2006年12月4日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

地域・子育ての支え

安心して産めます

署名が議会動かす


 全国でお産のできる場が消えつつあります。東京・千代田区の東京逓信病院の産科も閉鎖が計画され存続を求める声が起きるなど、都市・地方を問わず深刻になっていますが、運動で存続を勝ち取ったところも出ています。市立熊本産院と大阪・八尾市立病院産科の例を紹介します。


ユニセフ認定産院守る

熊本市

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 十一月二十五日、熊本産院を会場に、一回目の「地域・家族で支える楽しい育児塾」が開かれました。間もなくパパやママになる人たちが、お産や母乳・育児についての話などを熱心に聞いていました。

 地域の人たちも、骨密度測定や育児・更年期の話を聞こうと参加していました。生きいきした姿を見るとき、赤字理由による「廃止」にストップをかけて本当に良かったと思いました。

座り込みして

 二〇〇五年十一月。超党派女性議員と市民有志は、十二月議会への「市立熊本産院廃止条例の提案をやめてほしい」と市役所前で、二十四時間の座り込みをしていました。残念ながら市長は、熊本産院の廃止条例を提案しました。全国でも数少ないWHO・ユニセフ認定の母乳育児に取り組んでいる「赤ちゃんにやさしい病院」です。

 同年十二月市議会は、七万人を超えた存続署名の力もあり、「継続審査」となりました。

 私たちは三月議会に向け、「日本母乳の会」の橋本武夫先生の講演会、中心商店街での母乳・育児相談、お母さんと赤ちゃんのパレード、毎日曜日の署名活動など必死にがんばりました。

 三月議会では、元自民党市議で産婦人科医院の院長先生が、陳情の趣旨説明をし、「全国で産婦人科の医師、助産師が不足しており社会問題となっている。市立産院は、大事な役割を果たしている」と存続を訴えました。

10万人を超す

 存続署名は十万人を超え議会を動かしました。「市立産院廃止条例案」を大幅修正し、「熊本市民病院付属熊本産院」として存続させることができたのです。ベッド数は三十八床から二十八床とし、二年後をめどに「赤字額三千万円以内を達成しなければ廃止する」との付帯決議が付けられましたが、市民共同での大きな前進でした。

 熊本産院は、現在、二十四時間・三百六十五日、母乳・育児電話相談や母乳外来、助産・看護学生の実習など大事な役割を果たしています。

 日本共産党市議団は熊本産院を「子育て支援の拠点施設」として生かし、「日本一子育てしやすいまち」を目指し、市民の皆さんと力をあわせてさらに頑張る決意です。私が初当選したとき小学一年生だった長女が、熊本産院で来春出産予定です。(益田牧子・熊本市議)


住民の声で産科復活

大阪・八尾市

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 大阪府八尾市立病院は老朽化のため、二〇〇四年五月に新築開院しました。ところが、急性期病院(緊急、重症患者対象の医療)という位置づけで、慢性疾患や軽度の患者は他院に回され、紹介状がないと数時間待ち。土曜診療も廃止です。柴谷光謹八尾市長の公約であった「二十四時間三百六十五日小児救急体制」も医師不足のため週三日になり、「市民のための病院」とは言いがたい状況で、さまざまな苦情が殺到しました。

“市長も汗かけ”

 〇五年春、市は、突然「医師不足のため産科を中止します」と発表しました。医師が開業したり、大学病院に引き揚げたりの事情でした。

 市民の怒り、不安の声が噴き出ました。議会審議で日本共産党は、給料などの処遇改善、医師確保に全力を挙げるよう提案しました。他会派も「病院長だけでなく、市長自身もっと汗をかけ」と主張。市長も動かざるを得ない状況に追い込まれました。

 しかし、〇五年十月から休診になりました。

 八尾市は人口二十七万四千余人の都市。この間二つの民間病院の産科が休診、開業医も医師の高齢化などで次々と産科を閉鎖。市内で出産できる開業医は三カ所だけです。

 同年の十二月議会に「保育・学童保育の充実をめざす共同運動八尾実行委員会」から子育て支援を求める請願署名三万四千八百五十五人分が提出されました。その中には「安心して出産し、健やかに育児ができるよう、市立病院の産婦人科と小児救急医療体制を充実してください」という市民の強い願いが込められた項目がありました。

 請願審議に入る前に市立病院長が、〇六年四月から産科を再開できる見通しになったことを報告しました。委員会では公明党だけが反対、本会議では全会派一致でこの項目が採択され、四月から市立病院の産科を復活させることができました。 奈良県立医科大学から医師が派遣されています。

月45人に制限

 しかし、問題は山積しています。常勤医師四人と非常勤一人体制のもと、正常分娩(ぶんべん)の場合は月四十五人まで、と出産人数が制限され、妊娠三カ月で病院に行くと「予約がいっぱい」と断られます。双子や逆子などリスクが高い人は受け入れるが、通常分娩の場合は「狭き門」です。

 市民の命と健康のとりで、八尾市立病院をいつでも誰でも安心してかかれる病院にするために、今後も市民とともにがんばります。(谷沢千賀子・八尾市議)


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