2006年11月27日(月)「しんぶん赤旗」
「防衛省」法案 衆院委参考人陳述
憲法に対する下克上
中韓からの懸念予想
賛成の立場からも疑問
政府・与党は「防衛省」法案について、今国会での早期成立を急いでいます。民主党が、条件付き賛成で意見集約をはかる方針を固めたことを受け、政府・与党は今週中にも衆院通過をはかる構えとも報じられています。しかし、「防衛省」法案を審議している二十四日の衆院安全保障委員会では、参考人から、憲法を踏みにじる法案の重大な問題点などが次々に指摘され、徹底審議の必要性が浮き彫りになりました。
法案は、自衛隊の海外派兵を本来任務(主要任務)に位置付けるのが最大の狙いです。防衛庁の省移行も、自衛隊を海外派兵型軍隊に転換する体制づくりの一環です。
政府の立場覆す
衆院安全保障委員会で、参考人として意見陳述をした専門家は、東洋英和女学院大学の増田弘教授、首都大学東京法科大学院教授の富井幸雄教授、軍事ジャーナリストの前田哲男氏の三人。法案賛成の立場の参考人も含め、本来任務化に対する危ぐの声があがったのが特徴でした。
政府は、戦力不保持をうたった憲法九条と自衛隊との関係について「自衛のための必要最小限度の実力の保持は許される」と言い逃れてきました。“日本防衛”を超える海外派兵を本来任務にすることは、これまでの政府の立場をも根底からくつがえすものです。
前田氏は、自衛隊の前身・警察予備隊以来の政府の説明を振り返りながら、「海外活動を本来任務化すれば、憲法九条との整合性は破られる。自衛隊法の憲法に対する下克上が、より決定的になる」と批判しました。
また、日米同盟を理由に海外派兵の拡大をはかろうとする動きに対し、政府自身も「(安保条約によって)自衛隊が日本の領域外に出て行動することは一切許せない」(岸信介首相=当時、一九六〇年三月)と答弁していたことを紹介。「日米同盟を根拠にして国際貢献をしなければならないといういい方は通らない」と述べました。
「防衛省に反対の立場ではない」という富井氏も、本来任務化に対し「懸念」を表明しました。
法案は、本来任務とする海外活動として、テロ特措法、イラク特措法など、これまで政府が強行してきた海外派兵法のすべてを盛り込んでいます。富井氏は「いったいどこまで認められるのか。次にまた何か(新法が)出てきて、それもくっつけるのかという危ぐがある」と指摘しました。
徹底した審議を
法案の危険性とともに指摘されたのは、法案が“国民や国際社会から支持されているのか”という疑問でした。
富井氏は「防衛省にすべきだという強い議論が(国民の中で)果たして起きているのか疑問だ」と指摘。「(法案は)適切だ」とする増田氏も「近隣諸国、とりわけ中国や韓国が懸念を表明することは十分予想できる」と述べました。
これだけの問題点、懸念が指摘された以上、徹底審議を行うことは、国会の最低限の義務です。与党単独による教育基本法改悪法案の衆院強行採決で不正常になった際、与党は一方的に「防衛省」法案の委員会審議に入りましたが、与野党そろっての質疑は、二十四日が最初です。今週中の衆院通過など論外です。
日本共産党の赤嶺政賢議員は同委員会で、発足以来初めて自衛隊の任務を変更するもので、憲法にかかわる重大法案だと指摘し、「法案の重みにふさわしく、国民的にも十分な議論をへた上で徹底審議を」と求めました。

