2010年4月16日(金)「しんぶん赤旗」

米兵犯罪・裁判権放棄の密約

外務省文書で初の裏付け

徹底した調査必要


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(写真)安保改定交渉初会合の「会談録」。「一九五三年十月二十八日刑事裁判権に関する分科委員会の合意議事録の中に日本側は或る場合裁判権の行使を譲る趣旨が記録されている」とある(中央)

 米兵らの公務外犯罪で日本側が第1次裁判権を放棄するとした日米密約の存在を裏付ける外務省文書が注目されています。この密約は米政府の解禁文書ですでに明らかになっていましたが、日本側文書で裏付けられたのは初めてだからです。

 文書は、1958年10月4日に岸信介首相、藤山愛一郎外相、マッカーサー駐日米大使らが日米安保条約改定交渉の初会合を開いた際の「会談録」。外務省による核密約などの日米密約調査で明らかになりました。

 「会談録」によると、マッカーサー大使は53年10月28日の日米合同委員会刑事裁判権分科委員会の合意議事録に「日本側は或(あ)る場合裁判権の行使を譲る趣旨が記録されている」と指摘。57年の岸首相訪米の際に、米側はその公表を求めたものの日本側に「適当ならず」として断られた経緯に触れ、改めて「公にして差し支えないなら甚だ好都合である」と公表を求めました。

 その際、大使は「議事録をそのまま公表するということでなく間接的に明らかにすることでも結構」だと述べたとしています。

 岡田克也外相は、日本共産党の井上哲士議員の質問に対し、「(この「会談録」の記述から)そういった文書(第1次裁判権放棄の合意議事録)があったのではないかという議論が出てくるのは当然」と答弁。「優先順位を高くして公開していくことは考えられる」と表明しました。(13日の参院外交防衛委員会)

 この「会談録」は、マッカーサー大使が安保改定交渉の初会合について米国務省に送った58年10月5日付の報告電報(米政府解禁文書)の内容とも一致します。

 電報によると、米側は57年6月、重要事件以外は裁判権放棄の意思を公にするよう日本側に要求。日本側は「秘密合意が公になれば、米軍地位協定に関し厄介で重大な問題を引き起こす」と答えていました。

 マッカーサー大使は会合でこうした事実に触れつつ、「53年の秘密議事録を公にしないで、日本はそうした裁判権を行使しないのが過去の慣行だったし、将来も行使しないということを公に定式化できれば米国にとって非常に役立つ」と強調。これに対し岸首相は「外務省と慎重に研究してからコメントする」と答えましたが、密約は公にされることはありませんでした。

 法務省は井上議員の質問に、2001〜08年の日本での一般刑法犯(自動車による業務上過失致死を除く)の年平均の起訴率が48・6%であるのに対し、米軍関係者は17・5%にすぎないことを明らかにしました。(同前)

 「土台には密約があり、米軍優遇にゆがめられている」(井上議員)のが実態です。徹底した調査が求められています。(榎本好孝)


 裁判権放棄の密約 1953年10月28日の日米合同委員会刑事裁判権分科委員会の非公開議事録。日本側代表の声明として「日本にとって著しく重要と考えられる事件以外については第1次裁判権を行使するつもりがない」と明記しています。国際問題研究者の新原昭治氏が米国立公文書館で発見し、2008年10月に公表していました。





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