2007年1月9日(火)「しんぶん赤旗」
米国の航空管制官 足りない
空の安全 ピンチ
予算不足から採用の凍結も
米国の空の安全を確保する航空管制官が人員不足に直面しています。現在働く約一万五千人の73%が二〇一五年までに順次、定年を迎えることをうけ、米連邦航空局(FAA)は今後十年で一万一千五百人の管制官の採用計画を策定。ところが予算不足から採用凍結を迫られています。現場ではすでに深刻になっている人員不足に拍車をかけるものだと管制官の労働組合が反発しています。(ワシントン=山崎伸治)
「利用者の利便を図りつつ、支出削減にいっそうの手だてをとらねばならない」
FAAで航空管制業務を扱う航空運輸機関(ATO)のジュバ副議長は先月十四日、ATO理事会あてのメモで訴えました。その一環として、同日から管制官とコンピューター技師を除く職員の採用を凍結。さらに「三月三十一日以降の管制官および技師の採用停止を検討する」ことを打ち出しました。
増える飛行数
FAAは二〇〇七会計年度中(〇六年十月―〇七年九月)に千百三十六人の管制官を採用する計画でしたが、中断される恐れがあります。この決定に労組・全米航空管制官組合は「採用は増やすべきで、年度途中で中止すべきではない」(チャーチ広報担当)と反発しています。
航空管制官の数は昨年九月末で一万四千六百十八人、これは三年前と比べ千七十三人もの減。ところが民間航空機の飛行数は増加の一途をたどり、一人の管制官が扱う飛行数は〇三会計年度の八千七百七十回から、〇六会計年度は九千三百四十八回と増えています。
「ゴムが伸びるところまで伸び切っている。切れるかどうかではなく、いつ切れるかの問題だ」―労組の地域幹部の一人が米紙クーリア・ジャーナル(ケンタッキー州ルイビル)に訴えるように、現場はすでに慢性的な人手不足に陥っています。
同紙によると、二年連続で取り扱い便数全米一のアトランタ国際空港(ジョージア州)では、労資が〇三年に合意した五十五人に対し、現在働く管制官は三十四人。サンフランシスコやダラス、デトロイト、ニューヨーク、ワシントンなど大都市の空港では労資合意の69―76%しか配置されていません。
その結果、管制官の中には「週当たりの勤務日数が増え、一日の勤務時間が伸び、休憩もなく長時間働く」(同紙)人たちがいます。飛行機の交通整理という緊張を強いられる仕事に長時間従事することは安全上も問題があります。
ミスが69%増
昨年八月、ケンタッキー州レキシントンの空港で四十九人が死亡した墜落事故では、空港にいた管制官はたった一人。しかも八時間の日勤を終えたあと、九時間後に八時間の夜勤に入り、事故が起きたのは夜勤明けの直前でした。
FAAによると、事故には至らない管制ミスは九八年の八百九十四件から、〇五年は千五百六件と69%も増えており、過密な労働の影響は明らかです。
ブッシュ政権はこうした現場の状況を放置したまま、さらにFAAの将来の職員採用計画まで中断しようとしています。

