。

 同時に、法改正を待たなくても、現行法でも、違法な長時間労働や人間としての尊厳を踏みにじる人権侵害の行為はやめさせることができます。ブラック企業では、違法・脱法行為が当たり前のように行われています。世論と運動で包囲し、違法行為をやめさせるよう力をあわせることをよびかけます。

 ブラック企業の無法から、労働者、若者の生活と健康、権利を守るための共同をすすめようではありませんか。日本共産党は、みなさんとともに力をつくします。


「ブラック企業規制法案」要綱

2013年10月15日

日本共産党国会議員団

 日本共産党は、「ブラック企業」をなくすために、「ブラック企業規制法案」を提出します。本法案は、企業の違法行為へのペナルティーの強化や労働行政による是正指導などの強化とあわせて、「ブラックな働かせ方」の実態を情報公開することで、「ブラック企業」への社会的批判と抑止力をつくる方向で策定したものです。日本共産党は、すべての会派に賛同をよびかけ、国民的な議論を起こして、「ブラック企業」の「手口」に即した法改正を実現するために全力をあげます。

 

1.長時間労働を是正します

 (1)労働時間を正確に把握・記録し、職場から長時間・ただ働き残業をなくす仕組みをつくります

 各事業場ごとに労働時間管理台帳を作成し、管理職をふくめた全労働者の労働時間を正確に把握・記録することを使用者に義務づけます。職場から労働時間をチェックすることによって、長時間・ただ働き残業をなくし、「追いつめられている」労働者を救済することができるように、本人はもとより、本人の同意があれば、職場の労働者や家族、友人も、労働時間管理台帳と賃金台帳を閲覧できるようにします。

 (労働基準法の一部改正 第108条関係)

 

 (2)年間残業時間の上限を360時間にするとともに、「連続出勤」も制限します。

 残業時間については、年間360時間が基準として定められています(労働省告示154号)。これを労働基準法に明記して、年間残業時間の上限を360時間とします。1週間、1カ月等の残業時間については、労働省告示にもとづくものとします。厚生労働省の過労死基準(月80時間以上の残業)をこえるような残業時間を可能にしている三六協定の特別条項を廃止します。

 労働基準法は、法定休日について、4週間をとおして4日の休日をあたえるとしているだけなので、形式的には最大48日連続勤務も可能になっています。このために休日を与えない違法な連続出勤が表面化しにくい状態になっています。連続出勤を規制し、せめて毎週休めるようにするために、7日ごとに1日の法定休日を保障します。

 (労働基準法の一部改正 第36条関係)

 

 (3)連続11時間の休息時間を保障します

 EU(ヨーロッパ連合)は、一日の労働が終わり、次の労働がはじまるまでのあいだに連続11時間の休息時間を保障することを法制化しています。この経験を参考に、企業は、終業から次の始業までのあいだに連続11時間の休息時間を保障するよう努めることとします。

 (労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の一部改正 2条関係)

 

 (4)「サービス残業」が発覚したら残業代を2倍にする制度をつくります

 ただ働き残業(「サービス残業」)は、労働基準法違反の違法行為ですが後を絶ちません。企業に罰則を科すとともに、サービス残業をさせたことが発覚したら、労働者に払う残業代を2倍にして支払わせます。「サービス残業」が企業にとって「割に合わない」ものにすることで、抑止力とします。

(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の一部改正 第15条を新設)

 

2.離職者数を公表し、就職情報・広告の適正化をはかります

 (1)離職者数を公表します

 「ブラック企業」の特徴のひとつは、大量採用・大量離職です。求職者(就職活動をおこなう学生・生徒を含む)が、就職を希望する会社が「ブラック企業」に該当するかどうかを判断できるように、新規採用者数と退職者数を企業が公表する制度をつくります。

 (職業安定法の一部改正 第41条関係)

 

 (2)求職者からの問い合わせに答える制度をつくります

 求職者(就職活動をおこなう学生・生徒を含む)が、就職を検討している会社が「ブラック企業」に該当するかどうかを問い合わせた場合、行政機関がこれに答える仕組みをつくります。ハローワークなどの公的機関は、労働関係法令の違反にかかわる事例について、求職者が問い合わせた場合、情報を提供することとします。また、厚生労働省は、ブラック企業の「手口」や事例をまとめ、公表することとします。

 (職業安定法の一部改正 第51条関係)

 

 (3)賃金の内訳を明記させ、誇大広告、虚偽記載をやめさせます

 フリーペーパーなどの求人募集広告では、残業代込みの賃金総額など労働条件を正確に明記しないもの、あるいは労働条件を明示しないものが目立ちます。「就職してみたら話がちがった」という事態をなくすために、企業が作成する賃金台帳や求人募集広告に記載する賃金について、賃金形態(月給、日給、時間給等の区分)、基本給、定期的に支払われる手当、時間外手当、通勤手当、昇給にかんする事項等を明示することを企業や募集をおこなう者に義務づけます。

 (職業安定法の一部改正 第5条関係)

 

3.パワーハラスメントをやめさせます

 達成できないノルマを課して精神疾患や過労死・過労自殺に追い込んだり、「追い出し部屋」に隔離し、繰り返しの面談で退職を強要するようなパワハラをやめさせます。また、退職を希望する労働者に「違約金」を請求して辞めさせないようにする違法行為をきびしく取り締まります。

 厚生労働省は、パワハラ行為をおこなった企業に対して、助言、指導、勧告をおこないます。勧告に従わない企業名を公表します。パワハラの是正指導を労働局に求めた労働者に対する不利益とりあつかいを禁止します。

 (労働安全衛生法の一部改正 第71条関係)

 

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