2007年1月8日(月)「しんぶん赤旗」
ODA談合疑惑
魅力は高収益
外務省の責任も重大
日本政府が開発途上国に対して行う政府開発援助(ODA)の発注工事をめぐって、談合が常態化している疑惑(本紙四日付既報)で、ODA工事に長年かかわってきた元ゼネコン幹部が、談合の実態を本紙に語りました。証言から、大手ゼネコンなどが、国内の公共工事と同様にODAでも談合による高値受注で、税金を食い物にする実態が浮かび上がってきます。
元ゼネコン幹部が証言
私は、三十年間近くゼネコンで海外での建設工事を担当してきましたが、外務省が実施するODA工事の受注は、ほとんどの場合、談合で決まっています。談合が行われるのは、いわゆるハコものを中心とする「無償資金協力」です。
参加資格が日本企業に限られる「無償資金協力」で長年にわたって業者間で話し合う談合が行われてきました。これに対して、「有償資金協力(円借款)」は、外国企業も参加し、厳しい国際競争にさらされるため、談合はしにくいのです。
ODAの魅力は、国内工事よりも一般に利益率が大きく、公共工事だから取りはぐれもないこと。とくに港湾、農業技術、橋りょうなどは設計の段階で積算単価を操作しやすく大きい利益があげられました。
ほとんどの場合、受注企業は業者間の談合であらかじめ決まっています。入札では談合の疑いをもたれないように、一回で落札せず、二回目か三回目で落札するようにしていました。受注を希望する社は、競合する社に対し、工事が発注される前の基本計画作成の段階から、その工事案件にどれだけかかわっているのか「汗かき度」を主張し、ほとんどはそれが認められます。
落札業者がなかなか決まらず、もめるケースもあります。そのために、これまで、大手ゼネコンを含む五社の営業本部長クラス五人を、「裁定委員」として調整が行われてきました。
業者同士がもめると、裁定委員は三時間近くもそれぞれの主張を聞き、裁定しました。
ところが、ここ四―五年の間で、業者の中に裁定委員を買収するものが出てきました。その額は一件あたり三百万―四百万円。大型工事ではそれ以上という話も聞きました。
裁定委員にわいろを贈った社では、後に現場で架空の下請けをつくったりし、社をあげて裏金をつくることになりました。
しかし、防衛施設庁の官製談合をはじめ官製談合が次々と摘発されるなかで、従来の裁定委員、つまり調停役をなくそうということになりました。仲間内のもめ事を封じるために、プロジェクトの初期の段階で受注会社をあらかじめ決定するシステムに変えようとしています。
ODAの実務を執行している「国際協力機構(JICA)」に勤める友人によれば、政治家から口利きの電話が入ることもあるといいます。
「無償資金協力」の実施機関である外務省は、業者の談合やその違法性の高さを十分認識しているはずです。それにもかかわらず、知らぬ存ぜぬを決め込んでいる責任も重大だといわざるを得ません。
無償資金協力 日本政府が開発途上国にたいして援助する政府開発援助(ODA)では、援助相手国に返済の義務がない「無償資金協力」と、「有償資金協力(円借款)」があります。「無償資金協力」のなかでも「一般プロジェクト無償」は、病院、橋りょう、農業かんがいなどの建設工事が中心です。「無償資金協力」は外務省が実施機関となりますが、実質的な業務は同省所管の独立行政法人「国際協力機構(JICA)」が実施しています。

