2007年1月1日(月)「しんぶん赤旗」
カシミール和平へ印パ首脳大胆提案
共同統治も
13日から包括協議再開
![]() (写真)印パ停戦ライン上で30数年ぶりに再会したいとこ=06年9月25日 ![]() |
六十年近くカシミール地方の領有を争い、三度の戦火を交えたインドとパキスタン。全面和解へ向け今年も包括協議が開催されます。十三日にはインドのムガジー外相がパキスタンを訪問し、外相会談をします。
二〇〇三年十一月、印パ両軍は停戦で合意。〇四年からカシミールだけでなくダム問題、経済協力など八分野での包括協議が始まりました。一定の成果が出るごとに締めくくり、現在は第三ラウンドの協議中です。
第三ラウンドは昨年七月に終了する予定でした。しかし、ムンバイで同月発生した連続列車爆破テロ(死者二百五十人以上)に、パキスタン軍が支援するテロ組織が関与したとインド政府が断定したことで、協議は中断しました。
ムガジー外相の一月のパキスタン訪問時に第三ラウンドを再開し、締めくくり協議をします。二月からは第四ラウンドに移行することで両国はすでに合意しています。
インドのシン首相はパキスタンからの招待を受諾しているもようで、外相会談で訪問日程の最終調整があるとみられます。実現すれば、パキスタンでの首脳会談は〇四年一月以来となります。
パキスタンのムシャラフ大統領は昨年十二月五日、カシミール問題で譲歩したとも受け取れる和平案を提案しました。国連決議に基づく住民投票による帰属決定という従来の主張を取り下げ、印パとカシミール住民の共同統治を打ち出しました(独立は否定)。
シン首相は同月二十日、公式の場でムシャラフ提案を「歓迎」しました。そして、「過去のしがらみを脇に置いて、よりよき未来のために共同すれば、問題は解決する」と訴え、平和・安全保障・友好条約を提案しました。
シン首相の発言はインド国内の反発に配慮したものであり、ムシャラフ提案ほど具体的ではありませんでした。それでも最大野党インド人民党(BJP)は、共同統治の提案を歓迎するとは「主権放棄、最大の屈服だ」と批判。パキスタンでも「パキスタン国民とカシミール住民への政治的な爆弾だ」(アハマド元外務次官)といった非難が出ています。
一方、カシミールの住民交流は着々と実績を積み上げています。〇五年四月からパスポートも査証もいらない「平和のバス」による停戦ラインをまたいだ往来が始まり、包括協議中断時もバスは運行されました。
離散家族の再会、親せき訪問、生まれた村への何十年ぶりの一時帰郷などが実現しています。バス運行に伴い、直接交戦した経験のない両軍青年将校の交流も始まっています。住民からは、「三度戦争に訴えても解決しなかった。話し合うしか方法はない」といった声が出ています。(ニューデリー=豊田栄光 写真も)



