JCP

日本共産党第25回大会

文字の大きさ : [] [] []
党大会特集へ

第25回党大会にたいする中央委員会報告

幹部会委員長 志位 和夫

1月13日報告、1月16日採択


(目次)

決議案第1章(日本政治の「新しい時期」とそれをつくりだした力)について

決議案第2章(「過渡的な情勢」のもとでの日本共産党の任務)について

決議案第3章(大きく変わりつつある世界と、日本共産党の立場)について

決議案第4章(国政と地方政治での躍進、強大な党建設をめざす方針)について

決議案第5章(激動の世界と未来社会への展望について)について


写真

(写真)報告する志位和夫委員長=13日

 代議員、評議員のみなさん、こんにちは(「こんにちは」の声)。CS通信、インターネット中継をご覧の全国のみなさんにも、心からのあいさつを送ります。私は、中央委員会を代表して、第25回党大会にたいする報告をおこないます。

 この大会は、自民・公明政権の退場と、国民の新しい政治への本格的探求という、激動的情勢のもとで開かれました。

 大会決議案が発表されて1カ月半が経過しました。決議案は、全党討論で、全体としてたいへん積極的に受け止められ、深められました。「過渡的な情勢」と日本共産党の三つの任務、世界の動きが日本の社会進歩の事業の“力強い味方”となっていること、参議院選挙勝利の条件と方針、中期的展望にたった「成長・発展目標」の提起など、決議案の新しい解明や提起が、新鮮な感動を持って受け止められ、党に新たな活力をつくりだしています。

 中央委員会報告は、決議案の章ごとに、全党討論をふまえて、解明が必要な問題、情勢の進展にそくして補強すべき問題を中心におこないます。

 討論で寄せられた修正・補強意見については、大会の討論での意見もふくめて、一つひとつを吟味し、大会討論が終わった時点で、修正・補強した決議案を提出することにします。

決議案第1章(日本政治の「新しい時期」とそれをつくりだした力)について

 まず、決議案第1章、「日本政治の『新しい時期』とそれをつくりだした力」について報告します。

 第1章は、日本の現状を大局的にどうつかむかについてのべています。この章では、総選挙での国民の審判が、「過渡的な情勢」と特徴づけられる「新しい時期」を開いた、と現状を規定づけています。

 「過渡的」というのは、一方では、戦後日本で反動政治の一貫した担い手となってきた自民党政権――この10年間は自民・公明政権――に退場の審判がくだり、大きな前向きの変化がおこったが、他方では、日本の政治は、反動政治の内容である「二つの異常」――「異常な対米従属」「財界・大企業の横暴な支配」から抜け出す地点にはまだ到達しておらず、自民党政治に代わる新しい政治とは何かという国民的探求はまだその第一歩を踏み出したところだという、今日の情勢の特徴を表現したものであります。

 そして、決議案では、国民の世論と運動、日本共産党のたたかいが新しい情勢を開いた力であったことを強調しています。

 全党討論をふまえて、いくつかの点をのべておきたいと思います。

国民の政治変革への願いは、情勢全体を前に動かす力として働いている

 まず、強調したいのは、2009年8月の総選挙で、国民が、長らく続いた自民党政権を主権者の意思で倒した、このことは戦後初めての画期的な出来事であり、文字どおりの歴史的意義をもつものであるということです。

 とくに、決議案では、国民の「政治を変えたい」という強い願いは、「一時の選挙での審判にとどまらず、選挙後の情勢全体を前向きに動かす大きな力として作用しつづけている」とのべていますが、この力に深い確信をもつことが大切であります。

 この力は、与野党の別なく、日本の政治全体に影響をおよぼしています。昨年の臨時国会では、肝炎対策基本法、原爆症基金法が成立しました。肝炎基本法は、何度も自民・民主双方の政局的思惑で先送りにされ、臨時国会でも当初は成立が危ぶまれる状況がありましたが、ついに成立をかちとることができました。これは、原告団と患者・被害者のみなさんなどの命がけのたたかいの重要な成果であります。そして、国民がつくりだした新しい情勢を反映する象徴的出来事でありました。

「過渡的な情勢」と民主党政権との関係について

 いま一つは、「過渡的な情勢」と民主党政権との関係についてであります。「政治を変えたい」という国民の力は、民主党政権の動向にも大きな前向きの圧力となって働くとともに、民主党政権に国民の声に反する逆行や後退がおこれば、「政治を変えたい」という願いをもっと本格的にたくせる政党はどこかという国民的探求の前進をよびおこさざるをえない、そういう性格をもっています。

 この間、沖縄の米軍基地問題での迷走、後期高齢者医療制度撤廃の先送り、労働者派遣法改正問題での重大な後退と先送り、一連の強権的な政権運営、「政治とカネ」の問題など、新政権の問題点がつぎつぎと露呈するなかで、「期待はずれだった」という声も少なからず広がっています。しかし、そうした声が、簡単には「自民党政治の復活」を許すものではないことも明らかです。それは、さらにすすんだ政治への探求の流れになりうるものであります。

 この点で、決議案が、「過渡的な情勢」と民主党政権との関係について、「民主党中心の新政権が示している過渡的な性格は、情勢のこうした過渡的な特徴を、その最初の局面で反映したもの」とのべていることは重要です。民主党政権の誕生は、国民の力でつくりだした情勢の「反映」であり、しかも「最初の局面」での「反映」にすぎない。ここには、新政権の動向がどうなろうと、「政治を変えたい」という国民の探求は必ず発展するという私たちの確信が込められています。新政権の動きだけで狭く情勢をとらえずに、国民全体の動きから大きく情勢をとらえる見地を堅持することが重要であります。

「情勢を根底からとらえる」――綱領的認識の重要性

 全党討論では、日本政治の「新しい時期」を開いた、党の先駆的な見通し、役割への確信がたくさん語られました。「日本共産党の先を見通す目がすごい。前大会の決議を読んだ時は、そのまま読んだが、4年たって読むとあらためてすごい党だと気づかされた」などの声が多く寄せられました。

 4年前の大会は、小泉・自公政権が「郵政選挙」で衆議院の3分の2を超える議席を獲得する状況のもとで開かれました。あの選挙結果を見て「これからの日本はどうなるか」と心配に思われた方も少なくなかったと思います。そういう時期に開いた大会の決議で、私たちは、「うそとごまかしが明らかになれば、政治の大きな激動はさけられない」とずばり指摘しました。あの決議を見て、「強がりをいっているのではないか」という声もありましたが、日本の政治は、大会決議のとおりの展開になったではありませんか。(拍手)

 また、4年前の大会決議で、小泉「構造改革」が“わが世の春”という勢いで横行するもとで、貧困と格差の打開、新自由主義の打破を正面から訴え、「社会的連帯で反撃を」とよびかけ、国民とともにたたかってきたことは、情勢を動かすうえで大きな貢献となったと確信するものであります。(拍手)

 こうした党の先駆的な見通し、役割の根本にあるものは何か。それは、党綱領の力にほかなりません。

 2004年に開かれた第23回党大会での綱領改定についての報告では、「情勢を根底からとらえる」という綱領的認識の中心点を力説しています。この報告では、政治の上部構造では、逆向きの変動もしばしばおこる、しかし、「支配体制と国民の利益とのあいだにこの矛盾がある限り、情勢にどんなジグザグの展開があっても、国民的な規模でその解決を求めての探究がおこなわれることは不可避であります」と強調しています。

 日本の情勢の深部で広がった支配体制と国民の利益との矛盾の蓄積が、政治の前面にあふれ出し、国民的規模での新しい政治の探求という巨大な奔流となっている――これがいまおこっていることです。

 わが党が、綱領の見地で、情勢を見通し、情勢に働きかけてきたことは、日本政治の「新しい時期」を開くうえで、重要な貢献をなすものでした。みなさん、ここに深い確信を持って、未来にのぞもうではありませんか。(拍手)

決議案第2章(「過渡的な情勢」のもとでの日本共産党の任務)について

 つぎに、決議案第2章について報告します。

国民とともに新しい政治を探求するという政治姿勢を堅持する

 第2章は、「過渡的な情勢」のもとでの日本共産党の任務を明らかにしています。まず、この章の全体の組み立ての特徴について、のべておきたいと思います。

 決議案では、第5項で、「過渡的な情勢」のもとでの国民の探求の過程、認識の発展の過程は、自らの切実な要求を実現することを出発点にしながら、政治的体験を一つひとつ積み重ねるなかで、自覚と力量を高めていくが、それを「後押しし、促進する」ところに、日本共産党の任務があるとしています。

 そして第6項、第7項、第8項、第9項で、「過渡的な情勢」のもとでの日本共産党の「三つの任務」――第一に、国民要求にこたえて現実政治を前に動かすこと、第二に、「二つの異常」――「異常な対米従属」「財界・大企業の横暴な支配」をただし、党綱領が示す「国民が主人公」の新しい日本への改革をめざす国民的合意をつくること、第三に、日本の政治の反動的逆行を許さないこと――を具体的に提起しています。

 さらに、それぞれの任務の中心点をのべたうえで、この章の最後の項(第10項)で、「わが党がこの任務をやりとげるならば、日本の政治は『過渡的な情勢』を前向きに抜け出し、おのずと『国民が主人公』の民主的政権――民主連合政府を樹立する条件が開けてくるだろう」とのべています。民主連合政府という大志とロマンある目標は、第2章を読みすすめて、最後のところに出てくるという組み立てになっています。

 「過渡的な情勢」のもとでのわが党の活動の根本姿勢として、わが党の結論を国民に押し付けるという態度でなく、国民要求から出発し、国民とともに新しい政治を探求するという姿勢を堅持することが重要であります。すなわち、国民が認識を発展させていくダイナミックな過程、それを促すさまざまな契機を念頭におきながら、それを「後押しし、促進する」という姿勢を堅持するということです。わが党は「国民が主人公」となる新しい日本をめざしていますが、この道を前にすすめる主人公となるのも主権者である国民なのであります。

 どんな問題でも、そうした姿勢を堅持してとりくんでこそ、国民の共感を広げ、日本の政治をさらに前にすすめる仕事をやりぬくことができます。この章の組み立て自体が、「過渡的な情勢」のもとで、党が堅持すべき政治姿勢の根本をふまえたものとなっていることを、まず強調しておきたいと思います。

米軍基地問題と、日米安保体制について

 米軍基地問題と、日米安保体制について報告します。

 決議案第7項でのべている、「『異常な対米従属』の政治を打破し、独立・平和の日本をきずく改革」にかかわって、この間、沖縄の米軍基地問題が、国政の熱い中心問題としておしだされてきています。

 決議案は、軍事同盟が、21世紀の今日の世界で、「20世紀の遺物」というべき時代錯誤の存在となっていることにくわえ、日米軍事同盟は、米国を中心とした四つの軍事同盟のなかでも他に類のない異常な従属性、不平等性を特徴としていることを全面的に明らかにしています。そのことを集中的に示しているのが沖縄の基地問題であります。

普天間基地――無条件撤去を求め米国と本腰の交渉を

 昨年、11月8日、2万1千人が集った沖縄の県民大会では、「普天間(ふてんま)基地の即時閉鎖・撤去」「辺野古(へのこ)への新基地建設と県内移設に反対する」を県民の総意として確認しました。沖縄県民が「基地のない沖縄」をめざすたたかいを発展させる大きな契機となったのは、基地の「県内たらい回し」を押し付けてきた自公政権に決定的な退場の審判がくだったことにありました。総選挙での審判は、国民が声をあげれば政治は変えられる、県民が声をあげれば基地は動かせる――この思いを沖縄県民の中に大きく広げるものとなりました。

 この県民の動きにたいして、鳩山政権は、動揺と迷走を繰り返し、昨年12月、普天間基地問題について、「年内決着」を先送りし、与党で「移設先探し」をおこなっていくことを「決定」しました。この「決定」は両面でとらえることが大切です。

 一つは、沖縄県民、国民世論の圧力のもとで、鳩山政権が、「県外、国外」という公約をすぐには覆すことはできないでいるということであります。昨年10月に来日したゲーツ米国防長官から「現行案での早期決着を」と強圧的に迫られたさいには、岡田外相も、北沢防衛相も、「県内移設しかない」「年内決着を」とつぎつぎと発言する事態が生まれましたが、首相は、「県外、国外」という公約をすぐには覆すことができず、年内の「決着」も先送りにせざるをえなくなりました。これは県民の力、国民の力が、働いた結果であります。

 しかし同時に、解決の道筋は、何らついたわけではありません。政府・与党の最大の問題点は、「移設条件付きの返還」に固執し、この立場から、何のあてもなく、普天間基地の「移設先探し」をおこなうというところにあります。下地(しもじ)島という名があがったり、伊江(いえ)島という名があがったり、無人島とでも思っているのでしょうか。冗談ではありません。沖縄県内はもとより本土もふくめて、普天間基地の苦しみはどこに移しても同じ苦しみです。こうしたやり方では問題は絶対に解決しません。それは「基地のたらい回し」を押し付けたSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意以来、13年間にわたって、基地が動かなかったという事実が証明しているではありませんか。(拍手)

 また、政府・与党は、辺野古への新基地建設を白紙にしたわけではありません。予算もつけ、環境調査もすすめるとしています。辺野古の美しい海をつぶして新基地をつくる計画に反対するたたかいを、いささかも緩めるわけには絶対にいかないということを強調したいと思います。(拍手)

 わが党が、昨年12月14日、党首会談で、沖縄県民の思いにたった解決を求めますと、鳩山首相は、「日米合意がある。長い間、苦労されてきた県民の思いもある。どちらが大事かということでなく、両方生かせるようにと思いながら、どう解決するか悩んでいる。良い知恵があれば共産党からも示していただきたい」とのべました。そこで、私は普天間問題を解決するには、「移設条件付きの返還」という立場から抜け出す必要がある。無条件撤去を求めて米側と本腰を入れた交渉をおこなうことが必要だと提起しました。しかし首相の回答は、「共産党の気持ちは承らせてもらうが、安全保障、抑止力という問題がある。無条件撤去を求めるのでは交渉は難しい」というものでした。

 「県民の思いと日米合意とどちらも大切」といいますが、両者は決して両立しません。それならば「県民の思い」を優先させることが主権国家の当然のあり方ではないでしょうか。(拍手)

 「無条件撤去では交渉が難しい」といいますが、「移設条件付き返還」=「基地のたらい回し」という路線こそ、すでに破たんした、展望のない道であることは、事実を見れば明らかではありませんか。無条件撤去を求めて、米国と正面からの交渉をおこなうことこそ、一見困難に見えますが、問題解決の大道であり、近道であり、もっとも現実的な方策だということを訴えたいと思います。(拍手)

“二つの呪縛”に縛られたままの先送りでは問題は解決しない

 なぜ鳩山政権が、そうしたまっとうな対米交渉に踏み切れないか。国会論戦でも、党首会談でも、首相の口から言われた、「海兵隊は抑止力として必要」「日米安保があるから」という“二つの呪縛(じゅばく)”に縛られているからです。この二つを盾にして無条件撤去を求めることを拒否する点では、新政権は、旧政権の路線と、少しも変わるところがありません。

 政府が、「海兵隊は抑止力として必要」といっているのは、日本の平和と安全のために必要だということですが、実態はどうか。海兵隊は、米軍がおこなってきた先制攻撃の戦争で、常に先陣を切っての「殴り込み」の任務をあたえられてきた部隊です。沖縄の海兵隊も、無法なイラク戦争に派兵され、ファルージャでの民間人の虐殺に参加しています。事実を見るならば、海兵隊は、日本の平和と安全のための「抑止力」などではない。世界とアジアの平和に脅威をあたえる「侵略力」が実態ではありませんか。このような物騒な部隊は、沖縄にも日本にも必要ないという立場に、きっぱりと立つべきであります。(拍手)

 「日米安保があるから」という議論について、わが党は基地問題の根本的解決の道は、安保条約を廃棄することにあると主張しています。同時に、世界では、フィリピン、エクアドルなど、米国と軍事同盟や軍事協定を結んでいた国で、堂々と基地を撤去した例はいくらでもあります。日本だけができない道理はないではありませんか。

 この“二つの呪縛”に縛られたままでの先送りや、小手先細工では、問題は決して解決できません。米国が前政権以来すすめている「米軍再編」とは、言葉の上では「地元の負担を軽減しつつ」(06年・「〔米軍〕再編実施のための日米のロードマップ」)などというものの、実際にすすめられていることは、沖縄でも、全国でも、日本国民にとっては「負担軽減」どころか負担強化であり、基地機能の強化そのものです。それは、2006年に日米で合意された「米軍再編」の「ロードマップ」以来、基地機能の傍若無人の強化がはかられている、普天間基地や嘉手納(かでな)基地など沖縄の実態、全国各地の米軍基地の実態が示しています。

 海兵隊についていえば、「海兵隊の緊急事態への対応能力の強化や、それらの能力のハワイ、グアム及び沖縄の間での再分配」によって「太平洋における兵力構成を強化する」と公然とうたい(05年・「日米同盟‥未来のための変革と再編」)、ハワイ、グアム、沖縄の海兵隊を一体的に強化することが、「米軍再編」の大方針とされています。それらすべてを合理化する「論理」が、「在日米軍、海兵隊は抑止力として必要」というものであります。

 そうである以上、「抑止力」「日米安保」の呪縛にとらわれ、米国の顔色をうかがうような態度では、問題は決して解決しません。沖縄県民の声を堂々と代弁し、県民のたたかいと一体に、普天間基地の無条件撤去、「基地のない沖縄」をめざす本腰の対米交渉をおこなってこそ道は開ける。わが党は、そのことを新政権に強く求めるものであります。(拍手)

 日本政府をそうした立場に立たせるためには、たたかいが必要です。みなさん、沖縄と本土が固く連帯して、「基地のない沖縄」「基地のない日本」をめざす一大国民闘争をおこそうではありませんか。(拍手)

改定50年――日米安保廃棄を多数派にするために

 沖縄の基地問題をめぐるたたかいは、国民が、自らの切実な要求を実現することを出発点にしながら、政治的体験を一つひとつ積み重ねるなかで、政治を変える自覚と力量を高めていく過程を、典型的な形で示しています。

 そして、沖縄県民のなかで、この苦難に満ちた現状を変えるためには、日米安保条約の是非そのものを問う必要があるという動きがおこっていることは重要です。沖縄での世論調査では、安保条約の抜本的見直しの意見が過半数を占めるにいたっています。基地の重圧に苦しめられている自治体の首長との懇談のなかで、「安保条約の是非に関する新たな議論を国会の中で巻き起こしてほしい」との声が寄せられたことは、たいへん印象的でありました。

 今年、2010年は、日米安保条約が改定されて50周年の節目の年になります。この年にあたって、わが党は、日米安保条約廃棄を国民の多数派にすることをめざし、つぎの三つの角度からそのための努力をつくします。

 第一は、平和を願う国民要求から出発して、日米軍事同盟の「他に類のない異常な特質」を、一つひとつただすたたかいをおこすことです。

 決議案は、「日米軍事同盟は、米国を中心とした四つの軍事同盟のなかでも、他に類のない異常な特質をもっている」として、米軍基地面積と駐留米兵数、海兵隊と空母という「殴り込み」部隊の配備、在日米軍による事件・事故の多発と治外法権的な特権を保障する日米地位協定、「世界一」気前のよい在日米軍駐留経費負担、国民を欺く「事前協議」制度、「米軍再編」の名での世界的な軍事共同態勢の強化、経済的従属の「制度化」の七つの角度から、その異常な従属性を全面的に明らかにしています。

 これらの諸問題は、日米安保条約のもとでも、緊急にただされるべき異常です。その異常をただすたたかいのなかで、その根本にある安保条約そのものの是非を国民に問うていく活動を大いにすすめようではありませんか。

 第二に、決議案が示しているように、世界の大きな流れを見るならば、この半世紀に、軍事同盟のもとにある国の人口は、世界人口の67%から16%へと激減しました。多くの国ぐにが軍事同盟から抜け出し、外部に敵をもたない、開かれた地域の平和共同体が世界各地に広がっています。世界は大きく変わりつつあるのです。

 21世紀に軍事同盟にしがみつくことがいかに世界の流れに逆行し、世界と日本の平和にとって有害であるかを、広く明らかにしていくことが重要です。前政権はもとより、新政権も、世界の大きな流れのなかで軍事同盟を問い直すという視野がまったくないだけに、この事実を広く国民の共通の認識にしていくことは、わが党に課せられた重要な仕事であります。

 第三は、決議案がのべているように、「東アジアに平和的環境をつくりあげていく平和外交と一体に、日米安保条約廃棄の国民的合意をつくりあげていく努力」をすすめることです。

 北朝鮮問題の解決のためには、困難はあっても「6カ国協議」の枠組みを復活させ、これを通じて核・拉致(らち)・ミサイル・歴史問題など諸懸案の包括的解決をはかり、この枠組みを北東アジア地域の平和と安定の枠組みに発展させるという立場での対応が大切です。この問題で、米国、中国などが、この間、「6カ国協議」再開のための外交努力を強めていることは重要です。わが党は、新政権に、日本政府として、北朝鮮問題解決のための外交戦略を持ち、問題の外交的解決のイニシアチブを発揮することを求めるものです。

 日米安保条約改定から半世紀。この世界でも突出した従属的な体制を、これから先、未来永劫(えいごう)つづけようという勢力には、日本の独立も平和も語る資格はありません。(「そうだ」の声、拍手)

 わが党は、安保改定半世紀の節目の年にあたって、日米軍事同盟の実態を広く明らかにし、その廃棄をめざす世論を広げていくために、あらゆる知恵と力をそそぐ決意を表明するものです。(拍手)

日本経済の危機と、「ルールある経済社会」

 つぎに、日本経済の危機と、「ルールある経済社会」について報告します。

 決議案第8項では、世界でも異常な「財界・大企業の横暴な支配」を打破し、国民の生活と権利を守る「ルールある経済社会」をつくる改革についてのべています。決議案では、「ヨーロッパの主要資本主義諸国や国際条約などの到達点」にてらして、「ルールなき資本主義」といわれる日本の現状がいかに異常かを多面的に明らかにするとともに、「ルールある経済社会」への改革は、「日本経済が、今日の経済危機から抜け出し、家計・内需主導で安定的に成長するうえでも、最も合理的な方策である」と強調しています。

 報告では、今日の経済危機を打開するうえでも、「ルールある経済社会」への改革が、緊急かつ根本的な処方せんとなっていることに焦点をあててのべます。

大企業が蓄積した過度の内部留保を社会に還元せよ

 日本の経済危機と、国民生活の実態は、きわめて深刻です。雇用情勢は、完全失業率、有効求人倍率とも、過去最悪水準にあります。日本経済の土台を支える中小企業の年間倒産件数は、2009年には1万3千件を超え、倒産によって毎月1万人規模の雇用が奪われる事態が続いています。

 私たちは、今日の世界経済危機の性格を、「金融危機と過剰生産恐慌の結合」ととらえていますが、日本でおこっていることもまさに「過剰生産恐慌」にほかなりません。それは政府自身も、需要と供給のギャップが約40兆円と、日本のGDPの1割近くに達すると認めていることにも示されています。

 重大なのは、日本の経済危機が、発達した資本主義国のなかでも、とくに深刻であることです。OECDの経済見通しによると、日本の2009年実質経済成長率はマイナス5・3%と、先進7カ国のうちで落ち込みが最も激しいものとなっています。なぜ日本経済と国民生活の落ち込みがこれほどまでに激しいのか。それは「ルールなき資本主義」といわれる日本経済の異常なゆがみと深くかかわっています。

 大企業が利益をあげても、国民の所得に反映せず、国民生活の向上につながらない。こうした傾向は、1980年代以降の日本経済の「低成長」のもとであらわれていましたが、とくに、この間の約10年間を見ますと、日本では、大企業が空前の利益をあげるもとで、労働者の賃金は逆に減少を続けるという異常な事態が進行しています。

 この間の約10年間の推移を見ると、大企業は1999年〜2000年、2002年〜2007年という長期間にわたる利益拡大期があり、とくに2003年〜2007年の5年間は、史上最高の利益を更新しつづけました。

 ところが、労働者の雇用者報酬は、1997年の280兆円をピークに減り続け、2009年には253兆円へと、総額で27兆円、約1割も落ち込みました。これは何と18年前の1992年の水準への落ち込みです。

 こうした雇用者報酬の落ち込みは、国際的にみても、主要国のなかで日本だけの異常な事態なのです。OECD加盟国でみると、比較可能な28カ国のなかで、1997年から2007年までの10年間で、雇用者報酬が減少した国は、日本ただ一国しかありません。10年以上にわたって賃金が下がり続けている国は、世界の主要国で日本だけなのであります。

 その結果、急激に膨張したのが、企業の内部留保です。企業の内部留保は、とくに1998年以降急膨張し、この10年間で約200兆円から約400兆円へと2倍にも膨らみました。約400兆円の内部留保の半分近くは、資本金10億円以上の大企業がため込んだものです。

 こうして長年にわたって、大企業がばく大な利益をあげても、勤労者には少しも還元されず、巨額の内部留保として蓄積されました。このことが家計・内需を著しくやせ細らせ、日本経済を外需頼みの脆弱(ぜいじゃく)な経済にする結果をつくりました。

 ここには、「ルールなき資本主義」の深刻なゆがみが、象徴的な形で示されています。大企業がため込んだ巨額の内部留保は、労働法制の規制緩和による正社員の非正規雇用労働者への置き換えと「使い捨て」労働の蔓延(まんえん)、正社員にたいするリストラ・賃金引き下げなどあくなき労働コストの削減、中小零細企業への下請け単価切り下げなど、国民の暮らしと営業を犠牲にし、庶民の血と涙のうえに、積み上げられたものにほかなりません。

 いま「埋蔵金」を活用するということが話題になりますが、大企業が蓄積した過度の内部留保こそ、国民生活に還元すべき最大の「埋蔵金」ではありませんか(拍手)。内部留保のすべてをとりくずせといっているわけではありません(笑い)。内部留保の一部を、雇用や中小企業、社会に還元させる政策への転換が必要です。それは、社会的なルールをつくり、大企業に社会的責任を果たさせる仕組みをつくってこそ可能となります。具体的には――、

 ――労働者派遣法の抜本改正をすみやかに実施し、非正規労働者を正社員にすること。

 ――雇用保険を抜本的に拡充し、失業しても安心して再就職をはかれる社会にすること。

 ――「サービス残業」の根絶や、有給休暇の完全取得、週休2日制の完全実施をはかること。

 ――中小企業への適切な支援をはかりながら最低賃金を抜本的に引き上げること。

 ――中小企業の下請け単価を適正なものに引き上げること。

 これらがその中心点ですが、こうした「ルールある経済社会」への改革こそ、国民の生活と営業の危機を打開するとともに、日本経済を家計・内需主導の健全な回復・発展の軌道にのせ、経済危機を打開するうえでの緊急かつ根本的な処方せんであるということを、強調したいのであります。(拍手)

貧富の格差の是正という税・社会保障の本来の姿をとりもどす

 いま一つ、根本的な改革が求められているのは、税金と社会保障のあり方です。

 厚生労働省は、日本の相対的貧困率が15・7%となり、1997年以降最悪であることを発表しました。OECD加盟31カ国のなかで、日本の貧困率は、メキシコ、トルコ、アメリカについで、ワースト4位です。

 しかもOECDの報告書によりますと、日本は、税金による所得の再分配効果はOECD加盟国のなかで最も小さく、社会保障(公的移転)による所得の再分配効果も、韓国、アメリカについでワースト3位です。税金と社会保障による貧富の格差の是正という機能が、世界でもっとも弱い国の一つが、日本なのであります。ここにも「ルールなき資本主義」の国・日本の異常な姿が示されています。

 これは、一方で、社会保障費の削減、庶民増税を続けながら、他方で、大資産家・大企業にたいする特権的な減税政策を続けてきた自公政権の経済政策がもたらしたゆがみです。この分野でも抜本的な政策転換が必要です。具体的には――、

 ――後期高齢者医療制度の即時撤廃をはじめ、社会保障費削減路線がつくった数々の「傷跡」をすみやかに是正すること。

 ――社会保障における受益者負担主義を転換し、医療、介護、障害者福祉などの利用料は無料化をめざして負担軽減に踏み出すこと。

 ――社会保障を“大企業の利潤追求の場”に明け渡し、公的責任を後退させる市場化・民営化路線を抜本的に転換し、介護・保育・医療・年金などの充実を国の責任ではかること。

 ――大企業や大資産家にたいする行き過ぎた優遇税制をあらため、応能負担の原則にたった民主的税制の再構築をはかること。

 これらが改革の中心点ですが、それは所得の再分配と貧富の格差の是正という、税金と社会保障の本来の姿を取り戻すうえでも、深刻な経済危機から庶民の暮らしと営業を守り、内需主導の経済の健全な発展を促すうえでも、急務となっています。

 わが党は、経済危機のもとでの生活と営業の苦難打開という国民の切実な要求実現のためのたたかいに力をつくすとともに、国民多数のなかに、「大企業・財界の横暴な支配」こそが暮らしを壊す元凶であり、「ルールある経済社会」への転換が不可欠だという広い合意をつくるために全力をあげる決意であります。(拍手)

「国際競争力」の名による大企業の身勝手な行動を許さない

 大企業に社会的責任と負担を果たせと要求しますと、財界・大企業は、中国などもっぱらアジア諸国を引き合いに出して、「国際競争力」が損なわれるといいます。「国際競争力」という言葉を呪文(じゅもん)のようにいいつのれば、何でも許されるかのような議論が流されています。

 しかし、たとえば欧州諸国も日本同様に、中国との競争にさらされています。欧州と日本は、中国からの輸入額はGDP比では2〜3%程度で、その国の経済に占める比重という点では、大きな差はありません。ところが欧州では、最低賃金は時給で千円を超えます。さらに大企業の税金と社会保険料負担は、ドイツやフランスは、日本の1・2倍から1・3倍程度も高い水準です。日本に比べ、高い賃金、高い税・社会保険料負担をしながら、国際舞台で競争しているのではありませんか。日本の大企業だけがそれができないという道理はないではありませんか。(拍手)

 また、日本経済の全体を考える必要があります。日本経済の現状をみても、いまその発展の障害となっているのは、家計を中心とした内需不足であります。その最大の要因となっているのは、大企業が労働コストの削減、規制緩和、税・社会保険料の負担逃れによって、国民の購買力を奪い続けてきたことにあります。ここに目をむけずに、「国際競争力」の名で、大企業の横暴勝手を野放しにするならば、家計と内需はさらに落ち込むでしょう。日本経済の発展の道は閉ざされることになります。日本経済が壊れたら、企業の先もなくなるではありませんか。

 さらに、非正規雇用労働者への置き換えなど、歯止めのない労働コストの削減は、短期の目でみれば企業利益を増しても、長期の目でみれば、労働者のものづくりへの誇りを奪い、技術の発展を阻害し、企業経営にとっても先のない道であるということを言わなければなりません。

 「国際競争力」という言葉を呪文のように繰り返すことで、自らの社会的責任を逃れようとする財界・大企業の身勝手な論理を、正面から打ち破ろうではありませんか。(拍手)

新政権の経済問題への対応――三つの問題点を問う

 経済危機にたいする民主党政権の対応はどうでしょうか。政府が編成した来年度予算案や、一連の経済問題への対応をみますと、個々の政策では、国民の強い要求におされての前向きの要素も含まれていますが、つぎのような問題点があらわれています。

 第一は、大企業にその力にふさわしい社会的責任を果たさせるという立場がみられないということです。

 政府による労働者派遣法の改正は、製造業への派遣禁止に大穴をあけて、事実上それを温存したうえ、法律の実施を「3年後」から「5年後」に先送りする方向となっています。いま少なくない大企業は、一方でひきつづき「非正規切り」をすすめながら、他方で一時的な増産をまたもや派遣労働者などでまかなうなど、「使い捨て」労働によるコスト削減で、ひたすら目先の利益のみを追い求めつづける経営に走っています。こうした実態のもとで、派遣法改正は文字どおり急務であり、製造業派遣の事実上の温存、実施の先送りは、財界・大企業の要求に屈した重大な後退と言わなければなりません。

 わが党は、人間らしい労働を求めるたたかいに先駆的に、一貫してとりくんできた政党として、非正規から正規への雇用の転換をはじめ、大企業に社会的責任を果たさせるための抜本的な政策転換を、すみやかにおこなうことを強く求めるものであります。(拍手)

 第二に、自公政権の社会保障費削減路線がつくった数々の「傷跡」を是正するという点でも、新政権のとりくみには大きな問題点があります。

 後期高齢者医療制度の撤廃を「新制度をつくってから」と「4年後」に先送りする方針が、国民の怒りを広げています。障害者自立支援法による応益負担も、約300億円あれば大多数の障害者の分を廃止できると言っていたにもかかわらず、その3分の1しか予算をつけず、中途半端に残そうとしています。国民の強い要求のもとで、生活保護の母子加算を復活させたことは前進です。しかし、自公政権が同じ理屈で削った老齢加算の復活の要求には背を向ける態度をとっているのは、道理にあわないではありませんか。(拍手)

 さらに、認可保育所の大幅増設によって待機児解消をはかるのでなく、保育の分野にまで規制緩和をもちこみ、保育への公的責任を放棄しようとするなど、一連の分野で「構造改革」路線を継続・拡大しようとしていることも重大です。

 新政権は、先送り、中途半端、公的責任の放棄でなく、社会保障拡充へのきっぱりした政策転換をおこなえ――わが党はこのことを強く要求するものです。(拍手)

 第三は、財源論をめぐる問題点です。新政権の財源論は、つぎのような致命的な弱点をもっています。

 一つは、自民党政治がつくったほんとうの無駄と浪費に切り込む姿勢がないことです。来年度予算案で軍事費は増額され、とくに米軍への「思いやり予算」と「米軍再編」費は500億円も増額され、史上最高となりました。「スーパー中枢港湾」、東京外郭環状道路も、温存されました。

 いま一つは、大企業・大資産家への行き過ぎた減税を抜本的に見直すという方向に踏み出せないことです。大企業への研究開発減税は継続、大資産家への証券優遇税制も継続、所得税・相続税の最高税率の見直しもおこなおうとしていません。

 この二つの分野を「聖域」としたために、来年度予算案は、44兆円を超える借金と、1年限りの財源にしかならない8兆円もの「埋蔵金」にたよる、その場限りの予算案となり、次年度以降の予算編成の見通しがまったくない、“お先真っ暗予算案”となりました。このままでは、世論の批判を恐れて今回は先送りされた成年扶養控除や配偶者控除の廃止、さらには消費税増税という庶民大増税にゆきつかざるをえません。

 実際、この間、鳩山政権の主要閣僚たちから、「消費税増税の議論が必要」という声が、つぎつぎとあがりはじめていることはきわめて重大です。消費税増税反対の国民的世論と運動を、急速に広げることを心からよびかけるものであります。(拍手)

 軍事費と、大企業・大資産家――この二つの分野に改革のメスを入れてこそ、消費税にたよらずに、国民生活を支える財源をつくることができることを、強調したいと思います。

たたかいこそルールを築く力、労働者の階級的成長の力

 「ルールある経済社会」を築くうえで、何よりも重要なことは、「国民のたたかいこそがルールを築く力」だということです。

 この間、派遣労働に象徴される「使い捨て」労働をただすたたかいが、大きく前進しました。とくに、2008年秋以降、大企業が競い合ってすすめた「非正規切り」にたいして、全国各地の労働者が、労働組合をつくり、あるいは労働組合に結集して、無法な解雇・雇い止めに反対し、勇気を持って立ち上がったことは、歴史的な意義をもつものです。労働局への申告、団体交渉、裁判闘争など、たたかいはなお続き、広がりつつあります。わが党は、人間らしい労働をもとめて立ち上がったすべての労働者と労働組合に心からの連帯とともに、最後までともにたたかいぬく決意を表明するものです。(拍手)

 このたたかいを通じて、現行の労働者派遣法が、労働者保護法ではなく、いかに派遣先企業保護法となっているか、その問題点が浮き彫りになりました。そして抜本改正への道筋も明らかになりました。たたかいこそが、労働法制の規制緩和の流れを変え、規制強化へと政治を転換させる力となりました。たたかいこそ人間らしい労働のルールをつくる力であることを、労働者のたたかいは、証明しています。

 そして、このたたかいを通じて、労働者としての階級的自覚を高め、たくましく成長しつつある、多くの労働者が生まれていることは、何よりもうれしいことであります。マルクスは『資本論』の「労働日」論のなかで、労働時間を制限する工場立法を求める大闘争から出てきた労働者は、階級的に成長し、「違うものとなって、そこから出てくる」――それ以前の労働者とは姿が変わってくるとのべています。「使い捨て」労働をなくすたたかいを通じて、それまで自らの奴隷的な労働の実態について「自己責任」と悩んでいた労働者もふくめて、多くの労働者が、連帯し、結集し、階級的に目覚め、成長しつつある。私は、ここにこそ、日本社会の希望ある未来を開く大きな力があることを、強調したいと思います。(拍手)

 国民の暮らしをめぐるあらゆる分野で、たたかいをおこし、たたかいを通じて「ルールある経済社会」をつくろうではありませんか。(拍手)

政治の反動的逆行――強権的国家づくりの動きを許さない

 つぎに政治の反動的逆行――強権的国家づくりの動きを許さないという任務について報告します。

 決議案第9項では、「日本の政治の反動的逆行を許さない」という任務について、つぎのようにのべています。

 「『過渡的な情勢』とは、主権者・国民の審判によって、日本の情勢が大きく前に踏み出したという新しい情勢だが、それが今後どういう方向にすすむかは不確定であり、それは国民の世論と運動、政治的な力関係のいかんによって決まってくる。私たちは、このプロセスを逆行させ、『二つの異常』の政治の枠内に閉じ込めようとする動き、そうした動きが現実のものとなる危険性を、決して過小評価してはならない」。

 決議案が、この危険をあえて指摘したのは、自民党政権が復活する歴史逆行の可能性が否定できないというだけでなく、何よりも民主党政権において、またこの政権にかかわって、民主主義に逆行する一連の問題点があらわれているからであります。

 決議案は、その問題点を、(1)「脱官僚依存」を名目にした「国会改革」、(2)財界の青写真による強権的国家づくり、(3)衆院比例定数削減の動き、(4)マスメディアのあり方の四つの角度から具体的に指摘しました。

「政治主導」の名での歯止めない解釈改憲への動きに反対する

 決議案発表後の情勢で、重大なのは、民主党が、官僚の答弁を禁止するなどの国会法改定案を通常国会に提出し、成立をはかる姿勢を見せていることであります。

 その内容は、「政府参考人制度の廃止」として官僚答弁を法律で禁止するとともに、これまで人事院総裁や公正取引委員会委員長とともに「政府特別補佐人」として答弁してきた内閣法制局長官を、一人だけ「政府特別補佐人」から排除し、その答弁を禁止するというものになっています。

 この動きの最大の危険は、決議案がのべているように、「憲法解釈を『政治主導』の名で自由勝手に変え、民主党の特異な憲法解釈をおしつける――これまでの自民党政権ですら違憲としてきた自衛隊の海外での公然たる武力行使を『合憲化』する」ところにあります。

 みなさん、憲法9条の解釈改憲を歯止めなく拡大し、「海外で戦争をする国」への道を開く危険な動きにきびしく反対し、日本が世界に誇る宝――憲法9条を守りぬくたたかいを、新たな決意でさらに発展させようではありませんか。(拍手)

強権的国家づくりへの志向と、国会の民主的ルールの破壊

 この間の情勢でいま一つ重大なのは、政権についた民主党が、新政権の最初の法案(中小企業金融円滑化法案)の審議でいきなり強行採決に走り、国会に不正常な事態をつくりだしたことです。民主党のとった態度は、参考人質疑がおこなわれる前に、参考人質疑後の審議打ち切り・採決を提案し、強行するというものであり、これでは何のために参考人質疑をおこなうかの意味がなくなる、国会の民主的ルールの破壊そのものでした。

 これにたいして自民党が機械的に審議ボイコットで応じる事態が繰り返されるなかで、わが党は、民主党の横暴を厳しく批判するとともに、堂々と審議権を行使し、議論で問題点を明らかにするという姿勢をつらぬき、国会正常化のために力をつくしました。

 民主党の国会運営における民主的ルールを踏みにじった横暴ぶりは、ただたんに「自民党と民主党が入れ替わった」というだけではすみません。この動きは、決議案で解明した民主党政権の強権的国家づくりへの志向が、現実の政権運営、国会運営にあらわれたものとして、強い批判と警戒が必要であります。

悪政を自由勝手に強行できる体制づくりを許さない

 「国権の最高機関」としての国会の権限と役割を否定し、さらに衆院比例定数削減など国会に国民の民意を反映する唯一の制度を大幅に削減する、強権的国家づくりを万一にも許すならばどうなるか。政権の担い手が誰になっても、憲法9条の明文改憲、消費税の大増税など、平和と民主主義、国民生活を根底から破壊する悪政を、自由勝手に強行できる体制がつくられることになります。

 とりわけ衆院比例定数削減は、民主党がマニフェストで次期総選挙までに実現すると公言しているものであり、その具体化の動きいかんにかかわらず、これを許さないたたかいをただちにおこすことが重要であります。わが党は、この策動に反対する一点で、あらゆる政党、団体、個人と共同し、国民的大闘争をおこし、この反動的くわだてを必ず打ち破ることを、心からよびかけるものであります。(拍手)

 暗黒政治への逆行を許さず、日本国憲法に定められた国民主権、議会制民主主義の原則を擁護、発展させることは、日本共産党に課せられた重大な任務であります。

新しい条件をくみつくした国民的共同と統一戦線の展望について

 つぎに、新しい条件をくみつくした国民的共同と統一戦線の展望について報告します。

 決議案第10項では、「過渡的な情勢」のもとで、わが党が、三つの任務をやりとげるならば、「日本の政治は『過渡的な情勢』を前向きに抜け出し、おのずと『国民が主人公』の民主的政権――民主連合政府を樹立する条件が開けてくるだろう」とのべています。

 そして、わが党のめざす民主主義的な変革は、統一戦線の力によって推進されること、総選挙が開いた新しい条件のもとで、新しい国民的共同――統一戦線運動の条件が大きく広がっていることをのべています。

 このことは、決議案発表後の全党の実践によっても証明されています。

従来の保守の人びとを含め、新たな共同の条件が劇的に広がりつつある

 昨年、10月のJA全国大会、11月の全国森林組合大会に、歴史上初めてわが党代表が招待され、あいさつをおこなう機会がありました。そのことも一つの契機となって、全国各地で農協・農業関係者との対話と共同の動きが大きく広がりつつあります。どこでも日本共産党の農業政策に「共産党が一番近い」「おおいに共感する」という声が寄せられ、農業再生にむけた切実な要望が語られています。林業をめぐっても、全国各地で対話がすすみ、わが党が、林業のもつ雇用、環境など、産業としての潜在的発展の可能性を生かした林業振興の道筋を語っていることへの共感が寄せられています。

 医療団体でも大きな変化が進行しています。医師会や歯科医師会が従来の自民党支持を抜本的に見直すもとで、わが党と各地の医師会・歯科医師会との懇談が大きく広がっています。日本医師会は、昨年10月に発表した「提言」のなかで、「現役世代の窓口負担の軽減」「診療報酬の大幅増額」に加え、「子どもの医療費の無料化」を新たに要求として掲げました。医師会との関係でも、わが党との政策的一致点が幅広く存在し、拡大していることはきわめて重要であり、一致点での共同を大いにすすめたいと思います。

 これまで自民党支持に縛られていた諸団体が、自民党の政権退場によって、その枠組みから解放され、「全方位」で諸政党と対話をはじめたら、日本共産党の政策が一番近いところにあった。自民党の壁がガラッとくずれて、見晴らしがよくなったら(笑い)、一番近くに立っていたのは日本共産党だった。ここでも、国民みずからが、その政治的体験を通じて、新しい政治を模索、探求し、認識を発展させるダイナミックな動きがはじまっているではありませんか。みなさん。その全体を広い視野でとらえ、一致する要求での国民的共同を、あらゆる分野で広げようではありませんか。(拍手)

労働運動の現状と展望――新たな共同の発展を探求する

 この問題にかかわって、労働運動の現状と展望について、三つの点を強調したいと思います。

 第一は、この間、労働運動でも、一致する要求をかかげ、労働運動のナショナルセンターの違いをこえた共同が、さまざまな分野ですすんでおり、それをさらに発展させることが重要となっているということであります。

 「派遣切り」に反対するたたかいや「年越し派遣村」のとりくみのなかで、ナショナルセンターの枠をこえた労組間の共同、国民各層の共同が発展しています。

 私鉄総連は「3年たったら正社員」という要求をかかげ、非正規労働者の正社員化の運動を発展させていますが、これは「私鉄連帯する会」に結集する労働者が、非正規労働者に心を寄せ、「節度ある批判と道理ある説得」の立場で、非正規労働者の要求を労働組合に持ち込み、労働組合とともにたたかってきたことの反映です。

 教育基本法改悪反対のたたかいにおいても、全国各地で、全教と日教組という上部団体の違いをこえた共同行動がおこなわれたことは、重要であります。

 第二に、こうした共同の流れをさらに発展させ、労働者の要求を実現していくうえでも、連合指導部が、特定政党支持路線と労資協調主義路線という二つの重大な弱点を克服できるかどうかが問われているということを、率直に指摘したいと思います。

 特定政党支持路線は、思想・信条の違いをこえて一致する要求実現のために団結すべき労働組合運動のあり方をゆがめ、政党支持の自由という憲法に保障された基本的人権を侵害するとともに、労働組合が、ナショナルセンターの違いをこえて、一致する要求で共同を広げるうえでも、重大な障害となっています。

 また、深刻な経済危機のもとで、労資協調主義路線に立つ潮流が、財界・大企業の賃下げ攻撃とも、「派遣切り」から始まった大量の首切り攻撃とも、正面からたたかう姿勢に立ちきれないことにたいして、労働者からも、社会的にも、きびしい批判がおこっているのは当然であります。

 最大のナショナルセンターであり、大企業正規労働者を中心に組織する連合が、特定政党支持路線と労資協調主義路線という二つの重大な弱点を克服し、失業者の支援、雇用の維持と確保、非正規雇用の正社員化、すべての労働者の賃上げ、長時間過密労働の是正など、労働者の切実な要求を正面から掲げ、労働組合の潮流の違いをこえた共同に踏み出すことが、強く期待されます。(拍手)

 第三は、労働者が要求にもとづく共同行動を前進させるうえで、結成20周年を迎えた全労連が果たす役割が、いよいよ大きくなっていることです。

 もともと全労連は、「要求にもとづく行動の統一」「資本からの独立」「政党からの独立」という労働組合の初歩的な民主的原則のもとに結成された、開かれたナショナルセンターであります。産別組織と地方組織が対等の立場で参加するという組織原則は、全国的規模でも、地方的規模でも、要求にもとづく共同を広げる大きな力となっています。

 全労連が、経済危機のもとで、すべての労働者の賃上げを正面から要求し、大企業がため込んだ巨額の内部留保の一部をあてれば、賃上げは可能であることを示し、たたかいを呼びかけていることは、労働者に要求の正当性への確信をあたえるとともに、日本経済を、家計・内需主導の健全な回復、発展の軌道にのせるうえでも重要であります。

 全労連は、産別と地方が対等の立場で構成するという組織的強みも生かし、非正規労働者に心を寄せ、雇用破壊とたたかい、その組織化に力を注いできました。この仕事は、その階級的役割を自覚した労働組合でのみ可能な仕事です。非正規雇用労働者の正規化をすすめてきた組合では、「組合員でない派遣の問題をなぜ取り上げるのか」「派遣が正規の職を脅かしている」などの意見を、率直な議論と実践で克服しています。多くの組合幹部が、このたたかいのなかで組合員と組合自身が鍛えられ、団結が強化されたとのべていることは教訓的です。

 こうしたたたかいのなかで、全労連を無視してはマスメディアも報道が成り立たない状況が生まれ、たたかう労働組合の姿が国民の目に見えるようになってきています。多くの国民が労働組合を再評価し、必要と考える新しい時代が訪れています。

 私たちは、全労連が、こうした新たな条件を生かして、大きく発展・飛躍し、ナショナルセンターの枠をこえた共同、国民的共同をすすめることを、強く願ってやみません。(拍手)

日本共産党の発展は、国民的共同と統一戦線の発展の決定的条件

 決議案では、2010年で30周年を迎え、大きく発展しつつある革新懇運動が果たしている重要な役割をのべるとともに、日本共産党が、この運動の「提唱者」の党として、その発展のためにあらゆる知恵と力をそそぐことを表明しています。

 さらに、第2章を、つぎの言葉で結んでいます。

 「日本共産党が、高い政治的、理論的な力量をもち、広く国民諸階層と結びつき、強大な組織力をもって発展し、国政と地方政治での政治的比重を高めることは、新しい政治への国民的共同と統一戦線を発展させるための決定的な条件である。私たちは、2010年という節目の年に開かれるこの大会で、2010年代を党躍進の歴史的時代とするために、全力をつくす決意を新たにするものである」。

 決議案がのべているように、日本の政治が「二つの異常」から抜け出す力を、国民の間にいかにつくりあげていくか、その自覚と力量の前進を後押しし、促進するところに「過渡的な情勢」のもとでの日本共産党の任務があります。日本の情勢は、日本共産党が、この任務を果たしうる強大な党へと発展することを強く求めています。

 みなさん、「2010年代を党躍進の歴史的時代に」――これを全党の合言葉に、強大な党への発展を必ずかちとり、わが党に課せられた歴史的責務を立派に果たそうではありませんか。(大きな拍手)

決議案第3章(大きく変わりつつある世界と、日本共産党の立場)について

 つぎに、決議案第3章について報告します。

 第3章は、大きく変わりつつある世界と、日本共産党の立場についてのべています。

 決議案は、前大会以来4年間の世界の動きをふりかえって、「世界では、さまざまな曲折や逆行をはらみながらも、全体としては、綱領と大会決定が見通した方向で、平和と社会進歩への激動が進展しつつある」「それは、日本共産党が日本でとりくんでいる社会変革の事業が世界の本流に立ったものであることを、力強く示すものとなっている」とのべています。すなわち、世界の動きは、大局においてみるならば、日本での私たちの事業の“力強い味方″となっている。これが決議案の世界論の見地であります。

 決議案は、こういう角度から、米国・オバマ政権をどうみるか、世界に広がる平和の地域共同体の動き、民主的な国際経済秩序を求める動きの進展、どうしたら人類は「核兵器のない世界」に到達できるか、日本共産党の野党外交の発展などを、明らかにしています。

オバマ大統領の「核兵器のない世界」への誓約は、どうしたら現実のものにできるか    

 決議案第12項では、「党綱領の立場を踏まえて、アメリカの動向を事実にそくして複眼でとらえるという見地は、米国に誕生した新政権のもとで、ますます重要となっている」とのべ、米国・オバマ政権を、前向きの変化が生まれつつある面と、覇権主義という点で変化が見られない面の、二つの側面からとらえています。

プラハでの核廃絶演説――歓迎すべき前向きの変化

 前向きの変化という点では、私たちは、核兵器廃絶という国際政治の重要な課題をめぐるオバマ米大統領の一連の発言に注目してきました。

 決議案は、オバマ大統領が2009年4月5日のチェコ・プラハでの演説で、米国大統領として歴史上初めて、「核兵器のない世界」を追求することを米国の国家目標とすること、広島・長崎への原爆投下が人類的道義にかかわる問題であることを表明し、その立場から核兵器廃絶にむけて行動する責任を表明したことなどについて、「問題点や限界をはらみつつも、全体として歓迎すべき前向きの変化である」とのべています。

 私は、昨年4月5日のプラハでの演説にさいして、4月28日、オバマ大統領に書簡を送り、「あなたが米国大統領としての公式の発言で、こうした一連の言明を行われたことは、人類にとっても、私たち被爆国の国民にとっても、歴史的な意義を持つものであり、私はそれを心から歓迎するものです」とのべました。

「問題点や限界」を乗り越える必要――二つの点について

 同時に、オバマ氏が、プラハで世界に誓約したことを、現実のものにしようとすれば、いくつかの「問題点や限界」を乗り越える必要があることを、私は、率直に指摘したいと思います。

 一つは、私がオバマ大統領への書簡のなかで指摘した問題点です。それは大統領が、「核兵器のない世界」を呼びかけながら、その実現は、「おそらく私の生きているうちには無理だろう」とのべていることです。私は、書簡でこれには「同意できない」と率直に書きました。核兵器保有国が、核兵器廃絶を正面からの主題にして国際交渉にとりくむことは、歴史上誰の手によってもまだおこなわれていません。交渉の呼びかけ、開始、合意、実行には、時間がかかるかもしれませんが、どれだけの時間がかかるかは、とりくんでみないとわかりません。しかし、その意思さえあれば、すぐにでもできることがある。それは、米国大統領として核兵器廃絶を正面の主題にした国際交渉を呼びかけ、交渉を開始することです。私は、書簡でこのことを強く要請しましたが、この場でも、そのことを強く求めたいと思います。(拍手)

 いま一つは、「核抑止力」論にたいする態度です。私は、4月5日のプラハ演説では、オバマ大統領が「核抑止」という言葉を使わなかったことに、注目していました。また、オバマ大統領が、7月7日、モスクワでおこなった演説で、「核兵器を保有することによって国の威信が生まれる、あるいは、私たちは核兵器を保有できる国を選ぶことによって自らを守ることができるという考えは、幻想にすぎません」とのべたことについて、私は、8月3日の広島での原水爆禁止世界大会・国際会議へのあいさつのなかで「注目しています」とのべました。ところが、オバマ大統領は、11月14日に東京でおこなった演説のなかで、「核兵器が存在する限り、米国は韓国と日本を含む同盟国の防衛を保証する強力かつ効果的な核抑止力を維持します」とのべました。私は、大統領のこの発言を、残念な思いで聞きました。

 世界の核兵器の半数近くという圧倒的核戦力を保有し、核兵器の先制不使用という国際的要求を受け入れず、攻撃的な核戦略を展開してきた核超大国が、その核戦略を「核抑止」の名のもとに正当化すればどうなるでしょうか。核超大国が、この立場に固執すれば、歯止めのない核拡散は避けられません。それは核戦略の対象とされた国に、核兵器を持つ口実をあたえることになるからです。核超大国が、この立場に立つかぎり、人類は「核兵器のない世界」に到達するどころか、訪れるのは「核兵器が拡散した恐るべき世界」ではないでしょうか。私たちは、核超大国による「核抑止力」論こそ、「核兵器のない世界」への最大の障害だと考えます(拍手)。「核兵器のない世界」にむけて最も重大な責任を負っている核超大国が、そこから脱却することこそが、いま強く求められているということを、訴えたいと思います。(拍手)

 わが党は、オバマ米大統領が、昨年4月にプラハでおこなった「核兵器のない世界」の追求という全世界の諸国民にたいする誓約を具体的行動に移し、それを現実のものとするためのイニシアチブを発揮することを重ねて求め、それを強く期待するものであります。(拍手)

日米関係のこの現実――これで「対等なパートナー」といえるか

 決議案では、「同時に、米国の軍事的覇権主義への固執には根深いものがある」とのべ、具体的に二つの問題を指摘しています。

アフガン増派について――政治的和平への転換こそ

 一つは、オバマ政権のもとで、アフガニスタンへの軍事的介入が強化されつつあることです。昨年12月1日、オバマ政権は、今年の早い時期にアフガニスタンに3万人の米軍を増派する新しい戦略を発表しました。駐留米軍は、オバマ政権下で3倍化され、約10万人にまで膨張することになります。この増派によって軍事攻勢を強化し、その間にアフガニスタン政府軍と警察による治安体制を確立し、2011年7月には撤退を開始するという戦略ですが、アフガニスタン当局自身が治安掌握にはこれから5年はかかるとの見通しを表明し、米軍の駐留期間がどれほどになるかはまったく不明です。

 わが党は、この動きにきびしく反対します(拍手)。それは、外国軍の存在自体が住民の反発を招き、その軍事作戦行動が住民の犠牲を生み、テロの温床を広げ、治安がまた悪化するという悪循環をいっそう深刻にせざるをえないでしょう。問題の解決のためには、軍事的介入から政治的和平への転換こそが強く求められていることを、強調したいと思います。(拍手)

半世紀前の安保改定で日米は「対等なパートナー」になったというが

 いま一つは、日米関係であります。決議案では、つぎのようにのべています。

 「日米関係においても、米国政府には、これまでの覇権主義的な対日支配を変更する姿勢は見られない。その一つの要因として、日本側に、これまでの卑屈な従属的態度を変え、本腰を入れて対等・平等な日米関係を求める根本的転換の姿勢がみられないことがあげられる。同時に、米国が、オバマ政権のもとでも、地球的規模での軍事的介入と干渉のための『米軍再編』をすすめ、日本をその最大の戦略拠点と位置づける基本政策を変えていないという事実を指摘しなくてはならない」。

 オバマ大統領は、昨年11月13日の日米首脳会談で、「日米関係はこれまでも対等なパートナーであったと考えており、今後もそうである」とのべました。さらに翌日の14日の東京での演説で、「日米同盟は2カ月後には50周年を画することになり、50年前のその日、ドワイト・アイゼンハワー大統領は日本の首相の隣に立って、日米両国は『平等と相互理解』に基づく『不滅のパートナーシップ』を構築していくとのべました。それ以来半世紀にわたり、この同盟関係は日米の安全保障と繁栄の基盤として持続されてきました」とのべました。オバマ氏がこの演説で引用したのは、1960年1月19日にワシントンでおこなわれた日米安全保障条約調印式でのアイゼンハワー大統領(当時)の声明で、そこでは「この条約は、完全な平等と相互理解にもとづく関係にあるわれわれ両国間の不滅のパートナーシップを確立するという目標の達成を意味している」とのべられています。

 半世紀前の日米安保条約改定によって、日米関係は「完全に平等なパートナー」の関係になり、それが半世紀続いている。これがオバマ大統領が歴代大統領から受け継いだとする認識であり主張ですが、日米関係の現実はどうでしょうか。問題点は多岐にわたりますが、いくつかの点にしぼって提起したいと思います。

在日米軍基地――米国内では到底許されないことが、日本では横行している

 第一に、在日米軍基地では、米国内では到底許されない、危険な実態が横行しているということであります。

 米国では、米国連邦航空法によって、民間、軍事にかかわらず、飛行場滑走路の末端から「クリアゾーン」(利用禁止区域)を設定し、安全確保のために土地開発が制限されています。さらに、米国防総省は、戦闘支援のための飛行訓練を実施する軍事飛行場にたいしては、民間飛行場よりも厳しい「クリアゾーン」の基準を設けて、建物の制限などについても詳細に規定しています。そして、米国連邦航空法では、海外における米軍飛行場においても「クリアゾーン」の確保を義務づけています。ところが、沖縄・普天間基地では、この「クリアゾーン」内に約3600人の沖縄県民が暮らしており、住宅約800戸、公共施設・保育所・病院が18カ所も存在しています。米国の法律で決して許されない危険な基地が、日本ならば許される道理がどこにあるでしょうか。

 日本では、空母艦載機などのNLP(夜間離着陸訓練)が、厚木、横田、三沢、岩国、嘉手納などの人口密集地で強行され、住民の安全と暮らしにきわめて深刻な被害をもたらしています。ところが米国では、市街地でのNLPは基本的に許されていません。たとえば、ノースカロライナ州でのNLP施設建設計画にたいして、2005年の住民訴訟で終局的差し止め判決がくだされています。バージニア州のオセアナ基地からフロリダ州への艦載機部隊移転計画も、2006年の住民投票の結果、中止されています。米国では許されていない人口密集地での訓練が、日本では長年にわたって続けられ、国民に耐え難い苦しみと危険を押し付けていることを、どう説明するのでしょうか。

 日本では、米軍機による低空飛行訓練が、全土でおこなわれ、国民に多大な被害をあたえ、墜落など事故も繰り返されています。日本の航空法では、航空機の最低飛行安全高度を、居住地域では300メートル、非居住区では150メートルとしていますが、米軍機はこの適用を除外され、空域についても高度についても何の制限もなく、訓練ルートさえ明らかにされず、日本全土を米軍機は自由勝手に訓練場としています。ところが米国では、あらかじめ公表されている国防総省の「空域計画地図 軍事訓練ルート」でしか訓練はできません。米連邦航空局の資料では、訓練ルートの設定も、(1)歴史的建造物や野生生物への影響などの環境評価の調査をおこない、(2)軍が連邦航空局に申請して審査を受け、(3)連邦航空局による住民生活や財産などへの影響の厳格な審査をおこない、(4)連邦航空局がルートを許可するなど、一連の規制措置がとられて、初めて許されます。米国では「野生生物」への影響まで事前に調査して訓練ルートへの規制がおこなわれているのに、日本では何らの規制もない。日本国民への影響は、米国の「野生生物」よりも、考慮されないという現実が許されていいでしょうか。

 「クリアゾーン」問題、NLP、低空飛行など、さまざまな問題で、米国では到底許されないことが、日本では横行しています。これが在日米軍基地の実態であります。これでどうして「対等なパートナー」といえるでしょうか。

日米地位協定――日本とドイツのこの違いをどう説明するか

 第二は、日米地位協定が、在日米軍に数々の特権をあたえていることが、米軍の横暴を許し、米軍の事件・事故・米兵犯罪の温床ともなっていることです。

 たとえば、米兵犯罪の被疑者の身柄の拘禁について、日米地位協定には、日本側が裁判権を行使すべき犯罪であっても、被疑者の身柄が米軍の手中にあるときは、日本が起訴を決めるまでは、身柄は米軍のもとにおかれるという条項があります。1995年におきた沖縄の少女暴行事件にさいして、この凶悪な事件の犯人の逮捕も強制連行もできなかったことは、日本国民の激しい怒りをよびおこしました。

 日米地位協定は、第2次世界大戦の同じ敗戦国として、戦後、占領下におかれ、独立後も、外国軍の駐留のもとにおかれてきたドイツにおける「NATO軍地位補足協定」と比べても、まったく異常な特質をもっています。日本とドイツの協定を比較すると、2国間協定と多国間協定という違いはありますが、その落差は、あまりに大きなものがあります。それは、日米地位協定が戦後一度も改定されていないのにたいして、ドイツにおける地位協定が3回にわたって改定されたことによって、より著しいものとなっています。

 いくつか申しましょう。

 まず、公務のための基地立ち入りと、基地内での警察権についてです。ドイツでは、ドイツ側が、事前通告後、施設への立ち入りができ、さらに緊急の場合は事前通告なしで即時立ち入りができます。ドイツの公共秩序や安全が危険にさらされている場合には、ドイツ側は基地内で警察権を行使できます。ところが、日米地位協定では、日本は、米側が同意しない限り、基地立ち入りや、基地内での警察権の行使はできません。

 基地外での演習・訓練はどうでしょうか。ドイツでは、基地の外での演習・訓練は、陸上であれ、空域であれ、ドイツ側の承認が必要となります。また、基地外の演習・訓練には関連するドイツ法が適用されます。日米地位協定には、そうした規定はいっさいなく、日本側の了解もなしに、日本の国内法も無視して、事実上、自由勝手な演習・訓練がおこなわれています。

 米軍の出入りと移動はどうでしょうか。ドイツでは、ドイツ領内への米軍船舶・航空機の出入り、ドイツ内部での移動について、ドイツ側の承認が必要です。米軍構成員・家族についても出入り・移動について、ドイツ側の承認が必要となります。日米地位協定には、米軍の出入りや移動は、承認や許可の規定はなく、事実上、自由勝手な出入りが可能とされています。

 環境アセスメントはどうでしょうか。ドイツでは、米軍のすべてのプロジェクトについて、早急な環境アセスメントを義務づけられており、有害な影響が避けられない場合は回復または清算措置が義務づけられています。しかし、日米地位協定は、環境アセスメントについて、米側に何らの義務づけもおこなっていません。

 在日米軍基地の現状は、ドイツと比較しても、基地立ち入りと警察権、基地外での演習・訓練、米軍の出入りと移動、環境アセスメントなど、あらゆる面で、主権国家とはいえない、治外法権的実態にあると言わなければなりません(拍手)。ドイツと日本とのこの著しい落差をどう説明するのでしょうか。これでどうして「対等なパートナー」といえるでしょうか。

憲法9条改定への圧力――これが主権国家間のまともな関係か

 そして、第三は、米国が、日本国憲法の改変を、繰り返し求めてきたという事実であります。

 その事例は枚挙にいとまがありません。この間でも、アーミテージ国務副長官(当時)は、2004年3月、「憲法9条の改正は、米国人ではなく日本国民が決めること」としつつも、「憲法9条が(日米同盟や国際社会の安定のために軍事力を用いる点で)邪魔になっている」「連合軍が共同作戦をとる段階で、ひっかからざるを得ない」(『文芸春秋』04年3月号)などと、日本に憲法9条改定を公然と要求しました。

 アーミテージ副長官は、2005年12月にも、「海外での役割の拡大を通じて日本は、さらに注目すべき地球規模のパートナーとなった。だが、課題が残っている。それは日本がどのような地球規模の役割を果たすかにある。あえて言えば、その決断には日本の憲法第9条の問題がかかわっている」(「読売」05年12月4日付)などと、繰り返し憲法9条改定、集団的自衛権の行使を迫っています。

 いうまでもなく日本国憲法は日本の最高法規であり、その改変の是非を決める権利をもっているのは私たち日本国民だけであります(拍手)。日本国憲法、とくに第9条にたいして、アメリカ政府の高官が、くりかえし「邪魔」などと言って改定を要求する。これが主権国家間のまともな関係といえるでしょうか。「対等なパートナー」のふるまいといえるでしょうか。

「平等かつ公正」な関係を打ち立ててこそ、米国は真の尊敬がえられる

 米国内では到底許されないことが日本では横行している在日米軍の実態、ドイツと比較しても治外法権としかいいようのない日米地位協定による特権、そして日本国憲法へのあからさまな侮辱と改定要求――どれ一つとっても、「対等なパートナー」とはほど遠い従属的実態があることは、何人といえども否定できないのではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 私たちは、米国・オバマ大統領に求めます。大統領がのべた「対等なパートナー」という言葉が真実のものであるならば、これらの異常な従属的関係は、すみやかにただされるべきではないか(拍手)。私たちは、米国との真の友好関係をのぞんでいます。しかし、それは支配・従属のもとでは生まれません。文字どおりの対等・平等の関係をつくりあげてこそ、日米両国、日米両国民の間に真に心が通った友好関係が築かれる。これが私たちの確固とした信念であります。この立場から、日米安保条約を廃棄し、それに代えて対等平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ。これがわが党綱領に明記した21世紀の日米関係のあるべき未来であります。(拍手)

 私たちは、マルクスがリンカーン大統領再選にあたって送った祝辞のなかで、「偉大な民主共和国の思想がはじめて生まれた土地、そこから最初の人権宣言が発せられ、18世紀のヨーロッパの革命に最初の衝撃が与えられたほかならぬその土地」と呼んだ、アメリカの偉大な歴史に深い尊敬をもっています。そして、リンカーンが、翌年、マルクスにあてた礼状のなかで、合衆国はすべての国家にたいして「平等かつ厳格に公正」な関係をうちたてることによって、「世界中の尊敬」を求めるという立場を表明したことを、あらためて想起しています。米国は、すべての国ぐに、そしてわが国との間に、リンカーンがのべたように、「平等かつ厳格に公正」な関係を打ち立ててこそ、世界諸国民、そして日本国民から、ほんとうの尊敬をかちえることができることを、私は、強調したいと思います。(拍手)

国際政治の二つの熱い焦点――核兵器廃絶、地球環境問題について

 国際問題の最後に、今日の国際政治で熱い焦点となっている二つの問題について、日本共産党の立場をのべておきます。

「核兵器のない世界」をめざして――NPT再検討会議の成功を

 一つは、「核兵器のない世界」をめざす地球規模の運動の発展に、貢献することです。決議案第15項では、「どうしたら人類は『核兵器のない世界』に到達できるか」と問いかけ、この間の核兵器廃絶にむかう世界的な動きにふれつつ、「核兵器廃絶そのものを主題とした国際交渉をすみやかに開始する」ことが、決定的な意義をもつことを力説しています。ここで強調したいのは、わが党の一貫したこの立場は、国際政治の大勢とも合致したものであるということです。

 2009年12月の国連総会では、マレーシア政府が提案した核兵器禁止・廃絶条約の早期締結のための交渉開始を求める決議が、賛成121、反対31、棄権21と、圧倒的多数の賛成で採択されました。核保有国のなかでこの決議に賛成したのは、中国、インド、パキスタンであります。アメリカ、イギリス、フランス、ロシアは反対ですが、核保有国の決断が強く求められます。日本政府が被爆国の政府にもかかわらず、あいかわらず棄権しているのは、情けないことであります。

 潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、2008年10月の講演「国連と核兵器のない世界における安全保障」で、マレーシアが提案する核兵器禁止条約にもふれて、「私はすべてのNPT締約国、とりわけ核兵器国に、核軍縮・廃絶にいたる効果的措置についての交渉をおこなうという条約上の義務を果たすことを求めるものです」とのべています。

 この要求は、世界のNGOの声でもあります。2009年9月におこなわれた第62回国連NGO年次会議では、基調演説をおこなったジョディ・ウィリアムズ氏が、「われわれは、核兵器廃絶の土台づくりのための明快な戦略を持つ必要がある。その核となるべきは、核兵器の開発、製造、取引、獲得、貯蔵、使用を完全に禁止するための条約あるいは枠組み合意といった核兵器(禁止)協定の交渉成功という、根本的な目標である」とのべています。この会議で採択された「NGO宣言」――「平和と発展のために‥今こそ軍縮を!」では、「核軍縮」の冒頭の要求として、「2010年のNPT再検討会議において核兵器のない世界を達成し拡散を防止する誓約を再確認し強めること」「合意された期限内に核兵器を世界中で禁止し廃絶する協定にかんする交渉を速やかに開始すること」をうたっています。

 原水爆禁止世界大会がよびかけ、日本原水協がすすめている、「核兵器のない世界を」めざす国際署名は、「核保有国をはじめすべての国の政府がすみやかに核兵器禁止・廃絶条約の交渉を開始し、締結することに合意する」ことを端的に求めたものであり、内外で共感と賛同を広げています。

 これら世界中の草の根の反核・平和の声が、今年5月3日のNPT再検討会議の開会前日、5月2日にニューヨークでおこなわれる反核共同行動に大きく結集しようとしています。これは核兵器廃絶のために奮闘する国連や政府代表への大きな励ましともなる歴史的意義をもつ行動であります。わが党は、国際的な反核共同行動に連帯し、NPT再検討会議が、「核兵器のない世界」にむかって新たな一歩を踏み出す場となるよう、力をつくす決意であります。(拍手)

地球環境問題――先進国の責任、途上国の対応、日本政府の問題点

 いま一つは、地球環境問題についてであります。

 国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)が、2009年12月7日から19日まで、デンマークのコペンハーゲンで開催されました。地球温暖化防止の国際条約としては現在、1992年の地球サミットで採択された気候変動枠組条約と、それを土台とする97年採択の京都議定書があります。京都議定書は、今日の温暖化の歴史的責任が先進国にあるとして、その排出量を2008年から12年の「第1約束期間」に1990年比で少なくとも約5%削減する義務を先進国に課しました。今回のCOP15は、2013年以降の温暖化対策のための新たな法的拘束力をもった国際協定の締結にむけて、どこまで接近できるかが課題でした。

 会議でつくられた「コペンハーゲン合意」文書は、「留意する」という表現の決定にとどまりました。その内容も、途上国への資金援助がともかくも盛られたのは積極面ですが、対策の要(かなめ)となる科学的知見が要請してきた、世界全体で2050年までに50%削減することも、そのために先進国が掲げるべき積極的な中長期の削減目標の数字も、いっさい明記されませんでした。

 今後のとりくみとして、以下の3点を具体的に提起するものです。

 第一は、何よりも、地球温暖化に歴史的責任を負っている先進国が、条約に定められた「共通だが差異ある責任」の原則にたって、(1)率先して野心的な中長期の法的拘束力のある削減目標を掲げ、他の国がどうあれ、それをみずからの責任として実行すること、(2)途上国にたいして、同じ道をたどらなくても経済成長は可能であることを示し、それにふさわしい技術・資金援助をおこなうという「二重の責任」を果たすことであります。

 今回の会議でも、この立場を示したEUが途上国からも共感を呼びましたが、先進国の断固とした姿勢ぬきに、国際合意づくりのための事態打開はできません。とりわけ先進国中、最大の排出国である米国の目標が極端に低いことが、世界的な合意づくりの最大の障害となっており、米国にたいし、他の先進国と同様に拘束力のある枠組みに参加するよう、世界が一致して促すことが必要であります。

 第二に、人類共通の課題であるだけに、途上国の側もふさわしい努力が求められます。そのさい、中国、インドなどの新興国も含め、途上国の1人あたりのGDPは、なお先進国の十数分の1以下であり、先進国並みの発展水準を達成する途上国の“発展権”を保障することは、当然必要です。そのために、途上国が、温暖化ガスを大量排出しながら経済発展をとげてきた先進国とは違う、削減しながらの発展の道を開くことができるよう、先進国による途上国支援の拡大強化が不可欠であります。こうした先進国の努力を前提として、途上国としても、国際的な拘束力ある枠組みに積極的にくわわることが期待されます。

 COP15では、温暖化の影響で水没の危機に直面している島嶼(とうしょ)国ツバルや、砂漠化の進行で水不足が深刻なアフリカ諸国からの悲鳴と、先進国の歴史的責任を問う声がとどろきましたが、こうした小島嶼途上国や後発途上国にたいしては、特別の国際的支援が必要であります。

 第三は、京都議定書議長国としての日本の責任についてであります。新政権は、2020年までに25%削減の目標を掲げて内外から歓迎されたものの、COP15では、法的拘束力のある国際的な枠組みづくりに積極的に動く姿はまったく見えませんでした。逆に、米中など主要排出国が参加しないかぎり、自らの目標に責任をもたないとして、合意づくりに逆行する役割を果たし、国際NGOから前政権同様に「今日の化石賞」を受ける始末でありました。

 日本政府のこうした消極姿勢の根本には、25%の削減目標を掲げはしたが、産業界との公的削減協定など、それを裏付ける実効ある措置にとりくもうとしない、温暖化対策そのものの根本的弱点があることを、強く指摘しなければなりません。

 わが党は、日本政府にたいして、国連で約束した削減目標に、他の国がどうであれ前提なしに責任を負う態度を確立するとともに、その裏付けとなる総合的な対策を確立し、文字どおり世界をリードする自覚をもってとりくむことを強く求めるものであります。(大きな拍手)

 今年10月には、生物多様性条約第10回締約国会議が名古屋で開かれます。温暖化の進行は希少生物を絶滅の危険に追い込んでおり、生物の多様性の維持のためにも温暖化の抑制は不可欠であり、議長国としての日本政府の役割は重要であります。

決議案第4章(国政と地方政治での躍進、強大な党建設をめざす方針)について

 つぎに決議案第4章について報告します。

 第4章は、国政と地方政治での躍進、強大な党建設をめざす方針についてのべています。

 全党討論で、この章にかかわっては、とくに、目前に迫った参議院選挙で党躍進の新たな条件と可能性が生まれていること、「有権者の過半数との対話」をふくめ参議院選挙勝利のための活動をどうやりぬくか、いっせい地方選挙勝利と一体に参院選をたたかうことの重要性、中期的展望にたった「成長・発展目標」という新しい提起、それぞれの世代の活力を生かしながら新しい世代への党活動の継承を着実にはかること、とくに職場支部と青年・学生のなかでのとりくみの強化などが、深められました。

 中央委員会報告は、決議案の提起を前提として、討論の焦点になった以上の諸点にしぼって、重点的におこないます。

参院選でいかにして躍進をかちとるか(1)――攻勢的な政治的構えをすみずみまで

 半年後に迫った参議院選挙で、わが党が勝利・躍進をかちとることは、わが党の直面する最大の任務です。いかにしてそれを現実のものとするか。

 まず何よりも重要なことは、この選挙が、私たちのたたかいいかんでは、これまでの政党間の力関係を大きく前向きに変える条件と可能性をはらんだ選挙だということを、全党と後援会の共通の確信にし、この選挙をたたかう攻勢的な政治的構えを、党と後援会のすみずみに確立することであります。

 決議案は、「この選挙は、民主党を中心とする新政権のもとでの最初の国政選挙であり、まったく新しい政党配置のもとでたたかわれる。すなわち新政権を構成する与党3党(民主党、社民党、国民新党)、国民から退場の審判がくだった自民党と公明党、『建設的野党』としての日本共産党が、それぞれ真価を試される」とのべています。

民主党――政権党としての「実績」と、政治の「中身」が問われる

 まず、政権与党となった民主党はどうでしょうか。決議案がのべているように、民主党は、さきの総選挙では「政権交代」を訴えれば勝利できました。しかし、参議院選挙ではそうはいきません。政権党としての1年近くの「実績」が問われ、今後、政権党としてどういう政治をおこなうかの「中身」が問われます。

 発足以来、4カ月を経過した民主党政権は、国民要求の圧力を受けて部分的には前向きの施策を実行しつつありますが、国民が新政権にたくした「政治を変えてほしい」という「要」の問題については、沖縄・普天間基地の問題での後退と迷走、後期高齢者医療制度撤廃の先送り、労働者派遣法改正での重大な後退、保育分野での規制緩和路線の推進、軍事費と大企業・大資産家減税という二つの分野を引き続き「聖域」にしていることなど、国民の期待を裏切る一連の問題点があらわになりつつあります。民主党政権が、数の暴力にたよった国会運営など、議会制民主主義を壊す強権的姿勢を強めていることへの不安も広がっています。さらに、首相と民主党幹事長がともに、「政治とカネ」をめぐる疑惑にたいする説明責任を果たしていないことにも、国民の不信が強まっています。

 くわえて、民主党のかかえる最大の問題点は、マスメディアからも「民主党には各論はあっても、総論がない」という指摘がされるように、「どういう日本をつくるのか」という戦略的ビジョンを、外交、内政ともに、この党が示しえないでいることです。この党の政策には、国民要求を反映した前向きの要素も「散在」していますが、それは「どういう日本をつくるのか」という戦略的ビジョンを欠いた、バラバラのものです。その根本には、民主党が、「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」という「二つの異常」から抜け出す立場をもっていないという問題が存在しています。

自民・公明――これまでの政治への反省ぬきに未来なし

 つぎに、国民に退場の審判をくだされた自民党と公明党はどうか。決議案では、「自民党と公明党は、国民からあれだけきびしい審判を受けた以上、自らのこれまでの政治に対する総括と反省が問われる。それ抜きにはどんな政策を掲げても信頼をえることはできないだろう」と指摘しました。

 しかし、自民党からは、総選挙から4カ月あまりたったいまも、これまでの自らの政治についての総括と反省は、いっさい聞こえてきません。逆に、新政権にたいして、反動的な立場からの攻撃に終始するというのが、自民党であります。たとえば、沖縄県の辺野古に新基地建設を押し付ける先兵となり、労働者派遣法改正や最低賃金引き上げにたいして「国際競争力に影響する」という財界の代弁者となって反対し、子ども手当や農家への所得補償を「社会主義的政策」とののしって反対する。さまざまな問題点や限界をはらみつつも国民要求を反映した新政権の行動を、反動的な立場から攻撃し、それが「社会主義」に見えてしまう(笑い)。さらに国会で与党側が横暴な運営をおこなうと、審議によって問題点を明らかにするのでなく、機械的なボイコットで応じる。こういう姿勢をとりつづけるかぎり、自民党にはいよいよ未来はないといわなければなりません。(拍手)

日本共産党――政治を前に動かす「三つの任務」を旗幟鮮明に掲げて

 こうした政党状況にあって、日本共産党は、「建設的野党」として、参議院選挙にのぞむ政治的旗印を、旗幟(きし)鮮明に掲げています。

 すでに決議案で提起し、中央委員会報告でもつっこんで解明した、「過渡的な情勢」のもとでの日本共産党の「三つの任務」は、それぞれがそのまま参議院選挙にむけての党の押し出しの基本となるものです。そして私が強調したいのは、「三つの任務」のどれ一つをとっても、日本の政党のなかで、その仕事をしっかり果たせるのは日本共産党しかないということであります。(拍手)

 第一の任務――国民要求にこたえて現実政治を前に動かすという点で、決議案は、暮らしと経済の分野、平和と民主主義の分野で、旧来の政治のどこを転換すべきかの「要」を具体的に明らかにしています。これらの「要」の問題で、新政権にはその政治姿勢に後退や問題点があらわれ、自民党などは旧来の悪政の継続に固執する立場を示しているもとで、「現実政治を前に動かす」という仕事を、どの分野でも堂々と担えるのは日本共産党であります。

 第二の任務――日本の政治の「二つの異常」――「異常な対米従属」「財界・大企業の横暴な支配」をただし、「国民が主人公」の新しい日本への改革をめざす党は、日本共産党だけです。決議案が強調しているように、新しい情勢のもとで、暮らしでも平和でも、国民の切実な願いをかなえようとすれば、「二つの異常」にぶつからざるをえない、そのかかわりが「これまでよりも直接的な形で明らかになってくる」なかで、わが党が「どういう日本をつくるか」の明確なビジョンを高々と示していることは、大きな意義があります。

 第三の任務――日本の政治の反動的逆行を許さないという点でも、日本国憲法がさだめた国民主権、恒久平和主義、議会制民主主義などの民主的・平和的諸原則をまもりぬく日本共産党の役割は、かけがえのないものです。

 旧来の自民党支持基盤がいま大規模に崩壊しつつあり、これまで保守と呼ばれてきた人びとが、これまでのしがらみから解放されて、自らの切実な要求をたくすことができる政党はどの党かと、新たな探求を開始しています。総選挙で民主党に投票した多くの人びとも、その現実の政治的体験を通じて、民主党政権の限界や問題点への批判を強め、「政治を変えたい」という願いをたくせる党はどこかを、さらに探求しつつあります。広大な他党支持層、無党派層に広くわが党の姿を伝えきるならば、これまでの政党間の力関係を大きく変え、日本共産党の勝利・躍進をかちとる条件は大いにある。みなさん。このことを全党と後援会の共通の確信として、参議院選挙での躍進を必ずかちとろうではありませんか。(拍手)

参院選でいかにして躍進をかちとるか(2)――活動方針について

 参議院選挙での勝利・躍進をめざす活動方針については、決議案に明瞭(めいりょう)にのべられていますが、いくつかの点を強調しておきたいと思います。

「比例を軸に」「全国は一つ」――日本共産党躍進の大波を

 まず、「比例を軸に」をつらぬき、日本共産党の政策、歴史、理念を丸ごと語り、比例代表選挙で650万票以上の得票を獲得して、5議席を絶対確保するという目標を、全党の一致結束した力で必ずやりとげることであります。

 参議院の比例代表選挙は、日本全国が一つの選挙区となる最大規模の選挙戦であり、政党の力量、その消長が、もっとも直接にあらわれるたたかいです。文字どおり全国どこでも必勝区のたたかいです。候補者は日本共産党そのものです。全国すべての党員と党組織が、このたたかいを自分自身のたたかいとして奮闘し、一人ひとりの党員が「候補者」の気概でがんばり、一票一票を他党とのしのぎをけずるたたかいで獲得し、それを蓄積して、5議席に必ず結びつけるたたかいをやりきることを心から呼びかけるものです。(拍手)

 そのさい5議席を、「全国は一つ」の立場で、全党の一致結束した力で獲得することを、全党の共通の強い自覚とすることが大切です。全国を五つの地域に分け、それぞれの予定候補者の「活動地域」としていますが、それぞれの地域の党組織は、その地域の候補者の当選にだけ責任を負っているわけではありません。全国のどこの党組織も、5人の全員当選に共同して責任を負っているのです。「全国は一つ」「日本は一つ」の立場で、力をあわせて、全員当選を何としてもなしとげようではありませんか。

 選挙区選挙では、東京選挙区で議席を絶対確保するために、東京都党組織の奮闘はもとより、全国が自らのたたかいとして、勝利への支援をおこなうことを呼びかけるものです(拍手)。かつて議席をもったことのある北海道、埼玉県、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県での積極的な議席獲得への挑戦も、全党的課題として位置づけてとりくみます。(拍手)

 選挙区では、すでに沖縄県をのぞく46都道府県で予定候補者を擁立し、活動をはじめています。選挙区のたたかいも、政党選択――比例代表選挙を中心にすえるという立場を堅持し、比例で日本共産党の躍進の波をつくりだすなかで、選挙区での勝利をめざすとりくみが重要です。議席の絶対確保をめざす東京においても、政党選択で日本共産党の大波を起こすことと一体に、選挙区での必勝をめざすという立場をつらぬいてこそ、勝利への道が開かれることを強調したいと思います。

選挙活動の規模を抜本的に広げる――情勢がそれを求めている

 参議院選挙をたたかう活動方針の基本は、「支部が主役」の選挙に徹することにあります。すなわち、すべての支部が「政策と計画」のなかに得票目標をしっかりと位置づけて、「四つの原点」にもとづく活動に自覚的にとりくむたたかいを、草の根からつくりだすことであります。

 決議案では、(1)結びつきと要求にもとづく活動を根本の課題として重視する、(2)大量宣伝、対話と支持拡大を今日の情勢にふさわしく発展させる、(3)党勢拡大の大きな高揚のなかで選挙をたたかう、(4)選挙の日常化の要として後援会活動の強化をはかる、(5)支部を基礎とした「大運動」「集い」を100万人の規模でおこなうことを提起しています。これらを前提に、とくに二つの点について、訴えます。

 一つは、私たちの選挙活動の規模を抜本的に広げるということであります。決議案が、「『草の根』の宣伝力を抜本的に強め、日常化する」と提起したこと、「対話と支持拡大では、『対話の広がりいかんが勝敗を分ける』という立場で、支持拡大とともに、対話の広がりを思い切って重視する。……気軽に、楽しく、みんながとりくむ運動として、有権者の過半数と対話することを目標に、広大な規模でとりくむ」と提起したことに、大きな反響と、積極的な決意が寄せられています。

 決議案が、「有権者の過半数と対話することを目標に」と提起したのは、何よりも今日の情勢がそれを求めているからであります。報告でものべてきたように、従来の自民党支持層、他党支持層、無党派層のなかで、新しい政治を探求する大きな動きがおこっています。わが党はいま、農協や森林組合、医師会、自治体関係者など、従来の保守の人びともふくめ、これまでまったくわが党が接点をもてなかった広大な人びとと、心通う新たな関係をつくりつつあります。ところが、昨年の総選挙でとりくんだ対話総数は、積み上げの数字で、有権者比で20・7%にとどまっています。わが党の活動が、この程度の規模にとどまるなら、いまおこっている底深い変化の流れに、到底追いつくことができません。国民のなかにおこっている変化に、わが党が接点をもてないままに、選挙が終わってしまうことになります。全有権者を対象に、「有権者の過半数と対話することを目標に」、この構えにたったとりくみをやりきってこそ、今おこっている変化を党躍進にむすびつけることが可能になります。みなさん。全党の知恵と力を結集し、あらゆる戦線・分野の力を集め、後援会員や支持者の協力もえて、この壮大なとりくみをやりぬこうではありませんか。(拍手)

党勢拡大――「やるべきことをやりきり、勝つべくして勝った」といえる選挙に

 いま一つは、党勢拡大の大きな高揚のなかで、選挙をたたかうということであります。

 党大会にむけて、全党は、昨年10月の9中総決定がよびかけた「党躍進特別期間」にとりくんできました。12月は、全党の奮闘によって、党員、日刊紙読者、日曜版読者ともに前進をかちとって、この大会を迎えることができました。(拍手)

 党員拡大では、前党大会からの約4年間に、3万4千人を超える新しい党員を迎え、党員数は前党大会時を上回り、40万6千人となりました。新しく社会進歩の道を共に歩む決意をされた同志のみなさんに、党大会の名において心からの歓迎の言葉を送ります。(拍手)

 「しんぶん赤旗」読者の拡大では、石川県と、千葉県・東葛(とうかつ)地区、石川県・金沢地区、同・能登(のと)地区、長崎県・北部地区――1県、4地区委員会が、日刊紙、日曜版ともに前大会時を上回って大会を迎えています。しかし全党的には、前大会時を超えるにはいたっていません。全党的な読者の現勢は、日刊紙、日曜版あわせて、145万4千人であります。

 「躍進期間」の期日は、1月末です。大会に呼応して、運動を飛躍させ、とりわけ党勢拡大の目標達成に正面から挑戦し、さらに2月以降も党勢拡大の大きな上げ潮をつくりながら、参議院選挙での勝利をつかみとろうではありませんか。

 決議案で、「党員拡大の飛躍とともに、読者拡大では前回参院選時比3割増に正面から挑戦する」と提起したことは、全党に真剣な議論をよびおこしています。この問題でも、今日の情勢の特徴と党躍進の可能性をつかんだところでは、「たいへんな目標だが、正面から挑戦しよう」という決意がかためられ、足を踏み出しています。

 この課題については、ぜひ昨年の総選挙の教訓を思い起こしていただきたい。総選挙の結果から教訓を引き出した昨年10月の9中総決定で、私たちは、「党の自力そのものはどうだったか」と問いかけ、「一言でいうと、自力をつける途上でのたたかいだったというのが、今回の総選挙でした」という教訓をひきだしました。前回総選挙時比でみると、党員数では前進して選挙をたたかいましたが、読者数では、日刊紙で90・3%、日曜版は90・5%という到達で選挙にのぞむ結果になったことを指摘し、9中総決定で、「5中総でここに『わが党の活動の最大の弱点』があるとのべた現状を、私たちはなお打開するにいたっていません」と強調したことを、いまあらためて銘記したいと思います。

 昨年の総選挙で、わが党は現有9議席の確保にとどまりました。この選挙は厳しく激しいたたかいではありましたが、わが党が前進するチャンスも大いにあった選挙でした。政治論戦でのリードは明らかであり、訴えがとどいたところでは党支持が確実に広がりました。そのチャンスをものにできなかった最大の原因は、わが党の自力不足にありました。9中総決定では、得票率を1・2倍、1・3倍以上にのばした上位3自治体の教訓を明らかにしましたが、どこでも党勢拡大で顕著な前進を記録している党組織でありました。

 今年の参院選は、先にのべたように、まったく新しい政党配置のもとでたたかわれ、わが党のたたかいいかんでは、まちがいなく前進・躍進のチャンスが存在する選挙です。しかし、ここで党の自力をつけなければ、そのチャンスを逃しかねないことも、これまでのたたかいを振り返って、私たちは直視しなければなりません。

 新しい情勢のもとで生まれている党躍進の条件、チャンスを現実のものにするには、党勢拡大の大きな上げ潮で選挙をたたかうことが、不可欠です。それは容易ではない仕事ですが、他に安易な道はないことは、私たちが、この間の選挙で骨身にしみて共通の実感としていることではないでしょうか。それならば挑戦しようではありませんか。(拍手)

 全党の同志のみなさん。「党員拡大の飛躍とともに、読者拡大では前回参院選時比3割増」という決議案の提起を受け止め、大いに議論し、党勢拡大の目標達成に正面から挑み、今度の選挙こそ「やるべきことをやりきり、勝つべくして勝った」といえる選挙にしようではありませんか。(拍手)

綱領実現をめざす、中期的展望にたった「成長・発展目標」について

 つぎに、綱領実現をめざす、中期的展望にたった「成長・発展目標」について報告します。

 決議案は、「綱領実現をめざし、中期的展望にたって、それぞれの党組織が、つぎのような『成長・発展目標』をもち、その実現のために系統的に奮闘する」として、こうつづけています。

 「『成長・発展目標』の基本は、国政選挙で、どの都道府県、どの自治体・行政区でも、『10%以上の得票率』を獲得できる党をめざすということである。そのさい、すすんだ都道府県、党組織では20%から30%以上の得票率をめざす。早期に5%以下の県をなくすことも重要である」。

 この提起は、全党討論できわめて積極的に受け止められています。とくに「綱領実現の道筋が見えた」、「大志をもって活動する初心を思い起こした」などの感想が多いことは、うれしいことです。

「成長・発展目標」を提案した意味について

 まず、中期的展望にたった「成長・発展目標」を提案した意味について報告します。わが党は、「21世紀の早い時期に民主連合政府を樹立する」という一定の長期的展望にたった目標の実現をめざしています。一方、私たちは、その時々の直面する短期的目標をもって奮闘しています。現時点での短期的目標としては、目前に迫った参院選で比例代表で「650万票以上」を獲得して勝利・躍進することを追求しています。

 綱領実現をめざす「成長・発展目標」とは、その時々の直面する短期的目標と、民主連合政府の樹立という一定の長期的展望にたった目標とをつなぐ、中期的展望の目標として提起したものです。

 全党がこうした「成長・発展目標」をもって活動することは、民主連合政府という目標への接近を具体化し、自覚化するうえで大きな力となるでしょう。私たちが、「21世紀の早い時期に民主連合政府を樹立する」という目標を本気で実現しようとすれば、いつまでも得票率で7%台、国政で第4党という地位に甘んじていて良いわけがありません。できるだけ早く、どの党組織も「10%以上の得票率」を獲得し、すすんだ党組織は20%、30%を獲得し、現在の政治的力関係を大きく変え、国政で第3党、第2党、第1党という地位を獲得することがどうしても必要になります。全党がこうした大志ある目標を決め、たえずそれにてらして到達点を自覚し、民主連合政府への接近の道を開こうということが、「成長・発展目標」を提案した意味であります。

 同時に、中期的展望にたった「成長・発展目標」をもって活動することは、その時々の直面する短期的目標――現時点ならば参院選の勝利・躍進という目標に、「成長・発展目標」への接近の第一歩としての位置づけをあたえ、直面する活動をすすめるうえでも、それを綱領実現との関係で自覚化し、大志とロマンをあたえるものとなるでしょう。

「すすんだ党組織」と「遅れた党組織」のそれぞれの具体化について

 つぎに強調したいのは、「成長・発展目標」の基本は、どの党組織も「10%以上の得票率」を獲得できる党をめざすということですが、「すすんだ党組織」と、「遅れた党組織」は、それぞれが到達点にふさわしい具体化をおこなうことが必要になるということです。

 決議案では、「すすんだ党組織では20%から30%以上の得票率をめざす」としていますが、「すすんだ党組織」といっても、それは党内の比較ですすんでいるということであり、今日の日本の情勢が求める水準、他党の水準にてらすなら、決してすすんでいるとはいえないわけです。今日の情勢とそのもとでの党の政治任務が求める水準にてらすならば、党全体が遅れているのであって、それは相対的に「すすんだ党組織」も例外ではありません。そのことを自覚して、得票率で過去最高だった時期の党活動の水準をあらゆる点でうわまわる党をつくることをめざし、「20%から30%以上の得票率をめざす」というとりくみに本格的に挑戦することをよびかけたいと思います。

 同時に、決議案では、「早期に5%以下の県をなくすことも重要である」と提起しています。「遅れた党組織」から抜け出し、早期に5%以上となり、10%をこえようとすれば、その党組織ごとの実態をふまえ、どういう発展をかちとるかの具体的計画が必要になってきます。たとえば自治体での議員空白、地域、職場、学園などの党組織の空白をどう克服していくか、国民とのむすびつきをどう広げ、どうたたかいをおこしていくか、支部を援助する中間機関をどう強化するかなど、その党組織ごとの発展の要をにぎった具体的計画をたて、うまずたゆまず追求することが必要となります。「遅れた党組織」の状態はけっして宿命ではありません。「遅れた党組織」が短期間に「すすんだ党組織」に発展した経験は、わが党の歴史のなかにたくさんあります。「遅れた党組織」ほど、発展の可能性は大きいと“プラス志向”で考えて(笑い)、積極的なとりくみをおこなうことを訴えるものです。(拍手)

「支部が主役」が具体化の大原則――党規約にたって

 「成長・発展目標」をどうやって具体化していくか。ここでも「支部が主役」が大原則です。党規約第40条第2項は、「支部の任務」の一つとして、こう明記しています。

 「その職場、地域、学園で多数者の支持をえることを長期的な任務とし、その立場から、要求にこたえる政策および党勢拡大の目標と計画をたて、自覚的な活動にとりくむ」。

 このように党規約では、「その職場、地域、学園で多数者の支持をえる」ことを、支部の「長期的な任務」だとしています。同時に、この立場から、要求にこたえて「政策と計画」をもった活動にとりくむことをのべています。「成長・発展目標」を、党規約のこの精神にたって、「支部が主役」で具体化することが大切です。すべての支部が、大会決議案の提起にこたえて、「成長・発展目標」をもち、一定の長い視野にたって、職場、地域、学園で、多数者の支持をえる党組織に発展していく大志をもって活動することをよびかけるものです。

 決議案は、「この目標の実現は、日本政治が現在の『過渡的な情勢』から前向きに抜け出す方向にすすむうえで、決定的な力となるだろう」とのべています。みなさん、2010年代の最初の年に開かれる党大会でこの大志ある方針を決定し、支部を基礎に全党が『成長・発展目標』をもち、その実現のために系統的なとりくみをすすめ、2010年代を党躍進の歴史的時期にするために奮闘しようではありませんか。(大きな拍手)

それぞれの世代の活力を生かしながら、新しい世代への党活動の継承を

 決議案では、「成長・発展目標」を実現するために、「どれだけの党員、『しんぶん赤旗』読者の陣地を築くかの目標を、有権者比でもち、その実現をめざして奮闘する」ことを提起しています。そのさい、「量とともに質を」の見地が重要です。すべての党員が条件にそくして党活動に参加する強く、温かい党づくりをめざし、綱領学習・綱領読了をすすめること、「党生活確立の3原則」――支部会議に参加する、「しんぶん赤旗」日刊紙を読む、党費を納める――で、大きな前進をはかる目標もあわせて持つ必要があります。

 そして、決議案は、「このとりくみのなかで、それぞれの世代の活力を生かしながら、新しい世代への党活動の継承を着実にはかるとりくみに、思い切って力をそそぐ」ことを訴えています。2010年代を党躍進の歴史的時期にするうえでも、綱領路線の実現にとっても、党の世代的な継承のためのとりくみに、全党が特別の力を集中する必要があります。職場支部の活動強化と、青年・学生の革新的結集は、そのための“車の両輪”ともいうべき重要な課題であります。

職場支部――「職場講座」を生かし本格的前進に力をそそぐとき

 職場支部の活動では、わが党は、前党大会決定にもとづいて2度にわたる「職場講座」を開き、全国の職場支部の活動に学びながら、この分野での新たな前進への探求をおこなってきました。この分野での私たちの活動は、なお後退傾向を打開して、本格的な前進に転じるまでには、全体としては至っていません。しかし、「講座」をふまえた全国の実践によって、法則的発展の萌芽(ほうが)が生まれていることは重要です。

 労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくることは、党活動前進の根本です。第1回「講座」では、「出発点はあいさつから」「労働者の全生活にわたってつきあう」「党員の苦しみは、労働者みんなの苦しみ」という見地で、人間的な結びつきをつくることを提起しました。これを文字どおり実践するなかで、信頼を深め、入党者を迎えた経験が全国各地に生まれています。そのさい、党員が、自らの仕事に誇りをもち、仕事への自らの誇りを語ることが、劣悪な労働条件のもとでもまじめに懸命に働いている労働者の心をとらえ、信頼をかちとる契機となっていることも重要な教訓です。

 また、どの問題でも、労働者の「切実な要求」を出発点にすれば、前進の道はみえてきます。この間の大規模な雇用破壊は、財界・大企業による職場支配を土台から掘り崩す深刻な矛盾を噴出させています。その矛盾は非正規労働者の雇用破壊に集中的にあらわれていますが、正規労働者も賃金・一時金のカット、無法な退職強要、長時間過密労働などにさらされ、成果主義にもとづく職場支配は、根本から崩壊しつつあります。このもとで非正規労働者でも、正規労働者でも、職場の無法をただし、人間らしい労働のルールを求めるたたかいが、新たな広がりをみせています。

 非正規と正規の連帯という問題を考えるさいに大事なことは、何よりも正規労働者が、非正規労働者の苦しみをわがこととして、その悩みに耳を傾け、その要求をみずからの要求としてこそ連帯は発展するということです。そして、この仕事をすすめるうえで階級的・民主的労働組合と日本共産党の職場支部が、先進的役割を果たすことが決定的に重要であることは、この間の実践が証明しています。

 「派遣切り」に抗して労働組合をつくって立ち上がった経験がおこりました。「ついに労働者が立ち上がりました」と、ニュースで伝えられました。長年にわたって正規労働者の党支部が党の旗を厳しいなかでも守り抜いてきた。そして、非正規の労働者に心を寄せ、結びつきを強めてきたところで、たたかいがおこっているわけです。正規が非正規の苦しみをわがこととして、ともにたたかうという見地が大切です。

 職場支部の後継者づくりという点では、いまがとくに重要な時期であることを、強調したいと思います。いわゆる“団塊の世代”をふくむ50代後半から60代の同志たちは、その多くが60年代から70年代の党躍進の時期に入党し、労資協調の反共・反労働者攻撃に立ち向かい、不屈に党の旗を掲げ、労働者の切実な要求実現と国政革新のために奮闘してきた同志たちです。いま、この世代の同志たちが、退職を迎える時期となっています。職場で守り続けてきた党の旗を、何としても次の世代に継承するために、既存の支部を存続させ、さらに新たな職場支部を誕生させるという意気込みで、あらゆる知恵と力を傾けることを心から訴えるものです。(拍手)

 党機関が、職場支部の活動を、担当部門任せにするのでなく、機関の総力をあげてとりくむ姿勢を強化することが重要です。職場支部援助委員会の活動も、機関全体のそうした姿勢があってこそ、生きた力を発揮します。

 みなさん、日本の人口の7割をしめ、社会主義・共産主義への前進を歴史的使命としている労働者階級のなかで多数者になってこそ、民主連合政府への道は開かれ、綱領路線の実現は保障されます。そのためにひきつづき探求と実践をすすめようではありませんか。(拍手)

青年・学生――将来をみすえ、党の総力をあげて前進をつくる

 いま一つは、若い世代のなかでの活動の強化です。青年・学生のなかでの活動を発展させるうえで、これまでにない広い青年・学生を結集する新たな条件が広がっていることに、注目することが大切です。

 決議案は、雇用、平和、学費問題など、切実な願いの実現をめざす青年・学生のたたかいの発展を「日本の大きな希望」とのべましたが、これらのたたかいが若者のなかでの連帯をめぐる困難さ――「正社員になれないのは自分の能力が足りないから」「学費で苦しいのは自分の家庭が裕福でないから」などの「自己責任」論を乗り越えて発展していることは重要です。党は、若者の願い、苦しみに心を寄せ、たたかいを励まし、連帯と支援を強めます。

 同時に、新しい情勢のもとで、青年・学生のなかで、政治への関心、科学的世界観、社会観への関心が、新たな広がりをみせていることはたいへん注目されます。自らの暮らしと進路をめぐる問題だけでなく、世界経済危機、地球環境問題、核兵器問題など、人類が直面している諸問題についても、青年・学生は、知的関心を強めています。世界と日本の資本主義の矛盾の深まりのもとで、こうした知的関心が、日本共産党、科学的社会主義とマルクスへの関心へと向かいつつあることも重要であります。

 2008年7月の6中総決定は、「若い世代にどういう姿勢で働きかけるか」について、「若い世代が直面している『二重の苦しみ』に心を寄せる」こと、「関心にそくして、現状打開の科学的展望を広げるとりくみ」をすすめることを強調しました。この基本点をにぎって、全党がその総力をあげて青年・学生のなかでの活動を強化するならば、若い世代のなかでの活動を大きく前進させる条件は大いにあります。

 とりわけ強調しておきたいのは、党機関が、この問題を担当部門、担当者まかせにするのでなく、党と革命運動の未来がかかった問題として、党活動・党建設の中心の一つに位置づけ、総力をあげて探求・挑戦し、うまずたゆまず系統的な努力をはかることであります。6中総決定にもとづく民青同盟への親身な援助とともに、学生の中での活動の戦略的な重要性を自覚し、学生の革新的結集に開拓者の精神でとりくむことが必要であります。

 この間、前進をかちとっている党組織は、例外なく、党機関の長を先頭に、5年、10年先を見すえて、青年・学生のなかに党をつくり、民青同盟をつくることに、正面からとりくんでいることが、最大の教訓です。

 若い世代の深刻な生活苦にこたえ、未来への知的探求にこたえ、党と革命運動の長期的未来を展望し、青年・学生のなかでの活動の抜本的強化に、全党があげてとりくむことを、心からよびかけるものであります。(拍手)

決議案第5章(激動の世界と未来社会への展望について)について

 最後に、決議案第5章、「激動の世界と未来社会への展望」について報告します。

 第5章は、資本主義から社会主義・共産主義へという体制的変革の角度から世界論をのべています。

 決議案では、「利潤第一主義」という資本主義の矛盾が、今日の世界において、社会的貧困と格差の広がり、発展途上国に資本主義が自立的な発展の道を提供できていないこと、金融危機と過剰生産恐慌、地球温暖化など、さまざまな社会的害悪・災厄となってあらわれるもとで、世界でも、日本でも、科学的社会主義とマルクスへの新鮮な注目が広がっていることを明らかにしています。

 さらに決議案では、21世紀の世界の現実のなかに、未来社会への動きがさまざまな形であらわれていることを具体的にのべ、党綱領が21世紀の世界史的な展望として、「帝国主義・資本主義を乗り越え、社会主義に前進することは、大局的には歴史の不可避的な発展方向である」とのべていることを示しています。

未来社会の展望をもつ党だからこそ、直面する問題にも大きな視野で

 この章にかかわって、報告で強調したいのは、わが党が、こうした未来社会への展望をもっていることが、目の前で解決が迫られている問題の打開の道筋とその意義を、より大きな視野と展望のなかで明らかにできるということであります。

 決議案が指摘した世界で解決が迫られているどんな人類的課題をとってみても、問題を引き起こす根源にあるのは、「利潤第一主義」という資本主義の矛盾であり、それを正面からとらえてこそ、問題解決の合理的方策が見えてきます。

 たとえば、地球温暖化を引き起こした元凶は、「利潤第一主義」のために、「大量生産・大量消費・大量廃棄」という生活を諸国民に押し付け、人びとの生活をこの狭いゆがんだ枠組みに無理やり押し込んできた、資本主義にこそあります。このことを正面から見据えてこそ、問題を打開していくうえでの先進国の責任も明らかになり、この問題の根本的な解決への探求の道も開かれます。

 綱領の未来社会論では、「労働時間の抜本的な短縮」による「社会のすべての構成員の人間的発達」が、社会の大きな目標となることを、明らかにしています。この綱領的な展望は、さまざまな人間的発達の可能性、成長への抱負をもちながら、それが生かせないで苦しんでいる現代の若者たちに、私たちの未来社会論の大きな魅力を示すものとなっています。また、未来社会のこの展望は、いまたたかわれている労働時間短縮をめざすたたかい、人間らしい労働のルールをつくるたたかいの壮大な人類史的意義を明らかにし、労働者のたたかいへの限りない励ましとなるものであります。

 綱領では、日本社会の当面する改革の課題は、資本主義の枠内での民主的な改革であり、経済の分野では「ルールなき資本主義」を正して、暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」を築くことを目標としています。同時に、この改革の成果の多くは、未来社会にも引き継がれていくことでしょう。綱領でのべている「ルールある経済社会」とは、資本主義の枠内で実現すべき目標ですが、それを綱領で「ルールある資本主義」と表現していないのは、「ルールある経済社会」への改革によって達成された成果の多く――たとえば労働時間の抜本的短縮、男女の平等と同権、人間らしい暮らしを支える社会保障などが、未来社会にも引き継がれていくという展望をもっているからであります。

 こうして、綱領で語られている未来社会の展望は、現在の日本で、また世界で、私たちがぶつかっている矛盾や困難と直接かかわっており、将来の人類社会が、それらの問題をどのような形で解決するかの根本的な道筋を示しています。

 決議案でのべたように、世界をみれば、資本主義の矛盾の深まりのもとで、世界の少なくない人びとがこの体制を乗り越える模索をはじめています。さらに世界の現実のなかに、未来社会への動きが、さまざまな形であらわれています。そういう時代にあって、いまの日本の政党のなかで、人類の歴史は資本主義で終わりではない、資本主義を乗り越える歴史的時代が必ず訪れるという展望をもっている政党は、私たち日本共産党だけであります(拍手)。そういう政党こそが、21世紀にほんとうの未来をもちうるのであります(拍手)。そして、そういう政党だからこそ、目の前で解決が迫られているどんな問題にも、より大きな視野と展望のなかで、確固とした立場でたちむかえるのであります。このことに確信と誇りをもって、奮闘しようではありませんか。(大きな拍手)

 全党のみなさん、私たちの綱領的展望と固く結びついた名前――日本共産党という党名を高く掲げ、まず当面する参議院選挙での躍進をかちとり、さらに2010年代を党躍進の歴史的時期とするために、ともに知恵と力をつくそうではありませんか。(大きな拍手)

 以上をもって、中央委員会を代表しての報告を終わります。(大きな拍手)

(「しんぶん赤旗」2010年1月15日掲載)



JCPトップページサイトマップ「しんぶん赤旗」著作権リンクについてメールの扱いについてアクセス地図

(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4−26−7 TEL.03-3403-6111 FAX.03-5474-8358 メール