2010年4月23日(金)「しんぶん赤旗」

日本経済の「根幹」にふさわしく
中小企業を本格的に支援する政治をすすめます

今こそ中小企業政策の転換に向けて幅広い共同を

2010年4月22日 日本共産党


 日本共産党の志位和夫委員長が、22日に発表した政策「日本経済の『根幹』にふさわしく中小企業を本格的に支援する政治をすすめます―今こそ中小企業政策の転換に向けて幅広い共同を」は次のとおりです。


 中小企業・自営業者の状況はきわめて深刻です。内需の冷え込みに加えて、「単価たたき」など大企業による不公正な取引、大型店の身勝手な出店・撤退、銀行の貸し渋り・貸しはがしなどによって、二重三重の苦しみを強いられています。大企業と中小企業の賃金格差は、この10年間で拡大していますが、これは大企業の労働者の賃金が増えたためではなく、中小企業の労働者の賃金が減ったために起きた現象です。いま起きているのは、一時的な景気後退ではなく、日本経済全体の長期にわたる地盤沈下というかつて経験したことのない危機的事態であり、そのもとで日本経済の「根幹」である中小企業が、最も悪影響を受けているのです。

 もしこのまま従来通りの中小企業政策を継続し、その深刻な状況を放置するならば、単に中小企業の問題にとどまらず、日本経済全体がとりかえしのつかない衰退への道を歩むことになります。今こそ、中小企業政策の根本的な転換が必要です。

破たんした従来の中小企業政策

 これまでの経済・産業政策は、「大企業が成長すれば日本経済がよくなり、いずれ中小企業もよくなる」というかけ声で行われてきました。大企業の「国際競争力」の強化と利益確保が最優先され、中小企業はそれを補完するものとしか位置付けられませんでした。国や自治体の予算でも、振興策でも、中小企業は軽視され、本腰を入れて中小企業を応援する政治は行われてこなかったといえます。それどころか、「単価たたき」などの不公正取引や貸し渋り・貸しはがしが野放しにされ、中小企業は大企業の過酷な搾り上げの対象となっています。

 とくにこの10年は、「構造改革」の名のもとに、国をあげて「強いものを育てよ」、「市場で勝ったものが残れば日本はいい経済になる」という風潮が強められました。日本共産党以外のすべての政党が賛成した1999年の中小企業基本法改悪によって、“建前”としては存在していた「格差の是正」が投げ捨てられ、もともと貧弱だった中小企業政策は、ベンチャーなど一部の企業だけを対象とするものに変質させられました。多くの中小企業が支援の外に置かれただけでなく、大企業の横暴はいっそう野放しにされ、懸命にがんばっている中小企業が「不良」債権呼ばわりされるなど、整理・淘汰(とうた)の対象とされています。

中小企業を苦しめる経済システムの転換が必要

 1997年から2007年までの10年間で、日本をのぞくG7諸国は、国内総生産(GDP)も、雇用者報酬も1・2倍から1・7倍に伸ばしていますが、日本だけは、雇用者報酬が5・2%減り、GDPも0・4%しか増えていないなど、「国民が貧しくなった」「成長が止まった」状態です。この状態が10年間続いたところに、アメリカ発の世界経済危機が襲いかかり、日本経済は世界でもとくに深刻な打撃を受けています。

 この背景には、非正規雇用への置き換えや中小企業いじめによって大企業が手にした利益が、企業数の99%、雇用の7割を占める中小企業や、GDPの6割を支える家計に還元されず、日本経済全体の好循環が生み出されないという異常な経済システムの存在があります。このシステムを改革することなしに、日本経済が本当の意味で世界経済危機から抜け出すことはできません。大企業と中小企業の公正な取引を保障するルールをつくることは、単に大企業の横暴から中小企業を「守る」という意味だけでなく、中小企業へのまともな還元を通じて、日本経済全体の健全な成長に道をひらくものです。この転換は、大企業の持続的な発展にとっても不可欠の課題です。

 日本共産党は、以下の五つを柱に、中小企業政策の根本的な転換を求めるとともに、中小企業の活性化という一致点で幅広い共同を呼びかけるものです。

1、大企業と中小企業の公正な取引を保障するルールをつくります

(1)下請け取引を適正化し、「単価たたき」など不公正な取引をやめさせます

 「主導的に検査に入る」しくみをつくるなど下請け検査を改善します……最近5年間で、公正取引委員会が、下請代金法に基づいて親企業による「買いたたき」に対して是正勧告したのはわずか1件、「一方的な発注打ち切り」の是正勧告はゼロです。“申告待ち”“書面調査頼み”という現在の下請け検査のやり方を転換し、抜き打ち検査など主導的に検査に入るシステムをつくります。そのために「下請けGメン」の設置など、検査官の拡充を行います。

 罰金を引き上げ、親会社の挙証責任を強化します……アメリカには、不公正取引による損害額の3倍を賠償請求できる仕組みがあります(クレイトン法4条)。日本でもこうした制度を検討するとともに、下請代金法の罰金額を大幅に引き上げ、不公正取引が「割に合わない」状態をつくります。契約書の作成や単価決定の交渉記録の保存を親企業に義務付けるなど、下請代金法違反ではないことを立証する親企業側の責任を強化します。資本金規模によって適用範囲を限定する現行制度を見直し、発注元企業や元請け企業までさかのぼって不公正取引の調査等ができるようにするなど、下請け2法の改正・強化をすすめます。

 適正な単価を保障するため、「振興基準」を実質化します……下請振興法は、下請け単価は、「下請中小企業の適正な利益」を含み、「労働条件の改善」が可能となるよう、親企業と下請け企業が「協議」して決定しなければならないと定めています(同法第3条「振興基準」)。「振興基準」に照らして取引の実態を総合的に調査し、それをもとに「振興基準」を実質化するとりくみをすすめます。

(2)「優越的地位の濫用」をなくすため、独占禁止法を強化します

 下請け取引以外でも、大規模小売業者と納入業者との取引や、荷主と物流事業者との取引など不公正な取引は数多く存在しています。

 下請代金法は独占禁止法の特別法であり、下請代金法の適用がなくても、「親法」である独占禁止法に戻って不公正な取引を取り締まることが可能です。独占禁止法の厳格な運用や課徴金の引き上げなどの改正・強化によって、中小企業にかかわるすべての取引について、大企業による「優越的地位の濫用」をなくしていきます。

 「買いたたき」などの不公正な取引で、親企業が下請け企業を締め上げるようなやり方が横行しているのは世界でも日本だけです。日本にしか見られない下請け取引の異常をなくすことをめざします。

(3)大型店の身勝手をゆるさないルールをつくり、商店街・小売店を活性化します

 「大店・まちづくりアセス」を義務付けるなど、まちづくりのルールをつくります……大型店の身勝手な出店・撤退は、地域の商店街・小売店を衰退させ、各地で「買い物難民」を生むなど、地域の存亡にかかわる問題を引き起こしています。欧米では、自治体が大型店を規制するルールが各国で具体化されています。大型店の出店・撤退等による生活環境や地域経済への影響評価と調整・規制を行う「大店・まちづくりアセスメント」などのルールをつくります。規制対象となる大型店の床面積を現行の1万平方メートル超から3000平方メートル超にするなど、「まちづくり3法」の抜本改正をすすめます。

 「フランチャイズ適正化法」を制定し、加盟店の経営安定をはかります……フランチャイズ加盟店と本部との公正な取引を保障するため、「値引き販売の禁止」などの優越的地位の濫用をやめさせます。加盟店に本部との交渉権を保障し、契約内容やロイヤルティーの適正化などを盛り込んだ「フランチャイズ適正化法」を制定します。

(4)実体経済に貢献する金融に転換し、中小企業の経営を支えるルールをつくります

 「地域金融活性化法」を制定し、資金繰りを円滑化します……短期のもうけを最優先するアメリカ型の金融自由化路線を見直し、中小企業をはじめ実体経済に貢献する金融へ転換します。メガバンクをはじめとした貸し渋り・貸しはがしをやめさせます。「地域金融活性化法」を制定し、金融機関の地域への貸し出し状況を公表させるなど、資金供給を円滑化するルールをつくります。「自己資本比率」一辺倒による金融機関の評価を改め、中小企業や地域への貢献度などを評価します。短期的な経営指標に基づく債務者区分を改め、「不良」債権、「要注意」債権などの不当な呼び方をやめさせます。

 信用保証などのあり方を見直し、政策金融本来の役割を果たさせます……すべての中小企業が使える「一般保証」制度に導入された「部分保証」を廃止し、全額保証に戻します。「景気対応緊急保証」制度については、代位弁済時に保証協会に財政損失が出ないように全額国庫負担とするなどの改善をすすめます。日本政策金融公庫などによる貸し渋りをやめさせるとともに、業務や組織形態など、政策金融全体のあり方を見直します。

2、本格的な中小企業振興策をすすめます

(1)中小企業予算を1兆円に増額し、経営支援を抜本的に強化します

 中小企業予算を1兆円に増額します……国の中小企業対策費(当初)は、1967年に一般歳出比でピークの0・88%を記録して以来減少傾向にあり、最近は0・4%前後の低水準にとどまっています。中小企業に冷たい予算のあり方を転換し、当面、一般歳出の2%、1兆円程度に増額し、日本経済の「根幹」にふさわしい本格的な施策をすすめます。

 縦割り・細切れの支援を改善し、「中小企業センター」の機能を強化します……中小企業の支援策は、省庁ごとの縦割り、単発・細切れで使い勝手が悪くなっています。申請手続きの煩雑さも大きな負担です。現行の支援策を改善し、経営者が使いやすい制度に改善します。

 区市町村に「中小企業センター」をつくり、国の補助をつよめます。中小企業が必要なときに必要な情報や相談を受けられるように、中小企業の身近な場所に設置し、夜間開放など使いやすい運営をはかります。製品開発や販路開拓などを専門家が支援します。個々の企業では持ちえない最新設備を整備し、検査、測定、試作、技能訓練などが行えるようにします。中小企業からの「相談待ち」ではなく、市の職員や「センター」の相談員などが、直接中小企業や業者を訪問して要望を聞き、相談にのる体制をととのえます。

(2)経済循環の核である中小企業を支援し、雇用の増加、くらしの改善をはかります

 農商工連携のとりくみを支援し、地元産物の利用をすすめます……地元の農林水産物などを活用し、その生産・加工・販売・流通など各段階で地域に仕事と雇用を生み出します。「農・商・工」連携のとりくみへの支援を拡充し、地元農水産物の給食材への活用、地元木材の公共事業などへの活用をすすめます。消費者と結んだ直売所・産直センターなどへの支援をつよめます。

 「空き店舗」対策など、商店街・小売店の振興をすすめます……商店街・小売店を「地域の共有財産」と位置づけ、商店街振興対策予算を拡充します。「空き店舗」の借り上げ、改装費などへの補助を拡充します。お年寄り、障害者、子ども等の生活圏(ライフ・エリア。例えば小学校区など)を単位に、生鮮3品を買える店舗、商店街、学校、医療機関、保育施設や官公署、公共交通などを整備します。朝市、ポイントカード、共同配達など、自ら努力している商店街を支援します。

 地場・伝統産業の産地・集積地への支援をつよめます……地域の雇用や文化の土台を担っている地場産業・伝統産業への支援をつよめます。ネットワークの強みこそ産地の競争力の源であり、それを生かすために、産地・集積地全体を「面」として支援する自治体ごとの振興計画をつくります。新製品・デザイン開発や他産業とのコラボレーションを支援し、常設展示施設の整備、インターネットの活用など販売支援をつよめます。

 環境・福祉など、社会的ニーズにこたえた製品開発・販路開拓を支援します……温暖化対策のカギとなる再生可能エネルギーは、地域固有のエネルギー源(太陽光・熱、地熱、小水力、小規模風力、畜産や林業などのバイオマス・エネルギー)を活用するものです。そのための小型発電機やストーブの製造、木質ペレットの生成、太陽光パネル設置のための住宅改修などにとりくむ中小企業を支援します。また、再生可能エネルギーから得られる電気やガスを販売することによって、地域に新たな収入を生み出します。

 高齢者人口が増加するもとで、一人ひとりにあったオーダーメードの車いすなどの福祉器具・機械への需要が高まっています。北欧諸国の経験に照らしても、オーダーメードの福祉器具・機械の開発・製造とアフターケアには、中小企業の技術力や地域での連携が不可欠です。こうした社会的ニーズにこたえた製品開発・販路開拓を支援します。

(3)生活密着型公共事業への転換をすすめ、「公契約法・条例」で人間らしい労働条件を保障します

 保育所・特養の建設、学校・道路などの維持補修をすすめます……各地で実施されている住宅リフォーム助成制度は、助成額を大幅に超える波及効果を生んでいます。こうした波及効果の高いとりくみへの支援を抜本的に拡充します。

 生活密着型公共事業への転換をすすめ、保育所・特別養護老人ホームの建設、学校・福祉施設の耐震補強、道路・橋梁(きょうりょう)の維持補修、個人宅の耐震補修・リフォームなどを支援し、中小企業の仕事と雇用の増加につなげます。

 官公需を増やし、ダンピング競争をなくします……国と自治体の中小企業向け官公需発注比率を引き上げます。中小企業への発注率を高めるために、分離・分割発注をすすめ、「小規模工事希望者登録制度」の活用、ランク制の厳格実施などをすすめます。ダンピング競争をなくすため、独禁法など現行のルールを厳正に執行するとともに、最低制限価格制度を導入して適正化をはかります。建設業法が定める元請け責任を厳格に守らせ、工事代金の不払いなどをなくします。

 生活できる賃金などを保障する「公契約法・条例」を制定します……千葉県野田市では、今年4月から全国初の「公契約条例」が施行され、市の公共工事等を受注した企業や下請け業者等は、市が定める賃金以上を支払うことが義務付けられています。発注する公的機関と受注者等の間で結ばれる契約(公契約)において、生活できる賃金をはじめ、人間らしく働くことのできる労働条件を保障する「公契約法」「公契約条例」の制定をすすめます。

(4)創業・開業を応援し、中小企業の財産である人材育成を支援します

 積極的な創業・開業を応援し、研究機関等との連携をすすめます……ドイツ、イギリス、イタリア、アメリカ、韓国などでは、自営商工業者が大幅に増えているのに対して、日本では1980年比で3分の2に減っています。新規開業者が利用できる起業支援制度を拡充し、低利で返済猶予期間を備えた開業資金融資制度を創設します。大学、高等専門学校、専修学校、研究機関等との連携を促進します。

 中小企業の財産である人材育成を支援します。経営者・団体間の交流を支援します……中小企業にとって、最大の財産はそこで働く人々です。若者や後継者が、実際に仕事を覚えるまでには時間がかかります。雇用を継続する経営者の努力への支援をつよめます。各分野のすぐれた技能者・職人の認定制度、報償金制度を整備・拡充し、すぐれた技術を継承します。経営者同士が交流できる場、各地の商店街や市場が交流できる場をつくります。同業種間、異業種間の交流を応援します。教育関係者等との連携を強め、中小企業の値打ち・役割が社会の共通認識になる環境をつくります。

3、中小企業を支援する税制と社会保障のしくみをつくります

(1)中小企業を支援する税制・税務行政に転換します

 大企業優先の税制から中小企業・自営業者を支援する税制に転換します……消費税の増税に反対するとともに、消費税の延納措置を認め、免税点を引き上げます。所得税法56条を廃止し、事業主、家族従業者の働き分(自家労賃)を経費と認めます。法人税に累進制を導入し、中小企業の一定範囲内の所得については現行より税率を引き下げます。法人事業税の外形標準課税に反対します。事業用資産については、一定期間の事業承継を条件に、相続税の減免を認めるようにします。

 「納税者憲章」を制定し、納税者の権利をまもります……消費税納税にあたっての仕入れ税額控除否認、機械類への償却資産課税の強化、倒産に追い込む差し押さえの乱発など、国と地方の過酷な徴税・税務調査が横行しています。経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国のうち23カ国で、「納税者憲章」が制定されています。日本でも、「事前通知や調査理由開示の義務付け」、「第三者の立会人及び調査内容の記録や録音」、「生存権的財産の差し押さえ禁止」など、納税者の権利を保障する「納税者憲章」を制定します。

(2)国保料をはじめとした中小企業の負担を軽減し、共済制度等への支援をつよめます

 国保料(税)を軽減し、人権無視の国保行政をあらためます……市町村国保の高すぎる保険料(税)が、業者のくらしを脅かしています。緊急に国の責任で国保料(税)を1人1万円値下げします。国保への国庫負担を復元して、誰もが払える国保料に引き下げます。滞納者への脅迫まがいの督促、情け容赦のない財産調査・差し押さえ、生活困窮者からの機械的な保険証とり上げなど、加入者の人権を無視した国保行政をやめさせます。出産や病気・ケガのときにも安心して休めるように、出産・傷病手当金の制度をつくります。

 国保組合の国庫補助をまもり、負担軽減のとりくみを応援します……不況による生活悪化と健康破壊が深刻化するなか、業者が自主的に運営し、負担軽減や健康づくりにとりくむ、国保組合の役割はますます重要です。ところが、この間、建設国保の入院費無料化などの努力を攻撃する不当なキャンペーンが展開され、政府が国庫補助の削減を検討する異常事態となっています。国保組合への国庫補助をまもり、負担軽減・健康保持のとりくみを応援します。

 社会保険料の猶予・軽減制度を整備し、公的支援が受けられるようにします……不況で経営難におちいった事業所が、社会保険料の事業主負担を払えず、その結果、滞納を理由に雇用調整助成金、信用保証、制度融資などの公的支援が受けられない事態も起こっています。経営困難な事業所の社会保険料を猶予・軽減する制度をつくり、企業の経営と従業員の社会保障を守るとともに、公的支援制度を利用できる環境をつくります。

 小規模共済制度・中小企業退職金共済制度などを改善します。自主共済は、保険業法の対象外とします……社会保障の相次ぐ改悪で将来不安が増しているいま、中小企業の各種共済制度を充実させることが必要です。小規模共済制度や中小企業退職金共済制度などの改善をすすめます。「助け合い」の精神でつくられている「自主共済」は、保険業法の対象外とします。

 中小企業が最低賃金を引き上げられる環境をつくり、引き上げに際しては助成を行います……適正な単価や納入価格の保障、過度な競争の規制、「公契約法」「公契約条例」の実現などによって、中小企業が最低賃金を引き上げられる環境をつくります。最低賃金の引き上げに際しては、雇用保険財政などを活用して、中小企業への助成を行います。

4、「中小企業憲章」と「中小企業振興条例」を制定し、中小企業政策を総合的に見直します

 中小企業は、企業数の99%を占め、製造、建設、小売り、サービスなどあらゆる分野で大きな役割を果たしています。また、日本全体の雇用の7割、地方では8割超を支えるなど、雇用の最大の担い手です。さらに、(1)短期的な利益よりも雇用や社会貢献を重視する、(2)利益を地域に還元し、域内循環の中核を担っている、(3)高いモノづくり技術をもつ経済・文化資源である、(4)地域に根ざして社会的責任を果たし、生き生きとした地域社会をつくりだしているなど、多彩な役割を果たしています。

 中小企業・自営業者は、まさに日本経済の「根幹」というべき重要な存在であり、その素晴らしい値打ちが十分に発揮されてこそ、日本経済全体が豊かに発展できます。今こそ、破たんした従来の中小企業政策を転換するとともに、中小企業政策の基本理念を確立し、それに基づいて中小企業政策全体を見直すことが必要です。

(1)「中小企業憲章」を制定します。中小企業基本法などを見直し、中小企業の声が国政に反映されるしくみをつくります

 EUは、2000年6月に「ヨーロッパ小企業憲章」を制定しました。同「憲章」は、小企業が「ヨーロッパ経済の背骨」であるという基本理念を明確にし、産業政策のみならず、福祉や教育などEU政策の全分野で中小企業を政策の基本にすえています。

 「中小企業憲章」を制定し、中小企業基本法などを見直します……「中小企業憲章」の内容として、大企業に偏重した政策から中小企業を日本経済の根幹と位置づけ、本格的に支援する政策に転換すること、政府が公正な競争環境を確保すること、大企業が雇用、地域経済、環境等にたいする社会的責任を果たすこと、中小企業が地域経済と農林水産業の振興に役割を果たすことなどを明記します。「憲章」の基本理念に沿って、中小企業基本法など関連法制度の改正をすすめます。

 「中小企業政策会議」をつくり、中小企業の声を反映します……「縦割り」ではない横断的な中小企業政策をすすめるために、総理大臣のもとに中小企業・自営業者などの代表が参加する「中小企業政策会議」をつくります。同会議では、「憲章」実施の進ちょく状況等を検討するとともに、規制緩和など従来の政策が中小企業に与えた影響を調査し、施策に反映させます。現在の中小企業庁の職員は約200人であり、公安調査庁約1500人の7分の1、宮内庁約1000人の5分の1にすぎません。中小企業庁の人員を抜本的に増員します。

(2)地方自治体で「中小企業振興条例」を制定し、地域独自の活性化策をすすめます

 中小企業数は約420万社にのぼりますが、一つ一つが多彩な個性をもち、固有の歴史的・文化的特徴を備えています。したがって、国が「中小企業憲章」に基づいて基本政策を実施することとあわせて、地域の実情に応じて中小企業施策を展開することが重要です。

 「中小企業振興条例」を制定し、地域の実情に応じた施策をすすめます……2000年以降、50近い都県・市区町で「中小企業振興条例」(名称はさまざま。以下「振興条例」)が制定されており、中小企業振興に大きな力を発揮しています。各自治体で「中小企業振興条例」を制定し、その地域の中小企業施策の基本理念を定めます。

 大阪府八尾市では、2002年に地元の大工場が撤退しましたが、前年に制定されていた「振興条例」を根拠に、障害者の雇用を確保するなどの成果をかちとっています。「振興条例」には、大企業・大型店・フランチャイズ本部などの責務・役割を明記し、地域で「社会的責任」を果たすことを促します。

 全事業所実態調査を行い、施策に反映します……全国に先駆けて1979年に「振興条例」を制定した東京都墨田区では、制定の前年、係長級職員165人が、区内製造業9314社に自ら足を運んで実態調査(悉皆〈しっかい〉調査)を行いました。この調査で、「ひどい環境で、家族労働に支えられ、それでも税金を払っている。健康破壊や、長時間労働への対策・支援が急務」など、区長・職員の認識が一変しました。それまで中小企業対策は、商工部だけの「縦割り」行政でしたが、悉皆調査後は、福祉や教育を含む横断的事業として区政に位置付けられています。「全事業所実態調査」を行い、自治体が地域の中小企業の実態を把握し、得られた情報を施策に生かします。その際、商工施策だけでなく、福祉やまちづくりなど自治体の幅広い施策に反映させます。

 経営者・業者などで構成する「中小企業振興会議」をつくり、中小企業の声を生かします……「振興条例」が単なる「飾り」ではなく、実際に役立つものになるためには、業者・金融機関・自治体職員などの当事者が「主役」となって実践をすすめることが不可欠です。北海道帯広市では、2007年に「中小企業振興基本条例」を制定した後、条例を具体化するために1年で74回に及ぶ議論を重ねました。その中で、経営者・業者自身が中小企業や地域の値打ちに「気づき」、工場誘致などの「呼び込み型」から「内発型」の地域振興に軸足を移すことが重要だという認識が広がっています。「振興条例」の推進体制として、経営者、金融機関、自治体職員などで構成する「中小企業振興会議」をつくり、中小企業の声を生かします。

5、「日本の宝」―町工場を守るため、固定費補助などの緊急・直接支援をおこないます

 町工場は、金型・成形・切削・研磨・プレス・熱処理・メッキ・鍛造・鋳造など、基盤技術の集積を形成している日本独特の中小企業・自営業者のネットワークであり、創造と技術革新の「苗床」です。

 しかし、いま町工場は、かつてない経営危機に襲われており、「仕事が減り、家賃が払えない」「久しぶりに来た金型部品加工の注文は2割の単価引き下げ。採算割れだ」などの悲鳴があがっています。借り工場の家賃やリース料など固定費の重い負担のため、廃業する町工場も増えています。町工場の技術・熟練の技能は、いったん失われると二度と取り戻すことができません。「日本の宝」である優れた技術・技能が失われることは、大企業や日本経済全体にとっても大きな損失であり、何としても防がなければなりません。

 リース料の支払い猶予を広げます……中小業者は、この間、町工場の固定費の負担軽減を求めて運動を広げてきました。日本共産党も、国会論戦や党首会談などで繰り返し町工場への緊急支援を迫ってきました。鳩山内閣は、当初、消極的な姿勢でしたが、4月16日、中小企業の機械設備のリース代金の支払い猶予に応じるよう、リース会社に要請する通知を出しました。これは、中小業者の声が政治を一歩前に動かしたものです。

 今回の通知は、リース会社に対して、昨年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」の趣旨を踏まえた対応を求めるものです。既に、銀行の融資や住宅ローンについては、同法に基づいて、数多くの支払い猶予が実施されています。こうした例を参考にして、今回の措置が実効性あるものとなるように運動を強めます。

 借り工場の家賃補助など直接支援を実現します……町工場の経営努力は限界を超えており、「日本の宝」にふさわしい緊急・直接の経済支援を必要としています。そのために、支払い猶予にとどまらず、機械設備のリース料や借り工場の家賃に対する直接補助を実現します。

 自治体独自の集積地支援を強めます……東京都大田区では、中小企業への緊急・直接支援策として5500万円の予算を組み、100社を対象に助成を行う「ものづくり経営革新緊急支援事業制度」を実現しています。こうした例を参考にして、各地の自治体で、町工場などの産業集積地支援を強めます。





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