2006年12月15日(金)「しんぶん赤旗」

主張

教育基本法改悪案

強行採決に大義はない


 「子どもたちの未来にかかわることだから、慎重に審議をつくしてほしい」。この国民の圧倒的多数の声を無視して、自民党、公明党が、教育基本法改悪案の採決を、参院特別委員会で強行しました。

 衆院での与党単独採決に続く暴挙であり、参院本会議への上程は許されません。

唯一の理由も根拠なし

 教育基本法改悪案が国会に提出されて七カ月半がたちましたが、政府・与党はいまだに、なぜ教育基本法を改定するのか、まともな説明を行っていません。

 政府が、「国民の理解を得ている」といって、唯一持ち出した「教育改革」タウンミーティングは、「やらせ」「さくら」の世論偽装でした。改悪にひとかけらの根拠もないことを示しました。

 教育基本法改悪案をめぐる国民の疑問は、国家権力や教育行政が、教育への介入を強めるのではないかということです。これについても、政府はまともな説明をすることはできませんでした。

 いくら、「国家管理を強めるものではない」といっても、タウンミーティング問題で明らかになっているように、教育基本法改悪をめぐって、政府による世論誘導を行っているのです。これが国家管理を強めるものでなくて、何なのか。当時官房長官として、タウンミーティングを統括する立場にあった安倍首相の責任が重大であることはいうまでもありません。首相が、責任をとるというなら、改定の大義もなく、まともな答弁もできないような、教育基本法改悪案は廃案にすべきです。採決を強行するなど、到底容認できません。

 教育基本法改悪案は、憲法に反する二つの問題点があります。子どもの内心の自由を踏みにじって「愛国心」を強制すること、国家権力による教育内容への無制限の介入に道を開き、教育の自由と自主性を侵害することです。

 最大の焦点となったのは、教育基本法の命ともいうべき第一〇条の改悪です。「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」というこの条文は、戦前の戦争教育の反省のうえにたってつくられたものです。この条文は、国家権力の不当な介入から教育の自由と自主性をまもる国民のたたかいのよりどころとなってきました。

 「教育内容にたいする国家的介入はできるだけ抑制的でなければならない」―。この大原則が、日本国憲法の要請から生まれたものだということは、一九七六年の最高裁判決でも明確に述べていることです。それなら、「国家的介入を抑制」するよりどころになっている第一〇条を削除することは、憲法に反するのは明確です。この批判に、政府はいまにいたるまで何の説明もできないままです。

廃案求める世論さらに

 教育基本法改悪は、いま国民が心を痛めているいじめなど、教育が直面する問題を解決するものではありません。それどころか、政府が、教育基本法改悪で真っ先にやろうとしていることは、全国一斉学力テストや学校選択制など、競争教育に歯止めをなくしてしまうことです。これでは、過度の競争教育によるストレスで、いじめ問題をさらに深刻にしてしまいます。

 教育基本法改悪案に反対する世論が大きく広がっています。追い詰められているのは政府・与党です。憲法に反する教育基本法改悪案は廃案しかありません。


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