2006年12月18日(月)「しんぶん赤旗」

都内でシンポ

談合・不正支出告発への“住民訴訟つぶし”相次ぐ


 官製談合や不正支出などで、自治体に損害を与えた首長への住民訴訟を、地方議会がつぶす――。十七日、東京都内で開かれた「市民のための住民訴訟を考えるシンポジウム」では、こうした住民の直接参政権を保障する住民訴訟制度を「骨抜き」にする事例が相次いでいることが報告されました。

 問題になっているのは、住民訴訟の係争中に、議会が首長に対する損害賠償請求権の放棄を決議した場合です。議案を首長自らが提出しているケースも。請求権放棄を受けての裁判では、違法行為の認定に踏み込まずに「請求権が消滅した」とする判決が続いています。

 シンポジウムでは、住民訴訟の原告や弁護士が、住民訴訟つぶしの実態を告発しました。

 山梨県旧玉穂町(現中央市)の住民訴訟について発言した小笠原忠彦弁護士は「官製談合を主導して企業から上納金を吸い上げた元町長への請求権を放棄するとは驚いた。こういう問題がやみに葬られていいのか」と呼びかけました。

 第三セクターに派遣した町職員への給与支出問題を争った新潟県旧安塚町(現上越市)の住民訴訟の原告・吉野誠一元町議は「請求権放棄は被告への利益供与に近い行為だ。その結果、違法行為が是正されずに放置された」と怒りを込めて語りました。同訴訟では一審で住民側が勝訴。しかし、町長自らが提出した債権放棄の議案を町議会が議決。住民側敗訴が確定しています。

 阿部泰隆中央大学総合政策学部教授が講演し、「議会や首長は住民の代理人。住民の利益に反して債権を放棄する権利はない」と、裁判所の判断をも含めて批判。「法律上、議会の議決は罪に問えないが、債権放棄を執行する首長は『善良な管理者の注意義務』に違反すると考えられる」と指摘しました。


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