2006年12月23日(土)「しんぶん赤旗」
主張
日本の国連核決議
なぜ実効的廃絶措置求めない
日本政府が中心となって国連に提出した「核兵器の全面廃絶に向けた新たな決意」決議が、十二月初めの国連総会で賛成一六七、反対四(米国、インド、パキスタン、北朝鮮)、棄権七(中国、エジプトなど)で採択されました。
決議は「全面廃絶」をうたってはいるものの、全面廃絶を義務付ける条約の作成やそのための交渉開始など緊急焦眉(しょうび)の問題にふみこんでいません。核兵器を一日も早くなくすことは唯一の被爆国日本の中心的課題です。政府の姿勢が問われます。
米核戦略追随が障害
政府が提出した決議の特徴は、核兵器保有国に核兵器廃絶を正面から要求するものとなっていないことです。核兵器不拡散条約(NPT)の義務履行や核兵器の削減などにとどまっています。廃絶の願いにこたえる内容とはいえません。
二〇〇〇年五月のNPT再検討会議の最終文書で核兵器保有国は、「核兵器廃絶の明確な約束」に合意しています。昨年のNPT再検討会議では新たな合意ができなかったため、前の約束が生きています。これが国際的到達点であり、核兵器廃絶に向けたとりくみの新たな出発点です。世界の廃絶要求の広がりに押されて核兵器保有国が認めた約束を履行させることが重要です。多くの国々も約束履行をせまっています。
ところが政府の決議は、前文で「最終文書を想起し」というだけで、実行措置を示す本文ではいっさいふれていません。とるべき「実際的な措置」として「明確な約束」を明記していた〇四年までの決議からも大きく後退しています。エジプトは二〇〇〇年合意を「十分反映していない」と批判して決議に棄権しました。政府は圧倒的多数が賛成したと誇っていますが、当たり障りのない内容では被爆国政府としての役割を果たすことにはなりません。
さらに問題なのは、核兵器廃絶への実効的措置を求める決議に賛成せず、棄権したことです。核兵器保有国に核兵器廃絶の「約束」履行をせまった非同盟諸国提出の決議にも、核兵器全面禁止条約早期締結の交渉開始を求めたマレーシアなどの決議にも棄権しました。核兵器の「全面廃絶」といいながら、核兵器廃絶を義務付ける決議に棄権するというのは筋の通らない話です。全面禁止協定締結交渉の開始に「時期尚早」などとケチをつけるのは、結局、悪名高かった「究極的廃絶」論と何ら変わるところはありません。
政府が核兵器廃絶に向けた実効措置を避けるのは、アメリカの核戦略を最優先にしているからです。米統合参謀本部は核兵器作戦計画をつくり、今年三月の「大量破壊兵器とたたかう国家軍事戦略」報告でも、「攻撃作戦は核兵器をふくむ」と明記しています。日本政府はそのアメリカの核兵器を、米軍再編中間報告(昨年十月)で日本防衛のための「不可欠」の「核抑止力」といっています。アメリカの核兵器が必要だという立場では核兵器廃絶要求を前面に押し出すことはできません。
政府は異常な対米追随をやめ、核兵器廃絶を正面にすえるべきです。
核兵器廃絶でこそ
政府は決議でも、北朝鮮の核実験を非難しています。しかし、アメリカの核兵器を温存するという立場では説得力をもちえません。核兵器は全面的に禁止するという立場で主張し行動してこそ、北朝鮮にも核兵器保有計画の放棄を求めていくうえでのイニシアチブ(主導権)を発揮することができます。