2006年12月19日(火)「しんぶん赤旗」
フィリピン 改憲反対5万人集会
【ニューデリー=豊田栄光】マニラからの報道によると、フィリピンのアロヨ政権が進める憲法改定反対を訴える「祈りの集会」が十七日、マニラ市内で開かれました。主催はカトリック司教会議で、反アロヨ派のアキノ元大統領や信者ら五万人が参加しました。
今回の改憲案の主な内容は、大統領制を廃止し一院制の議員内閣制にするというもので、事実上、上院が下院に吸収されます。下院は一期五年となり、多選制限(現在下院議員は一期三年三期まで)も撤廃されます。
改憲勢力の中心は下院与党で、七日に改憲を発議する「憲法会議」(国会議員で構成)招集決議を可決しました。下院単独で決議し、上院議員に参加を要求したため、上院議員は与党も含めて猛反発。「二院制の趣旨に反する」と財界やカトリック教会、左派団体から批判がわき起こりました。
下院与党は方針を転換し、「憲法評議会」(議員だけでなく広く国民から評議員を選出する)方式による改憲発議を提起。その設置決議を上院が来年一月中に可決することを求めています。来年五月の選挙と抱き合わせで、「憲法評議会」選挙も実施しようとしています。
現在の国会議員数は上院二十三人、下院二百三十二人です。上院議員は全国区で選出され、数も少なく、多くは次期大統領、副大統領をめざします。アロヨ現、エストラダ前大統領ともに上院議員出身です。
下院議員は小選挙区中心で「地方ボス」の側面を強くもっています。大統領制と上院が廃止され議員内閣制となれば、最高権力者(首相)への道が大きく広がります。
現憲法では、大統領は一期六年、再選禁止と定められていますが、首相なら制限はありません。一院制議会では多選制限が撤廃されるため、政治腐敗がより深刻になるとの意見が根強く存在しています。
解説
「改憲反対」69%
現在のフィリピン憲法は、立法、行政、司法の三権分立とあわせ、大統領、上下両院議員、地方自治体(州、市町村)の首長と議員をいずれも国民が直接選挙で選ぶと規定しています。
同時に憲法は、「国策としての戦争の放棄」「領土内での非核兵器政策の採用と追求」を明記。外国軍事基地の設置については上院での批准をはかる、経済主権を確立する―など自主的な立場での国づくりの基本政策をうたっています。
今回の憲法改定への動きは、アロヨ大統領が昨年七月、下院での年次演説で議院内閣制や連邦制への移行を呼びかけて以後、表面化しました。
しかし憲法改定をめぐっては、憲法の骨格、国の基本政策をどうするかについての具体的な内容の提起や論議は、十分なされていません。最近の世論調査では、「改憲反対」が69%となっています。(宮崎清明)

