2006年11月11日(土)「しんぶん赤旗」
主張
沖縄新基地計画
県民だましの説明を許さない
沖縄県知事選が十九日の投票に向け激しくたたかわれています。最大の焦点は日米両政府が合意した新基地建設計画を許すかどうかです。
政府は、新基地を使う米軍機はいっさい住宅上空を飛ばないと説明してきました。しかし、米軍はV字形滑走路二本の両端の計四カ所にそれぞれ進入灯を設置するよう求めています。これは政府が名護市など地元自治体とかわした住宅上空の飛行を避けるとした合意を根底からくつがえす重大問題です。政府・防衛庁が地元に受け入れをせまった根拠が崩れた以上、新基地計画は撤回するしかありません。
住宅上空飛行の約束
政府は、キャンプ・シュワブ(名護市)の新基地について、二本の滑走路をV字形にすることで、着陸には西側海上から陸側の滑走路に進入し、離陸には海側の滑走路から東側海上方向に飛ぶのでヘリも固定翼機も住宅上空を飛ぶことはいっさいないと地元に説明してきました。しかしこの説明自体、米軍機の飛行運用や普天間基地(宜野湾市)の米軍機の飛行実態からありえないとの批判が相次いだように、ごまかしでしかなかったことはあきらかです。
今回、米軍が滑走路二本の双方向に進入灯を設置するよう求めたことは、住宅上空であろうとどの方向であろうと自由勝手に米軍機が飛行することを意味します。政府の説明がごまかしであったことを米軍自身が証明してみせたようなものです。
住宅上空飛行は、爆音被害や墜落の危険と隣り合わせの生活を強いられる自治体と住民にとって死活的問題です。県民を愚ろうする政府の態度を許すわけにはいきません。
重大なことは、政府が米軍再編の日米合意で住宅上空での飛行を認めておきながら、地元には上空飛行がないかのように説明してきたことです。日米合意に住宅上空を飛ばないという文言がないことについて、防衛庁首脳は「緊急時の逆方向からの着陸を否定しているわけではない」とのべて緊急時の住宅上空飛行を当然視しています。防衛庁内ではそれが「軍事上の常識」といいます。こんな重大なことを地元に説明しなかったのは、最初から県民をだまして新基地をのませる意図があったからだといわざるをえません。
久間防衛庁長官は日本共産党の赤嶺政賢議員にたいして、「緊急時の場合」は「どういう方向からでも着陸することはありえる」と答弁しました(七日の衆院安全保障委員会)。住宅上空飛行の日米約束を「緊急時」という形で追認したものです。
しかし、「緊急時」は無限定につながります。例えば、沖縄の下地島空港は一九七一年に政府と琉球政府(当時)が民間航空にしか使わないと合意している民間空港です。しかし合意文書に「緊急時はその限りでない」とあることから、日本政府は、二〇〇一年以来「緊急時」を口実にはじめた米軍機使用を容認しています。「緊急時」飛行が日常的飛行になるのは目に見えています。
政府は、新基地建設に向けたいっさいの作業を中止し日米合意を撤回すべきです。
未来がかかる知事選
沖縄県民は、沖縄戦でたいへんな犠牲をこうむりました。それだけに命を大切にし、平和を求めるのが沖縄県民の共通の思いです。「戦争につながるいっさいのものを拒否する」と言い切る糸数けいこ候補こそ沖縄の心を代表する政治家です。糸数勝利で、新基地計画撤回、米軍基地の縮小・撤去を実現しましょう。