2006年12月26日(火)「しんぶん赤旗」

ズバリわかる 派遣・請負・偽装請負(下)

本来なら職安法違反


請負って何?

 請負とは、本来注文主から独立して仕事の完成または業務の処理を行う民法上の契約のことです。たとえば、ビルの清掃・管理などをイメージすればわかりやすいと思います。

 この場合、注文主が作業に従事している労働者を指揮命令することはできません。ところがいま、請負契約なのに、注文主が請負業者の労働者を指揮命令するケースが横行しています。これが「偽装請負」です。請負なら労働法上の責任一切は請負業者が負い、注文主(ユーザー企業)はなんら責任を負わずにすむためです。

 厚生労働省が九月に出した「偽装請負」取り締まりの通達では、製造業の大企業で活用されていると特定し、防止・解消のための監督指導の強化を求めています。

 職安法施行規則は、適正な請負と違法な労働者供給事業(偽装請負)を区別するため「請負四要件」を定めています。

 四要件とは簡単にいえば、請負業者は注文主から独立してその業務を行う技術や資力をもち、労働者を指揮命令する能力が必要で、単に肉体労働的な作業は認めない。作業に必要な機材は自前または賃貸契約が必要であること。注文主が指揮命令することは許されないという内容です。

 契約名称が請負であっても四つすべてに該当しなければ、労働者供給事業または違法派遣とされます。該当していても、故意に偽装し真の事業目的が労働力の供給にあるときは、当然違法です。

 実際はどうでしょう。多くの請負会社には、請け負った業務を遂行する力はなく、労働力を提供する人材供給会社にすぎないのが実態です。製造現場では、注文企業から指揮命令をうけ、その企業の社員や派遣労働者と一緒になって作業するケースがめだっています。技術者の場合も、同様の労働者と一緒にプロジェクトチームに入り、注文企業の指揮命令をうけている場合がほとんどです。連合の調査でも六割が偽装請負でした。

 これは、本来、職業安定法違反で注文主、請負業者ともに罰せられます。しかし、現状は注文主(ユーザー企業)が処罰対象外となる派遣法違反として扱われ、コラボレートのように請負業者のみが処分されています。実際の使用者である大企業は名前も公表されないというひどさです。

政府・大企業の責任問う

 今日、こうした違法労働が横行する背景に、日本の財界・大企業のいちじるしいモラル低下があります。最近では、大企業の「偽装請負」が労働者の告発で摘発されていることにたいし、日本経団連の御手洗冨士夫会長は反省するどころか「法律が悪い」と居直り世間を驚かせました。

 そして経済財政諮問会議の民間議員として、派遣の直接雇用申し込み義務の撤廃を主張しています。いま「ワーキングプア」(働く貧困層)をうみだす要因となっている、低賃金・不安定な間接雇用を放置・拡大して労働者を使い捨て、企業だけはいっそうもうけるという許しがたい言動です。

 同時に、政府の果たしてきた役割が見逃せません。財界の要求のままに、働く最低ルールである労働法を改悪して労働者派遣法を制定し対象範囲を拡大させ、労働者に不利益な働き方を広げてきました。

 さらに、安倍内閣は、戦後の労働者保護法制を破壊する「労働ビッグバン」を政策課題の柱にすえ、財界の要求にこたえて本格的な労働法制改悪の動きをみせています。(おわり)

グラフ



 請負四要件 請負業者は、(1)作業の完成について事業主として財政上および法律上のすべての責任を負う(2)作業に従事する労働者を指揮監督する(3)作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負う(4)みずから提供する機械、設備、器材もしくはその作業に必要な材料、資材を使用し、または企画もしくは専門的な技術・経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでない―としています。


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