2006年12月31日(日)「しんぶん赤旗」

事件リポート

東京港区 エレベーター事故半年

進まない原因究明

シンドラー社 資料提供拒む

遺族は17階でも階段上る


 今年六月三日、東京都港区の公営マンション「シティハイツ竹芝」(二十三階建て)で高校二年生の市川大輔(ひろすけ)さんがエレベーターを降りる際、ドアが開いたままエレベーターが突然急上昇し、挟まれて死亡した事故は全国に衝撃を与えました。事故から半年がたちました。大輔さんの夢や青春、家族の幸せを奪った事故はなぜ起きたのか、原因究明はどうなっているのでしょうか。(橋本伸)


 高層マンションが増えるなか、エレベーターが凶器となって人間に襲いかかってくるとは、想定外のことです。

不具合多発

 しかし、シティハイツ竹芝では違っていました。五基のエレベーターのうち、事故を起こした5号機と隣の4号機で、不具合が多発していました。二基ともシンドラーエレベータ社製でした。

 大輔さんも事故前に、「エレベーターが怖い」「ドアがすぐ開かない」「段差がある」と不安を訴えていました。

 事故後、港区議会に設置された事故対策特別委員会の資料によれば、二基の不具合は二〇〇三年四月から、〇六年五月までで、三十数件に上ります。不具合の内容は、「閉じ込め」「押した階に停止しない」「段差がある」「異音、振動」などさまざまです。

 「段差」も数センチというものではなく、二十センチ、三十センチです。なかにはこんな例も。

 「地下一階に行こうとしたら止まらず、地下二階までおりて扉が開いたが段差が五十センチくらいあり、おりて隣のエレベーターで一階に行こうとしたら止まらず十二階で止まった」(住民アンケートから)。

 事故後エレベーターに乗れない人や、見ただけでパニックになる人も出ています。

 大輔さんの母、正子さんも事故以来エレベーターに乗れなくなり、先月初めて行った記者会見でも十七階の会見場まで階段を上りました。

 シンドラー社は〇五年度から保守管理業者でなくなりました。このため、同社は、住民説明会などで、「事故原因はシンドラー社が保守点検からはずれた以降の保守点検会社にある」としています。

守る会発足

 しかし、事故後にシンドラー社が検査を行い、六月十九日に安全宣言した4号機は、その後も「閉じ込め」や「段差」がたびたび発生しています。港区エレベーター事件弁護団は十一月十四日、「これ以上放置できない」と原因の解明と再発防止を訴え、住民による「シティハイツ竹芝の安全を守る会」も発足しました。

 問題なのは、シンドラーエレベータ社が警察の捜査を口実にいっさいの資料提供を拒んでいることです。

 これに対し、事故当時の保守管理会社エス・イー・シー(SEC)エレベーターは、エレベーターの急上昇の原因は、電磁石の絶縁不良(性能が半減)によるブレーキの異常摩耗と分析する「見解書」を弁護団に提供。そのなかで、同社の過失責任を否定するとともに、通常のエレベーターはブレーキ部分の異常摩耗があっても停止する保護回路が機能するのに、問題の二基はそうなっていないと指摘しています。

 この事件で警視庁捜査一課と三田署は事故直後に家宅捜索するなど捜査を進めていますが、事故原因についての公式発表や説明はありません。

 港区議会の事故対策特別委員会はシンドラー社の社長やSEC社の専務を参考人として呼ぶなど、調査を進めています。

 このなかで、港区住宅公社にSEC社が求めたにもかかわらず、エレベーターの不具合などの履歴を記した詳細な点検報告書を渡さなかったことが判明しました。

第三者機関で徹底的調査を

 港区エレベーター事件弁護団のコメント 事故原因については、制御系と駆動系の双方について徹底的な科学的調査がなされる必要がある。この調査については、シンドラー社が関与しない、学識経験者や技術者など専門的な知識を有する人で構成される公正・中立な第三者機関によってなされるべきである。


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