2011年4月11日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

エネルギーは地産地消

高知・梼原町


 東日本大震災と、福島原発の事故は、日本のエネルギー政策の脆弱(ぜいじゃく)さを悲劇的なかたちであらわにしました。原発に頼らないエネルギー政策について国民的議論が必要です。その大きな柱となる再生可能エネルギー、自然エネルギーの活用に積極的にとりくんでいる地方自治体があります。高知県梼原町(ゆすはらちょう)からのリポートと、国会で再生可能エネルギーを重視すべきだと主張してきた日本共産党の吉井英勝衆院議員の提案です。


原発に頼らず 自然の力生かす

 夕暮れ。町の大通りに82基の街路灯がともり、クラブ部活動を終えて帰る子どもを照らします。電気は、近くの小水力発電所から。

 高知県梼原町は電気の27%を自然エネルギーで賄っています。梼原町は自然と上手に付き合う町です。

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 梼原町 高知県西部の梼原川(四万十川支流)上流に位置する広さ約236平方キロの山あいの町。人口約4千人。愛媛県境には1000メートル前後の山が連なり、林業中心の町。米ナス、シシトウなど園芸野菜を栽培。

 町役場や農協が入る町総合庁舎は、外壁や内部の大部分に町産のスギ集成材を使い80キロワットの太陽光発電を備えた町のシンボル的な建物。災害時の避難場所に使えるようにもなっています。矢野富夫町長は「町にある資源を生かすことが大事です。環境問題に取り組むことで住民生活の利便性向上につなげる『共生と循環社会』を目標に掲げています。電気と燃料を町で生み出すと災害時のライフラインの確保の上でも役立ちます」。

 県境の山頂にある町営の風力発電所、梼原川の段差を利用して毎時53キロワットを出す水力発電所、個人住宅や公共施設に設置した太陽光発電装置など、風、水、太陽を電気に変えています。

 もうひとつ力を入れているのが、町の91%を占める森林の活用です。町森林組合は、臨時を含め50人ほどの作業員が従事し9年間で6158ヘクタールの間伐を実施。ほぼ必要な間伐を終え、森林のCO2(二酸化炭素)吸収効果を高めています。公共施設などへの町産材の積極的な活用と同時に、これまで使われなかった商品価値のない木は、町や森林組合などが作った工場で「木質ペレット」に姿を変え、公共施設の冷暖房に利用されています。今年の生産目標は1800トン。町外にも出荷しています。

 間伐や太陽光発電設置には風力発電所の売電益から補助をしています。太陽光発電の設置世帯は105戸、全体の5・8%、町は「全国一の普及率ではないか」と言います。個人住宅用発電量は426キロワットに及び、公共施設の発電量と合わせて865キロワットを太陽光発電で生み出しています。

 これらが評価され、2009年に「環境モデル都市」の指定を受けました。

 太陽光発電装置を置く、中越舒枝(のぶえ)さん(81)は毎日5ケタの数字を紙に書きます。「太陽光の発電量と使用電力を記録しています。ご飯を炊くのに深夜電力を利用するなど少しですがエコに協力しています」と言います。小中学校では太陽光の発電量が見えるようになっており、それらを利用した環境学習を進めています。「家庭で環境問題が話題になる」と言い、町は、町民の意識の高まりに確かな手ごたえを感じています。

 「環境モデル都市」指定に合わせた行動計画を作成。「生きものにやさしい低炭素なまちづくり」の事業を始めています。

 町環境推進課の矢野準也参事は「2050年までに、温室効果ガスの排出量を90年比で70%を削減し、風力発電所40基を始め新エネルギーによる電気の自給率100%をめざします」と話します。(1)木質ペレットなど森林資源を使ったエネルギーの生産と使用(2)持続可能な森林経営でCO2吸収効果を高める(3)風力・水力・太陽光発電によるCO2削減(4)推進する体制づくり―が柱です。

 太陽光発電以外にも家庭への新エネルギー機器や節電装置へ補助しています。矢野さんは「新エネルギーの普及や環境への取り組みが、町の観光や産業育成につながるようにしたい」と語っています。(高知県・窪田和教)

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再生可能エネルギーの普及を

吉井英勝衆院議員

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 将来にわたって人類の生活基盤を支えるエネルギーには二つの重要な問題があります。一つは、地球温暖化を加速する二酸化炭素はもとより、放射能汚染など環境負荷を増やすエネルギーは避けるべきだということ。

 二つめには、エネルギー生産を電力会社などの「地域独占」「利潤追求」型から、過疎の中山間地から人口稠密(ちゅうみつ)な都市部まで地域の実情に合った「地産地消」型に転換し、装置の生産や設置工事によって地域の中小企業に仕事を作り、農林業などの発展にもつなげることです。

 石炭・石油・天然ガス・核燃料もやがて枯渇します。しかし地球に降り注ぐ太陽の恵みは年間4030ゼータジュール(ゼータは1兆の10億倍、ジュールは熱量などの単位)。埋蔵ウランの全てを原発で燃やしてもわずか約8ゼータジュールですから、太陽起源の再生可能エネルギーの活用こそ将来の可能性を切り開く道です。

 太陽の恵みである太陽熱・光、風力・水力・波力、雪氷の冷熱や海洋温度差、木質ペレット、家畜糞尿(ふんにょう)の発酵メタンガス、バイオエタノールなど、地域によって活用できるエネルギーの形は変わりますが、私たちはさまざまな形でエネルギーを得ることができます。

 高知県梼原町(別掲)、1万頭の乳牛の糞尿を発酵させたメタンガス発電で施設の電力を100%賄っている岩手県葛巻町、間伐材利用のペレットストーブやコーヒーかすペレット製造機を作っている長野県宮田村など、地域経済振興と再生可能エネルギーを結びつけた取り組みが広がっています。

 全ての再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度や、いまは原発利用に限られている電源開発促進税などを活用することで、再生可能エネルギーの爆発的普及をすすめることが重要です。





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