2006年11月25日(土)「しんぶん赤旗」

ソニー 嘱託社員にも

60歳以降の再雇用実現

労組仙台支部が要求


 六十歳以降の雇用継続が四月から改正高年齢者雇用安定法ですべての企業に義務付けられましたが、大手電機メーカーのソニーで、有期契約の嘱託社員についても、正社員と同じく六十歳以降の再雇用が労働組合のたたかいで実現し注目されています。端緒を開いたのは、ソニー労組仙台支部(連合加盟)のたたかいでした。(中村隆典)


 「うれしかったです。職場もこれまでと同じで最高です」

 六十歳になったばかりの女性のTさんはそういって笑顔を見せました。

 今月、会社と雇用契約を結び、十二月一日から再雇用が決まりました。

給料ダウンでも

 賃金は、七時間勤務で十一万三千円(現在は十七万六千二百五十円)と低額ですが、Tさんは「給料はダウンしても働きたいと思っていました。この年齢になると、働きたくても働く所はないですから」といいます。

 Tさんは、仙台市に隣接する多賀城市にある仙台テクノロジーセンター(従業員約千二百人)に三十四年勤めています。同センターは磁気テープや光ディスクなどの研究・開発部門。一九七二年にパートタイマーとして採用され、二〇〇一年から嘱託社員として一日八時間近く働いています。

 正社員には再雇用制度が導入されましたが、嘱託社員は対象外でした。しかし、六十歳が近づく嘱託社員のなかで「正社員と同じように六十歳以降も働きたい」という願いが広がっていました。

 ソニー労組仙台支部は嘱託社員の要求を実現するため、昨年六月から会社側にたいして、「希望者全員の雇用延長」という高年齢者雇用安定法の趣旨にもとづいて、嘱託社員も雇用延長するよう求めてきました。

 会社側は当初、「社会的な情勢をふまえて検討する」としか答えませんでした。支部は「嘱託社員も反復継続して契約が更新され、事実上、六十歳定年の扱いをされてきた。再雇用制度の対象になるはずだ」として粘り強く交渉を続けた結果、嘱託社員を対象にした再雇用制度が新設されることになりました。

 しかし、問題がありました。「自己の能力と専門性を十分発揮しうる担当業務が存在すること」という「マッチング(合致)条項」と呼ばれる選別要件です。

品川や厚木でも

 労働者が希望しても合う仕事がなければ採用しないというものです。正社員にも同じ条項は導入されており、正社員で希望者の四分の一程度しか再雇用されていません。

 支部は「『希望者全員の雇用延長』という法の趣旨に反する。削除すべき」と求めましたが、会社側は応じようとしません。支部は、全労連などが参加する春闘共闘会議の支援も得ながら、ソニー労組本部や各支部と連携して、会社側に粘り強く改善を求めました。

 宮城労働局も「マッチング条項は法の趣旨に反する」という明確な見解を表明。「能力と専門性が発揮できるか否かは会社の判断」「業務の有無は会社の問題」「ソニーの理屈はおかしい」と指摘しました。

 同支部は労働局の見解を示して改めて追及し、会社を追い込んでいきました。結局、マッチング条項は、ソニー労組とは別の組合との合意を理由に残されましたが、会社側は「希望業務とマッチングがはかられた」として、ついにTさんの再雇用を認めました。

 これがきっかけとなって、各地の事業所でも嘱託社員の再雇用制度が広がりました。ソニー労組仙台支部の松田隆明委員長はこう話します。

 「組合が要求したたかったから、嘱託社員を対象にした再雇用制度が新設され、実際に再雇用が実現できたと思います。同じ制度は第一組合のある品川、厚木支部にも導入されました。この成果を全社的にひろげていきたいと思います」


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