2006年12月25日(月)「しんぶん赤旗」

米国防総省 核戦力増強正当化の報告

「廃絶」論への反論に腐心


 【ワシントン=山崎伸治】米国防総省の諮問機関「国防科学委員会」はこのほど、同委員会の核戦力特別部会の最終報告書を同省に提出し、その一部を公表しました。批判の強い核戦力増強計画を正当化し、改めて売り込もうとするものだとの指摘が出ています。

国民的合意ない

 報告は、米ソ「冷戦」後の米核兵器の役割について「国民的合意」が形成されていないと危機感を表明。同時に「核抑止力を維持するため、信頼性が高く、安全な核兵器を供給、維持すること」が米核兵器事業の「最優先課題」だとして、「信頼できる交代用核弾頭」(RRW)計画の推進など新型核兵器の開発を提言しています。

 報告は、「冷戦」下では「核兵器の必要性と米国および同盟諸国の安全保障で核兵器が果たす役割について現実的な国民的合意があった」が、現在はさまざまな議論があるとして五つを列挙し、反論しています。

 「ゼロにすることを究極的な目標として、核兵器の数は少ない方がよい」という議論に対しては、「核兵器のない世界を望むのは見当違いだ。長年にわたって広く理解されてきた技術を歴史から消すことは不可能だ」と反論。「米国の核兵器開発と維持活動が他国の核兵器開発を引き起こす」という議論に対しては、「大量破壊兵器開発を追求する国は米国をまねしているわけではない」と述べています。

 報告書は▽核戦力の新三本柱((1)攻撃能力(2)防衛システム(3)防衛インフラ)の統合攻撃能力展開での進展の評価▽核兵器事業の構造や組織、管理▽核兵器保有量の維持―の三分野で提言をまとめています。

 このなかで「RRW計画は、核兵器保有を維持し、設計能力を再活性化し、兵器関連施設を転換するための幅広い新たな手段として追求すべきだ」と強調。RRW計画に加え、核関連施設の整理・統合計画である「コンプレックス2030」の実施も求めています。同計画には核兵器の小型化も含まれています。

不満のあらわれ

 報告書について、米科学者連盟核情報プロジェクトのハンス・クリステンセン責任者は、「二〇〇一年の『核態勢見直し』(NPR)を必死で再度売り込んでいるような印象だ」(十六日付トライバレー・ヘラルド紙)と指摘。ブッシュ政権がNPRで掲げたミサイル防衛の推進や新型核兵器の開発、イランなどに対する核攻撃の計画で進展がないことへの不満の表れだと解説しています。

 国防科学委員会核戦力特別部会はローレンス・リバモア国立研究所のジョニー・フォスター元所長とラリー・ウェルチ元米空軍参謀を共同議長に、軍需産業や核兵器研究所、シンクタンク関係者らで構成。新保守主義(ネオコン)系シンクタンク「全米公共政策研究所」のキース・ペイン所長も名を連ねています。


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