2006年12月22日(金)「しんぶん赤旗」

教員待遇に格差導入

教育再生会議が中間報告原案


 安倍晋三首相の直属機関である教育再生会議(野依良治座長)は二十一日、改悪教育基本法成立後初の全体会合を開きました。事務局が小中学校の授業時間の増加、いじめ対策、不適格教員の排除などを柱とする「中間報告」の原案を提示しました。

 安倍晋三首相はあいさつで「教育基本法が五十九年ぶりに改正され、新しい『教育再生』の理念と原則、礎ができた。新しい基本法を踏まえて議論してほしい」と指摘。来年一月の「中間報告」のとりまとめについて「具体的な課題をいれてほしい。それをもとに法改正や予算の拡充などでしっかり対応したい」と述べました。

 原案は、教員免許更新制の導入や「頑張っている教員」への給与・昇進・手当などの優遇を明記。いじめ対策として、反社会的行動をとる子どもに対し、「サポートを伴う出席停止」を講じることなどを示しています。

 学校を予算で差別する教育バウチャー(利用券)制度や学校選択制、学校の序列化につながる学校評価制などは「今後の検討課題」としています。

 同日の会合では、有識者委員から「われわれの提案が削られていくのはおかしい」などといった不満が続出。「中間報告」の内容については、引き続き調整することになりました。


解説

道理ない改悪法具体化

 教育再生会議が来年一月にまとめる「中間報告」は、政府・与党が来年から本格的に進めようとしている改悪教育基本法の具体化作業の「ひな型」の一つです。今回示された原案は、改悪基本法の具体化の道理のなさを示しています。

 現在の教育の荒廃を「再生」させるなら、その原因がどこにあるのか、幅広い視野で討論しなければなりません。ところが原案は教育荒廃の原因として、「あらゆる層の人々が当事者としての自覚を欠いている」と指摘するだけです。

 子どもと学校を競争に追いたてる政府の文教政策、人間を「勝ち組」「負け組」にふるいわける弱者いじめの政治がもたらす社会の殺伐とした風潮など、政府の責任は全く視野からはずされています。

 具体的中身は問題のある子どもや教員を排除し、教育現場に強制と格差を押し付ける強権的なものが目立ちます。いじめ対策では「規律保持」を前面に押し出すだけで、ていねいな分析の上にたった対策とは程遠いものです。

 教員についても、現場から「教員を政府の言いなりにさせるもの」と批判が出ている教員免許更新制の導入を掲げました。教員の能力と実績を評価し、給与などに差をつけることも示しています。

 「四十年ぶりの全国学力調査」を掲げ、この間各地で教育を荒廃させてきた「一斉学力テスト」を全国規模で行う必要性を改めて強調していることは重大です。

 また、今後の検討課題として、教育の格差と競争を広げる学校評価制や教育バウチャー制度などを提示しました。

 教育再生会議は今年十月に、各界から十七人の有識者を集め、安倍内閣の「目玉」として官邸に設置されました。しかしその議事は政府の他の審議会と異なり、報道関係者にも完全非公開です。原案は「社会総がかりで教育再生を」とうたっていますが、それを自らの会議の運営で否定しています。

 安倍首相の掲げる「教育再生」が中身でも運営でも国民と教育現場から乖離(かいり)したものであることが浮き彫りになっています。

(小林拓也)


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