2006年12月15日(金)「しんぶん赤旗」

教育基本法改悪法案採決強行

徹底審議の声を黙殺

「時代にあった日本人」を政府がつくってよいのか


 教育基本法を政府の改悪法案のように変えてしまったら日本の教育はどうなるのか。不安に思う国民が徹底審議を求めているのにもかかわらず、参院教育基本法特別委員会で十四日、自民、公明両党は採決を強行しました。世論無視、多数による暴挙です。

 同日の特別委で伊吹文明文部科学相は自民党議員から改定実現の感想を問われて「この理念法の上に、時代にあった日本人をつくっていくという作業の重さにおののいている」と述べました。

 時代にあった人間を政府がつくっていく―戦前のような国家による国家のための人づくりを否定し、教育の自主性・自律性の原則をうちたてたのが現行教育基本法ではなかったのか。文科相の発言は改悪法案がそれを根底からひっくり返すことを思わず漏らした一言です。

 「われらは、さきに、日本国憲法を確定し…この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」。前文がこう書くように、教育基本法は日本国憲法と一体のものです。改悪法案はこれを根本から覆す憲法違反であることは多くの識者・教育関係者が一致して指摘してきたことです。

 改悪法案は「国を愛する態度」をはじめ二十もの徳目を「教育の目標」に掲げています。伊吹文科相は「(関連の)法律、予算、学習指導要領などすべてを直す」と述べました。文科省は教育基本法改悪を突破口にして、学校教育法など三十三本の関連法規の改定を狙っています。

 東京大学の苅谷剛彦教授は十三日の記者会見で「そうしたことで何が起きるのか国民は何も知らされていない」と最後まで徹底審議を求めました。とくに今後作られる教育振興基本計画について「中教審では数値目標で評価するというが、抽象的な教育の目標が評価の対象になったらどうなるのか」と危ぐを表明しています。

 国会最終盤、慎重審議を求めるネット署名は三日半で一万八千人が賛同しました。東京大学教育学部では同趣旨のアピールに、一日で教員の三分の二の賛同が集まりました。

 採決強行を前にした十三日夜、国会前の歩道は廃案を求める四千五百人でびっしりと埋め尽くされ、「こんなの初めてみた」と二十年間つとめた国会議員秘書も驚きました。

 数を頼んだ強行採決によっても、政府・与党の道理のなさと、かつてなく広がった「教育基本法を守れ」の運動は消し去ることはできません。

 世論の懸念が集中した「愛国心」について、十四日の質疑で安倍晋三首相は「内心に立ち入って評価することはない」と繰り返しました。政府も憲法の保障する思想・信条の自由を正面から踏みにじることはできません。(北村隆志)


教基法改悪  国会ドキュメント

8:00 国会議員会館前。「教育基本法改悪を許さない各界連絡会」が座り込みを開始。

8:40 参院教育基本法特別委員会の理事会。与党は、9時から安倍晋三首相が出席して開かれる各党質疑後に教育基本法改悪法案を採決したいと提案。野党側は「審議は尽くされていない」と反対。中曽根弘文特別委委員長は「機は熟したと判断せざるをえない。討論・採決する」と一方的に宣言。

9:00 特別委が開会。自民党が質疑を始める。安倍首相は改悪法案について「慎重に深い議論をしてきた。ぜひ成立を」。

11:26 特別委で日本共産党の井上哲士参院議員が質問。「新たな『やらせ』が発覚している。法案提出の資格が問われている。撤回するのが責任の取り方だ」と批判。

11:54 「防衛省」法案が参院外交防衛委員会で自民、公明、民主の賛成多数で可決。

12:00 特別委で国民新党議員の質問が終わる。「散会だ、散会」の声が飛び交うなか、中曽根委員長は「暫時休憩」を宣言。

12:09 特別委の理事懇談会、自民、民主両党の特別委筆頭理事で協議。このなかで自民党は午後1時から特別委を開き、締めくくり質疑を行うことを提案。

12:40 日本共産党の小池晃政策委員長が国会議員会館前の座り込み集会であいさつ。「(採決となる)締めくくり質疑は絶対に受け入れられない。数の力での採決をストップさせよう」と訴え。

12:45 特別委の理事懇談会が終了。協議がまとまらず、特別委は休憩のまま。民主党の特別委筆頭理事の佐藤泰介参院議員は「特別委が休憩になった理由がわからん。あそこで(採決を)はかるべきだったよ」と採決を容認するコメントを記者団に。中曽根委員長は「特別委再開のめどは全然立っていないよ」。

13:00 理事懇談会が開かれたものの、話し合いがまとまらず。自民、民主両党の筆頭理事が再び協議。協議後、自民党の保坂三蔵参院議員は「シナリオは細かいほど小さいことで狂ってしまうものだ」とぼやき。

13:45 再び理事懇談会。午後4時45分から特別委を再開し、野党のみの質疑を行うことで合意。

16:00 野党国対委員長会談で対応を協議。

16:45 特別委が再開。野党側はタウンミーティングの「やらせ質問」問題などを追及。「世論はタウンミーティングだけでない」などと開き直る伊吹文明文部科学相に日本共産党の井上議員は「まったく反省していない。教育を語る資格がないことが明らかになった」「法案は撤回しかない」と批判。

18:05 与党が質疑を打ち切り、採決を求める動議を提出。野党議員が強く抗議の声をあげるなか、「採決」を強行。怒りの声が渦巻くなか、中曽根委員長が「散会」を宣言。


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