2006年12月23日(土)「しんぶん赤旗」

6カ国協議

実質的論議入れず

北朝鮮、「金融制裁」に固執


 二十二日に終了した北朝鮮の核問題をめぐる第五回六カ国協議(第二段階)で、北朝鮮を除く各国は昨年九月の共同声明を履行する「初期段階の措置」の論議と合意を目指しました。一方の北朝鮮は、米国による金融制裁の解除を核問題論議の前提とする態度に固執し、北朝鮮の核放棄に向けた実質的な論議に入れませんでした。

声明履行は確認

 ただ、議長国・中国首席代表の武大偉外務次官が協議終了後に発表した議長声明によると、各国は共同声明の履行という原則を再確認しており、六カ国協議の枠を維持する意思は明確にしたといえます。

 十八日に協議が再開された当初、「初期段階の措置」の内容と、共同声明全体の履行を目指す作業部会の設置が焦点でした。

 米国はまず北朝鮮に、寧辺にある実験用原子炉の活動停止と国際原子力機関(IAEA)による査察の再開を要求したとされます。日韓両国との合意をもとに中国の提案も取り入れた内容です。

 中国は(1)核問題(2)米朝国交正常化(3)日朝国交正常化(4)経済・エネルギー支援(5)北東アジアの安全保障―の五つの作業部会設置を提案したと伝えられます。北朝鮮以外の各国が基本的に賛成を表明しました。

 一方、北朝鮮は「核保有国」として協議に臨むとの姿勢で、「核軍縮会談」を要求。金融制裁を理由に共同声明履行の具体的な措置をめぐる議論に入ることを拒否し続けました。首席代表の金桂冠・外務次官は、米国が制裁を解除しない限り「核抑止力を質量ともに拡大強化し、その性能向上のための物理的実験も進行するだろう」と述べ、十月の第一回に続き二回目の核実験も辞さないと受け取れる姿勢を示しました。

来月に米朝協議

 米朝両国は首席代表による二国間協議のほか、金融問題を扱う担当者による二国間協議も別途に開催。事態打開が期待されましたが、金外務次官は米首席代表のヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)に対し、「金融制裁問題が解決されるまで、核問題の議論をしないよう本国から指示されている」と言い切ったといいます。

 北朝鮮が金融制裁問題と核問題の協議をからめようとしていることについて、ヒル次官補は二十一日の協議後、記者団に対し「国際金融システムは、大量破壊兵器に関与している国が簡単に利用できないようになっている。(北朝鮮が)核のビジネスにかかわる限り、さらに困難な金融問題が生じる」と発言。北朝鮮の態度は自らの立場をさらに苦しくするとの見方を示しました。

 金融制裁問題の米朝協議について米側担当者は二十日、来月ニューヨークで再開される見通しだと述べ、協議継続の意思を明らかにしました。(面川誠)


議長声明

 【北京=菊池敏也】二十二日に閉幕した北京での六カ国協議の議長声明は次の通り。

 第五回六カ国協議の第二段階協議は、十二月十八日から二十二日、北京で開かれた。

 各国は、六カ国協議の情勢の発展と変化を振り返り、対話を通じて平和的に朝鮮半島の非核化を実現することを再確認し、二〇〇五年九月十九日の共同声明の中で示された公約を再確認し、「行動対行動」の原則にもとづき、早急に一致協調した段取りをとり、段階的に共同声明を履行することで合意した。

 各国は共同声明を履行する措置と最初の段階で各国がとる行動について、有益な討議を進め、一連の初歩的構想を提起した。各国はまた、集中的な二国間協議を通じて、相互の関心の解決について率直で立ち入った意見交換をした。

 各国は、本国に報告するために休会し、できるだけ早期に再開することで合意した。


6カ国協議の経過

 ◇第一回協議(二〇〇三年八月二十七日―二十九日)

 議長国・中国の王毅外務次官(当時)が「議長総括」として▽対話を通じた朝鮮半島核問題の平和的解決と恒久平和の構築▽情勢を激化させる措置をとらない▽信頼を醸成し、共通認識を拡大する―など六項目の合意事項を発表。

 ◇第二回(〇四年二月二十五日―二十八日)

 中国が議長声明を発表、「実質的な討論を開始したことは有益かつ積極的、真剣だったとの認識で一致」と評価。「意見の違いが存在している」が、「各国は、平和共存を願い、協調による一致という手順で核問題、その他の懸案を解決」することで合意。第三回協議準備のための作業部会設置でも合意。

 ◇第三回(〇四年六月二十三日―二十六日)

 中国が議長声明を発表。「(朝鮮半島)非核化の目標に向け、可能な限り速やかに第一段階の措置を取る」ことで一致。核廃棄に向けては「言葉対言葉」「行動対行動」という段階をとると強調。各国間の意見の「相違を縮小するためさらに議論が必要」だとして、第四回協議を九月末までに開催することで合意。

 ◇第四回(〇五年七月二十六日―八月七日、九月十三日―十九日)

 一年一カ月後に開催。共同声明の文案をめぐり調整が難航したが、再開された協議で共同声明を採択。声明は、六カ国協議の目標が「平和的方法による朝鮮半島の検証可能な非核化」にあることを再確認。北朝鮮は、すべての核兵器および既存の核計画を放棄し、核不拡散条約、国際原子力機関(IAEA)の保障措置に早期に復帰することを約束。米国は北朝鮮に対し「攻撃または侵略の意図がないことを確認」し、米朝、日朝は国交正常化に向けた措置をとることを約束した。北朝鮮へのエネルギー、貿易などの経済協力の推進、適当な時期に北朝鮮への軽水炉提供を議論することも盛り込む。

 ◇第五回(〇五年十一月九日―十一日、〇六年十二月十八―二十二日)

 第一段階は中国が議長声明を発表し、「共同声明の全面的履行、早期に検証可能な形で朝鮮半島非核化の目標を実現」するとした議長声明を発表して休会。北朝鮮の核実験などを経て、一年一カ月後の今月、第二段階再開。「できるだけ早期に次回協議を開く」ことを確認した議長声明を発表して再度休会。


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