2006年12月20日(水)「しんぶん赤旗」

再開された6カ国協議


 十八日に再開した六カ国協議の基調演説で、日米中ロ韓の五カ国は昨年九月の共同声明履行の第一歩として、北朝鮮の核廃棄へ向けた具体的な「初期段階の措置」を求める姿勢で基本的に足並みをそろえました。一方の北朝鮮は、米国の金融制裁と国連安保理の制裁をすべて解除するよう求める態度に固執し、制裁解除がない限り共同声明履行の議論そのものを拒否すると主張しました。


5カ国、共同声明履行迫る

 六カ国協議は昨年十一月、共同声明の履行の論議に入った第五回協議を最後に中断していました。中国は今回の協議を第五回協議の再開だと強調。武大偉外務次官は基調演説で「共同声明履行に盛られた具体的措置の全面実施と、第一段階で各国が取るべき行動を重点的に討議し、確定する」と言明しました。

 初日の協議後に韓国の千英宇外交通商省朝鮮半島平和交渉本部長は、「対話と交渉を通じた非核化の実現」「共同声明履行の意思の再確認」「実質的な成果への期待」が六カ国に共通していたと述べました。その一方、北朝鮮と他の五カ国の間の違いも改めて明らかになりました。

 日米韓三カ国は事前の調整に基づき、(1)核関連施設の活動凍結(2)核実験場の閉鎖(3)すべての核関連施設と計画の申告(4)国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れ(5)共同声明の履行―を北朝鮮に求めることで一致。これらの要求は十一月末の北京での米朝協議で北朝鮮に伝えられています。

 今回、北朝鮮がこれらの要求にどのような回答を持ってくるかが注目されていました。しかし首席代表の金桂冠外務次官の基調演説は、「われわれは核を持っていることに満足している」と核保有国であることを誇示。“核廃棄への具体的行動の前に制裁解除”という前提条件を付けたのに加え、米国の対北朝鮮敵視政策の撤廃、軽水炉提供、エネルギー支援などの要求を並べ立てました。

一致点土台に各国独自案

 日米韓の要求と北朝鮮の主張に開きがあることから、中国は再開前に双方に独自案を提示しました。「初期段階の措置」を核関連施設の凍結とIAEAの査察受け入れ程度に絞るものです。北京からの報道によると、中国は米国に「北朝鮮は今の段階で核実験場閉鎖を絶対に受け入れない」と伝えたといいます。

 こうした経緯を受け、日米韓の基調演説は「初期段階の措置」を細かく並べることは避けました。

 また北朝鮮を除く五カ国は、共同声明履行のために複数の作業部会を設けるという中国の提案に賛成することを表明しました。提案内容は公表されていませんが、共同声明の内容に沿ってテーマ別に設置するといわれています。米朝が合意した金融制裁問題を扱う作業部会は、六カ国協議自体の作業部会とは別個に米朝間の協議体と位置付けられます。

 さらに五カ国は、北朝鮮が自称する「核保有国」の地位を認めないことでも一致しています。共同声明履行ではなく「核軍縮交渉」を求めた北朝鮮の主張に同調する国もなく、あくまでも六カ国が合意した共同声明の履行を北朝鮮に求めています。

 こうした基本的な一致点の上で各国は独自の案も示しました。米国は「作業部会を設置して、今後数週間、または数カ月間の行動計画を練り上げる」ことを提案しました。

 ロシアは六カ国協議の「大きな目標」の一つとして「北朝鮮経済発展のための正常な条件整備」を挙げました。

 韓国は「『行動対行動』を厳格に適用せず、すべての履行計画をいくつかの段階的で大きなパッケージに分けてつくるべきだ」と主張しました。これは十一月の中韓首脳会談で「共同声明のうち、可能な部分から早期に履行する」ことで一致したことを反映しています。(面川誠)


第四回協議が終わった二〇〇五年九月十九日に採択された初の共同声明 ▽平和的な方法で朝鮮半島の検証可能な非核化を実現▽米国は北朝鮮に対して核兵器、通常兵器による攻撃、侵略を行う意図を持たない▽北朝鮮と米国は国交を正常化するための措置をとる▽北朝鮮と日本は日朝平壌宣言に従って国交正常化のための措置をとる▽朝鮮半島の恒久的平和体制について協議する▽北東アジア地域での安全保障協力を促進▽履行の原則は「約束対約束、行動対行動」―などで合意。


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