2006年11月9日(木)「しんぶん赤旗」

「住宅地上空飛ばない」

政府説明 崩壊

沖縄新基地


 沖縄県知事選(十九日投票)で焦点になっているV字形滑走路を持つ米海兵隊の新基地建設計画―。日本共産党の赤嶺政賢議員の追及に対し、久間章生防衛庁長官は、滑走路の双方向使用を容認する考えを示しました(七日の衆院安全保障委員会)。政府が“米軍機は住宅地上空は飛ばない”として、地元に受け入れを迫った最大の根拠が、根底から崩れ去ったことを示すものです。(田中一郎)


4月「進入は陸側滑走路のみ」

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今回 「どの方向からも着陸」

 新基地の建設が計画されている地元・名護市の島袋吉和市長は、建設計画は容認しつつも、地元住民の強い批判を受け、辺野古や安部など周辺住宅地の上空の飛行回避を求めていました。

 これに対し政府が地元自治体に受け入れを迫る案として持ち出したのが、V字形滑走路でした。

 四月に名護市などと合意した計画では、陸側と海側に計二本の滑走路を設置。米軍機の基本的な運用は、海側を離陸専用、陸側を着陸専用とするものでした。この場合、着陸に使う進入ルートは、陸側滑走路を使う一本だけになります(地図)。

 額賀福志郎防衛庁長官(当時)は、この計画によって飛行コースは海側に限定されるとして、「地域住民の安全を確保することができた」と強調していました。

 ところが久間章生防衛庁長官は「緊急時の場合は、どういう方向からでも着陸することはあり得る」と答弁。これでは、従来の政府説明からいっても、住宅地上空の飛行は避けられません。「住民の安全は確保できた」とする政府の根拠が覆ったのです。

地図

約束守らぬ米軍

 久間長官は、滑走路の双方向使用について「緊急時」に限定されるかのように強調しています。

 しかし「沖縄における米軍の『緊急時』は、『どんな場合にでも』ということになる」(赤嶺氏)のが実態です。

 たとえば、普天間基地と嘉手納基地について日米両政府は、午後十時から午前六時までの飛行を原則禁止し、学校や病院を含む人口密集地上空の飛行回避を定めた合意(一九九六年)を交わしています。

 しかし実態は、「米軍の運用上の所要」を理由に合意は日常的に破られています。嘉手納基地では、F15戦闘機が未明離陸を繰り返し、一〇〇デシベル(電車通過時の線路わきに相当)を超える爆音をまき散らしています。普天間基地では、米軍ヘリが住宅地上空での訓練を連日展開。沖縄国際大学への墜落事故までおこしました(二〇〇四年)。

 地元紙も「緊急時の着陸だけと条件を付けたにしても、拡大解釈されて周辺住民の上空を飛行することは…これまでの米軍の基地運用が示している」(琉球新報七日付社説)と批判しています。

基地強化は明白

 このほか新基地には、固定翼機の緊急着陸などの際に用いる「アレスティング・ギア」(着陸拘束装置)の設置を検討しているとも報じられています。別の地元紙は「C130輸送機やMV22オスプレイ(垂直離着陸機)の配備に備えることを意味する」(沖縄タイムス七日付社説)と指摘。「米軍が…固定翼機のタッチアンドゴーなども自由な『新航空基地』像を描いているのがこれだけでもよく分かる」と述べています。

 政府が沖縄に迫る新基地計画が、「沖縄全体からみても相当なメリット」(額賀長官=当時)どころか、いっそうの基地強化と危険を押しつけるものでしかないことは、もはや明白です。


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