2007年1月7日(日)「しんぶん赤旗」

低入札価格問題を考える


 国土交通省が二〇〇五年度と〇六年度上半期に発注した直轄工事(十億円以上で一般競争入札)百七十件のうち約三割の五十三件を、異常に低い入札価格でゼネコンが受注していることが分かりました。これらの工事は国交省の定める低入札価格調査(入札価格が低いので適正に工事が行われるか発注機関が調査する)の対象になっています。

 中には予定価格(労務費や材料費を積算し、上限の価格を定めるもので国土交通省は適正な価格と説明している)の40%、50%台というものもあります。

 これは昨年末、国交省が日本共産党の穀田恵二衆院議員に提出した資料で明らかになったものです。

 落札率が46・63%の北海道開発局発注、ダム関連工事の場合、大成建設、地崎工業など大手ゼネコンが受注しています。各地方整備局(国交省の地方機関)別に見ても、東北地方整備局が九件のうち四件、北陸地方整備局が十件のうち五件、中国地方整備局が十二件のうち六件が低入札価格対象になっています。公共事業費を節約することは必要ですが、懸念されることが二つあります。

手抜き工事のおそれも

 一つは低入札価格によって粗悪な手抜き工事がおこなわれたり品質に問題がある工事になる可能性があることです。その結果、補強工事が追加になるなど「安物買いの銭失い」になりかねません。

 いま一つは下請け業者の下請け代金や下請け労働者の賃金が切り下げられ、赤字受注や倒産・廃業、技術者の労働条件悪化や失業につながることです。

中小の受注機会を奪う

 とりわけ公共事業に依存している多くの地方では、“価格破壊”が続くなかで大手ゼネコンが地方発注工事に参入し、地元中小建設業の受注機会を奪っています。現に〇六年度上半期の建設業倒産件数は前年の同期と比べて一割増の千二百九十三件に達しています。

 また建設常用労働者の賃金は一九九四年の一日一万九千円から〇五年には一万六千円台になり大幅に下落。低下傾向を脱することができないとされています(全国建設労働組合総連合東京地連調べ)。

 こうした事態になった背景には、公共工事が減少傾向にあるなかで、過当競争が業界にまん延しているからです。さらに、昨年一月の課徴金(罰金)引き上げの独禁法改正施行を前に大手ゼネコンが「談合決別」を申し合わせたことや、福島、和歌山、宮崎と相次ぐ官製談合摘発があり、談合システムが崩壊しつつあると指摘するゼネコン関係者もいます。

競争至上で大手支配に

 談合の根絶は当然ですがこうした競争至上主義を放置すると経済力や交渉力に勝る大手企業の市場支配をいっそう推し進めることになります。

 ムダや浪費の公共事業を排除しつつ、良質で安全、国民生活を向上させる公共事業改革が必要といえるでしょう。

 そのために、入札制度の透明・公正性を確保しつつ、中小・地元企業の受注機会を保障することが重要です。「ゼネコンなど地域外の大企業だけを指名して入札参加可能者から除外し、除外されなかった中堅以下の地元企業だけの競争入札をする」(武田晴人・東京大学教授、日経新聞〇六年十二月二十五日付)との案が提案されていますが一考に値します。

 また公共工事の一定割合を中小建設業に発注するなど官公需法を厳格に実施させることや、地元建設業者の地域貢献に対する評価を行うことなどで中小建設業者の受注機会の確保策が求められています。

 (日本共産党国民運動委員会 高瀬康正)


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