2007年1月11日(木)「しんぶん赤旗」

労働法制改悪反対

守ろう働くルール

党闘争本部長 市田書記局長に聞く<中>

ワーキングプア深刻に

法案に道理あるか


使用者いいなり

写真

(写真)労働法制改悪について語る市田忠義書記局長

 ――「労働契約法」という新しい法律をつくるといっていますが、どうみますか。

 市田 解雇や労働条件の変更に関するトラブルを避けるために、労働契約の「ルールを明確化する」というのが表向きの理由です。しかし、実際には、経営者にとってきわめて都合のいい内容になっています。

 労働政策審議会の厚労相への答申は「労働契約の原則」を、「労働者及び使用者の対等の立場における合意にもとづいて締結され、または変更されるべきもの」といっています。

 ところが肝心の労働条件を決めるルールについては、使用者に作成、変更権がある就業規則を内容とするとし、就業規則による変更も認めています。これでは、使用者が一方的にルールを決め、切り下げることができます。しかも、労働契約法に関する国の役割を「労働基準監督官による監督指導を行うものではない」としています。使用者の法違反があっても労基署からの指導、チェックを受けずにすむ仕組みにしようとしています。

 ――国民のたたかいで労基法に盛り込ませた解雇権の乱用を禁止した規定(一八条の二)も、この労働契約法に移すとしています。不法な解雇があっても労基署はものがいえなくなります。

 市田 働くルールを守り確立させるのか、破壊を許すのか、しのぎを削るたたかいであり、国民全体にかけられた攻撃です。しかし、この改悪には道理がなく国民の支持を得られません。

 いま、一生懸命に働いても生活保護水準以下の暮らししかできないワーキングプアが社会問題になっています。NHKは二度にわたって特集番組をくみました。

 なぜこうした事態がおきたのか。偶然ではありません。雇用の分野でいえば、その主要な原因は、会社や使用者にとって都合のいいように雇用のルールを変えてきたことにあります。

規制緩和が原因

 たとえば労働者派遣法の制定です。それまで使用者が労働者を直接雇用することが原則でした。ところが派遣法によって、派遣会社から労働者の提供をうける間接雇用が許され、その後、対象業務の規制が撤廃されました。有期雇用についても、三年間まで短期雇用が自由化されました。

 この結果、直接雇用の正規社員が大幅に減らされました。その一方、派遣、パートという不安定な働き方を余儀なくされた人が千六百万人になっています。その半数が、年収二百万円以下におかれています。

 労働法制の規制緩和を自民・公明を与党にする小泉内閣が財界、大企業の手足となってやってきた。ここにワーキングプアの大きな原因があります。規制緩和は、正社員にたいしても過酷な労働を強いています。裁量労働制の導入は、「サービス残業」という、ただ働きの隠れみのにされました。変形労働時間制の導入と拡大によって、長時間労働を余儀なくされています。しかも、成果主義賃金によって、過労死やメンタルヘルス不全が社会問題になるまで、労働者は過酷な労働にさらされています。

違法を「合法」化

 ――労働法制改悪の影響は、たいへんに大きいものですね。

 市田 今回の労働法制改悪は、違法な「サービス残業」を一挙に免罪し、野放しの長時間労働など労働条件も切り下げやすくしようというものです。そうなれば、日本社会で進行している事態をいっそう深刻にするでしょう。日本経済とものづくりを危うくし、ひいては日本の社会と未来を危うくしかねません。

 このように労働法制改悪は、違法なことをやっている大企業の行為を違法でないようにするための改悪なんです。この改悪案の内容と狙いが分かれば、どういう政治的立場の人であれ、賛成する人はいないと思います。

 労働組合では、全労連と連合が反対の立場を明確にしています。与党のなかにも、参院選挙を前にして「法案強行は得策ではない」と動揺が広がっています。法案に道理がないからです。ここに相手の弱点があります。

 この間の経験でも、「サービス残業」の横行に、職場の労働者と日本共産党などが力をあわせて告発して是正させる大きな成果を勝ち取っています。偽装請負の問題でも、ばらばらにされていた労働者が組合をつくって立ち上がり、政府に是正の通達を出させることができました。たたかいは前進しています。(つづく)


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