2006年11月21日(火)「しんぶん赤旗」

主張

日米首脳会談

軍事強化は平和に寄与しない


 アジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席した安倍首相は、ブッシュ米大統領と初の会談をおこないました。

 APECでは、参加首脳の二国間会談の多くが北朝鮮の核問題を対話で解決することで一致したのが特徴です。国際問題を軍事ではなく、平和的・外交的に解決する流れが世界政治の大勢になっていることのあらわれです。こうしたときに、日米同盟を世界で「活用」(安倍首相)し、軍事的役割を拡大するのは情勢に対応したものとはいえません。

「米軍防衛」論

 ブッシュ大統領はイラク政策の見直しに追い込まれています。うそをついてイラク戦争をはじめた責任が問われています。そのブッシュ大統領に、「引き続きイラク復興を支援したい」と表明し、バグダッドなど激しい戦闘が続いている地域への航空自衛隊による米軍兵員・軍事物資の空輸継続を約束したのは、窮地に立っているブッシュ大統領に手をさしのべたことにほかなりません。

 米軍撤退を求めブッシュ与党を敗北させたアメリカ国民の願いも、閣僚からも撤退の声があがるイギリスの動向も見ないのは誤りです。イラクでは民間人がいまも多数殺りくされ、内戦寸前です。安倍首相は、戦争では何も解決できなかった過去に学び、イラク戦争「正当化」をやめ、空自を撤退させるべきです。

 なにより紛争の平和的・外交的解決は世界政治の大原則です。ブッシュ政権の一国覇権主義と先制攻撃戦略に反対する声は、世界中で大きくなっています。

 安倍首相がそうした情勢を顧みもせず、アメリカの軍事戦略につきしたがって、弾道ミサイル防衛での日米協力の加速や米軍再編の実施を確認したことは、世界の流れに逆らう重大問題です。

 安倍首相は首脳会談を念頭に、米紙ワシントン・ポストのインタビュー(十四日)で、弾道ミサイル防衛、米軍直接防衛の持論を強調しました。これをブッシュ政権への忠誠心の証しにする考えが透けて見えます。

 安倍首相は、アメリカ本土を標的にした弾道ミサイルを自衛隊が撃ち落とすことが憲法違反かどうかまで「研究」するといいますが、「他国に向けて飛行する弾道ミサイルを自衛隊が撃墜する行為」は「わが国の武力行使」であって「憲法上疑義がある」というのが確定見解です(二〇〇五年二月二十四日衆院安全保障委員会阪田内閣法制局長官)。

 海外で共同している米軍を自衛隊が防衛する「研究」も、政府が「周辺事態法」をはじめとする戦争法の審議の中で憲法違反であるとくりかえしたことです。政府は戦争法審議のたびに、憲法の制約が厳しいことから、攻撃のおそれがあるところには「行かない」、攻撃があったら「避難」すると説明してきました。「米軍が攻撃されたら」という前提そのものが間違っています。

 日本が「日本防衛」の建前をくずして、日米軍事同盟を侵略的に強化するのは、世界、とりわけアジア諸国の警戒心を強めさせ、平和・友好関係をだいなしにするだけです。

平和憲法でこそ

 世界の流れになっている紛争の平和的・外交的解決は、戦争を放棄した憲法九条の核心です。九条を守り抜くことはまさに世界とアジアの人々が日本に望んでいることです。

 憲法九条を守り抜き、九条を生かした平和外交を積極的にすすめることこそ、日本が世界平和に貢献する最大の道です。


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