2006年12月29日(金)「しんぶん赤旗」
嘉手納の米軍機訓練移転
負担軽減どころか
目的は日米部隊一体化
一面所報のように、今回、概要が明らかになった訓練移転計画は、日本国民の税金で、耐え難い爆音をまきちらす米軍機に全国でわがもの顔で飛び回ることを保障するものです。
制限を撤廃
これまで日米両政府は、移転先となっている各航空自衛隊基地での米軍機と自衛隊機による共同訓練の回数を、年約四回に制限していました。実際には、これらの基地で実施された共同訓練は過去七年間(一九九九―二〇〇五年)を通して各一―三回程度でした。
在日米軍再編の日米合意では、この訓練回数の制限を撤廃しました。防衛施設庁は、〇七年度に訓練の移転を計画している各基地でのそれぞれの訓練回数を明らかにしていませんが、六基地すべてで複数回にわたり実施することを明らかにしました。各基地での共同訓練はこれまでより飛躍的に増大することになります。
政府が〇六年度補正予算案に訓練の移転先周辺の住宅移転補償費約二十七億円を計上したのも、そのためです。
これは、爆音被害により基地周辺に住めなくなった住民の住宅移転の費用を補償したり、土地を買い取るものです。防衛施設庁は「住民の懸念や心配を踏まえて要求した」と説明しています。
建物補償だけでも、三沢基地(青森県)三十七件、小松基地(石川県)二十一件、築城基地(福岡県)五件、新田原基地(宮崎県)二件を行う予定です。
防衛施設庁は、訓練移転によって基地周辺の騒音が実際に悪化することはないとも主張しています。しかし、住宅移転の補償費を計上せざるを得ないところに、爆音や事故の被害が避けられないことが示されています。
F15撤去を
日本政府は、訓練移転の理由について「沖縄の負担軽減」を挙げています。
しかし米側は「訓練を減らすことが目的ではなく、航空自衛隊との共同訓練を拡大して同盟を強化する」(ローレス米国防副次官、昨年十二月)と指摘しています。その狙いが日米航空部隊の一体化=共同作戦能力の強化にあることは明らかです。
しかも、訓練が本土に移転される嘉手納基地で「負担が軽減される」という保証はどこにもありません。
北原巌男防衛施設庁長官は、年間七万回といわれる嘉手納基地での米軍機の離着陸回数がどれだけ減るのか「具体的に示すのは難しい」(五月)と述べています。
嘉手納基地では、周辺自治体の強い抗議にもかかわらず、「ミサイル防衛」用の迎撃ミサイルPAC3とその運用部隊の配備が強行されました(十月)。在日米軍再編の日米合意では、空自との共同訓練のために同基地を共同使用することも決めています。
同基地で実際に進行しているのは、「負担軽減」どころか、基地の強化そのものです。
爆音や事故の被害に苦しめられている嘉手納基地を抱える自治体・住民が求めているのは、訓練移転ではありません。嘉手納町議会が全会一致で可決した決議(五月)は「町民や県民の極限に達した恐怖と不安を解消するには、もはや主力戦闘機F15部隊そのものの撤去しかあり得ない」と強調しています。(田中一郎)