2011年3月4日(金)「しんぶん赤旗」

「古い政治」 新たな装いで

見えてきた「地域新党」の素顔


 いま「民主党VS自民党」とともに、「既成政党VS地域新党」という“偽りの対決軸”がマスメディアを通じて流されています。この「地域新党」は、民主党政権への怒り・失望を強める多くの有権者の「新たな受け皿」をねらって動きをつよめています。「地域新党」の実態をみてみます。


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(写真)「大阪維新の会」の松本としあき府議の個人リーフに貼られたシールをはがすと、「自民党」の文字が…

「大阪維新の会」 所属議員9割が元自民

「大阪都」で企業のインフラ整備

 「これからも維新の会と密にしてやっていく。ガンバロー」。橋下徹大阪府知事が率いる地域政党「大阪維新の会」が2月27日、大東市内で開いたタウンミーティングでの一幕です。最後にこう気勢を上げたのは、なんと自民党市議団の幹事長でした。

 4月のいっせい地方選で府議・大阪市議選の過半数獲得を狙う「維新」は、府議会では現職29人で最大会派となったものの、9割近くが自民党府議からのくら替えです。なかにはトップの自民幹事長経験者までいます。橋下知事の人気にあやかった「選挙目当ての“保身の会”」(2月21日の志位和夫・日本共産党委員長の演説)としか言いようがありません。

 自民党市議団から「維新」の府議候補として挑む大東市区の候補者は「あくまで橋下人気であって、どれだけ僕の票につながるかは分からない」ともらします。その上で、地元自民党の全面応援で選挙戦をたたかっています。

 維新の会が一番に掲げるのが「大阪都構想」です。マニフェストでは、「大阪の広域行政を一元化し…財源を集中投資する」と明記。投資先としては「企業活動を活性化させる空港、港湾、高速道路、鉄道のインフラを整備」、「法人税の減税、規制緩和などを軸とする特区を設定」など大企業支援策のオンパレードです。

 みずから自民・民主・公明各党の「オール与党」体制で強行した、ムダな大型開発路線には少しも反省がありません。府が巨額の税金を投下した、りんくうゲートタワービル(泉佐野市)や大阪市がつくったWTC(現府庁咲洲庁舎・大阪市)の経営破綻の責任は府市の「二重行政」にあると強調し、これまでのムダ遣いの大型開発優先の政治を免罪、「人、もの、金が集まる大阪をもう一度」(松井一郎会幹事長)と訴えます。

 橋下知事を先頭に、住民福祉を大幅に削る「財政構造改革プラン」や、国民健康保険料の大幅値上げにつながる「国保広域化」の実現も狙っています。大企業を優遇すれば、暮らしも良くなる―という破綻済みの主張を繰り返す姿は、旧来の「オール与党」政治と違いがありません。 (松田大地)

「減税日本」 河村市長の言いなり

中部財界求める巨大開発推進

 名古屋では、河村たかし市長が代表を務める地域政党「減税日本」が13日投票の名古屋市議選(定数75)で過半数をめざし、40人余が立候補の動きです。決定した候補者の顔ぶれは塾や書店経営者、自営業者など。

 「10%恒久減税」「ボランティア市民が市の予算の一部を決める地域委員会の創設」「議員報酬の削減」―。河村市長が掲げる三つの政策に賛同することが公認の前提です。市長が自らの意のままになる議会をつくるための手兵(しゅへい)集団といえます。

 河村市長は昨年、「中期戦略ビジョン」を策定しました。この中で「世界の主要都市として、拠点機能・交流機能を高めます」と、巨大開発推進を掲げています。具体的には、国際ハブ港を目指した名古屋港のコンテナターミナル整備、中部国際空港2本目滑走路の建設促進、名古屋高速道路・環状道路の整備―など。

 これらは、以前から中部財界が要求し続けていることです。中部経済連合会がことし2月に発表した「新産業構造ビジョン」の「提言」にも入っています。

 河村市長が掲げる「庶民革命」の旗印である「減税」も、減税による税収減をテコに、自治体が担ってきた市民向けの福祉施策を切り捨てるのが、本当の狙いです。

 河村市長のもとで、国民健康保険料は大幅に値上げされました。モデルケースで見ると、40歳未満単身者の場合、年収300万円で国保料は年額3万5520円増、年収400万円で5万2350円増、500万円で7万790円増となっています。

 加えて、保育所20園削減、市立病院の縮小・民営化も進められています。

 河村市長の「減税」で、一部の大企業は2億円以上、高額所得者は1千万円以上の恩恵を受けました。大企業・大資産家優遇の一方で、福祉は民営化し公的責任を放棄する―。自民党政権以来の古い政治そのものです。 (和田肇)

民主党から連携の動き

透けて見える「選挙互助」

 民主党政権への国民の強い批判を前に、同党内で地域新党との連携を探る動きが盛んです。

 民主党の原口一博前総務相を中心に2月23日、「日本維新連合」の準備会合が開かれ、57人の同党国会議員が出席しました。原口氏は「地域主権改革」を正面に掲げた国会議員の政策集団だと説明するとともに、地方議員や国民を巻き込んだ政治集団、「日本維新の会」も立ち上げると表明しました。

 「維新連合」のコンセプト(概念)や、「『日本維新の会』綱領(案)」には、「地域主権が改革の本丸」「既得権益を打破」などのフレーズが並ぶなど、「小泉改革」と手法も同じ。「地域主権」を口実に、暮らしと福祉、地域経済、地方自治を破壊する本質が透けてみえます。

 「東京維新の会」は2月24日、東京選出の民主党国会議員10人と地方選候補者41人が参加して立ち上げたもの。代表世話人は、菅内閣の一員である中山義活経済産業政務官。「地域主権を、いち早く地方から実現をはかる」(設立趣意書)としています。

 いずれの動きにも共通するのが、「選挙互助」の“本音”です。原口氏は「(解散・総選挙で)大事な同志が、その思いを果たさないまま野に散ってしまう」といい、「国政支持自由」をうたって民主党籍のまま「維新」の看板をあげる構え。中山氏も「民主党という政党の中で改革を進めていく」と党内にとどまる考えです。

 一方、3日には、民主党の佐藤夕子衆院議員(愛知1区)が、離党して「減税日本」に加わる意向を表明。河村たかし・名古屋市長も「これを端緒に、国政の場で勢力を広げていきたい」と国政進出に意欲を示しています。

 河村市長は、名古屋市長再選の2日後、小沢一郎民主党元代表を表敬訪問。小沢氏との関係について「力を合わせるところがあれば大いに合わせていく」と表明しました。2月27日には、都内で記者会見し、東京・区議選候補3人を公認し、7人を推薦すると発表。公認3人中2人は民主党離党組、推薦7人は民主党議員か同党議員秘書が5人、同党からの出馬を予定していた新人2人で、会見で「民主党の公認を受けない人は?」と問われ、7人とも手をあげませんでした。(表参照)

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対決構図は 共産党 VS「オール与党」(民・自・公・「新党」)

 「平成の大合併」や住民向け施策削減の「地方行革」など、自公政権がすすめた「地方分権」が地方自治体の危機、地域社会の崩壊という深刻な問題を引きおこしました。いま民主党政権は「地域主権」の名で、地方切り捨ての政治を丸ごと引きつぎ、加速させています。

 そのもとで、今回のいっせい地方選挙では、住民の暮らしと福祉を守るという自治体本来の仕事を投げ捨て、国いいなりに痛みをおしつけてきた「オール与党」政治を転換するかどうかが問われています。

 民主党、自民党、公明党は、多くの自治体で「オール与党」体制の一員でした。新たな看板を掲げているあれこれの地域新党は、「オール与党」からの転身組か、首長いいなり議会をめざす勢力です。自治体と地域経済破壊の「地域主権」改革をより乱暴に実現しようとする“突撃部隊”でもあります。

 これに対し、日本共産党は「オール与党」政治と対決し、「四つの転換」―暮らし最優先への転換、大企業呼び込み型をやめて地域に根ざした産業振興への転換、TPP(環太平洋連携協定)反対・農林漁業再生への転換、住民の声が届く議会への転換―をめざしています。

 実際に、日本共産党議員(団)は、TPP参加反対の意見書可決、国保料引き下げ、住宅リフォーム助成制度をつくるなど住民と共同を広げ、現実政治を動かし数々の実績を上げてきました。住民と日本共産党とのつながり、信頼の絆は断ち切ることはできません。

 今回のいっせい地方選の真の対立構図は、“住民の立場にたちその願いを実現する先頭にたつ日本共産党VS自民党、公明党、民主党、「新党」などの「オール与党」”という構図です。





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