2006年11月11日(土)「しんぶん赤旗」

繰り返される核武装議論

被爆国外相の発言か

容認する安倍首相の責任


 日本共産党、民主党、社民党、国民新党の野党四党は、安倍晋三首相に対し、核武装の議論を促す発言を繰り返す麻生太郎外相の罷免を要求しました(九日)。麻生外相の発言は、被爆国の外相としても、国際社会が一致して北朝鮮に核兵器と核開発の放棄を求めている最中だという点でも、許されないものです。麻生外相の発言とともに、それを容認してきた安倍首相の責任が問われています。


国際的な懸念

 麻生外相は「検討した上で持たないというのも一つの選択肢だ」(十月十七日の衆院安全保障委員会)と答弁して以来、この種の発言を繰り返しています。

 麻生外相は「非核三原則の堅持」は口にします。しかし、「堅持」するのであれば、「議論」の余地はありません。それをあえて「議論する」というのは、核武装の選択肢を議論するということにほかなりません。

 実際、麻生外相は「議論」すべき中身について、「どうして(核兵器を)持たないのか、どうして持つべきと思っているか」(同二十四日)の議論を主張しています。だから、「堅持する」はずの非核三原則も、「二十年後のことは、だれも予想できない」(同二十七日)と述べ、将来の核武装も否定しません。

 六十一年前の原爆投下によって、広島と長崎は焦土となりました。原爆は今も、被爆者の体をむしばみ、原爆症を発症させています。米国による太平洋ビキニ環礁での水爆実験で被爆した久保山愛吉さんは「原水爆の被害者は私を最後にしてほしい」という言葉を残し、亡くなりました。

 核兵器の残虐さを身をもって体験した国の外相としてなすべきことは、地球的規模での核兵器廃絶に向けた努力です。麻生外相の発言が、被爆者と国民の悲願に真っ向から挑戦するものであることは明白です。

 しかも麻生外相のいう核武装の議論は「北朝鮮が核を持つなどという前提で非核三原則が作られたわけではない」(同二十四日)などと述べているように、北朝鮮の核実験への対応として主張しているものです。

 この問題では、国際社会が一致して平和的・外交的解決に努力を傾け、中国、米国、北朝鮮は六カ国協議の再開で合意しました(同三十一日)。核武装の議論は、こうした国際社会の努力にも逆行するものです。

 国際社会は「(核武装という)政治的議論が続くことは望ましくない」(次期国連事務総長の潘基文・韓国外交通商相)と、不安と懸念を表明しています。

批判には反論

 見過ごせないのは、麻生外相の発言を一貫して擁護し続けている安倍首相の責任です。

 安倍首相は当初から、外相の発言について「議員個人が話すことは言論の自由だ」(同十九日)と黙認していました。

 八日の党首討論では「核をめぐる議論について、抑止はどうあるべきかという議論をすることはあり得る」と主張。「安全保障の議論として、そういうこと(核武装)に触れたからといって大問題かのごとくいうのは、おかしい」と述べ、外相発言への批判に反論する姿勢まで示しました。

 首相がこうした姿勢だからこそ、麻生外相は、どんなに内外から批判を受けても、核武装を容認する発言を繰り返すことができるのです。

 安倍首相が「非核三原則は今後とも維持していく」(八日)と主張するのであれば、外相を罷免する以外にありません。(田中一郎)


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