2006年11月7日(火)「しんぶん赤旗」

主張

文科省「やらせ」発言

こんな国家統制は許せない


 自民党、公明党は、競争と統制を強める教育基本法改悪案の今国会成立をはかるため、今週末にも衆院通過をねらっています。

 改悪案の審議は十月三十日に再開されたばかりです。教育をめぐって、いじめ問題や高校の必修科目の未履修問題など、解決が求められる問題が山積しています。徹底した審議こそ必要であり、政府・与党がねらう教育基本法改悪法案の成立を許すわけにはいきません。

「規範意識」欠けるのは

 しかも、政府が青森県でおこなった「教育改革タウンミーティング」(九月二日)で、賛成の立場からの「やらせ」発言をさせていたことが、日本共産党の質問で明らかになりました。

 「教育基本法案の是非など国民の忌憚(きたん)のないご質問やご意見を期待したい」(内閣府)という目的のタウンミーティングで発言者を組織し、政府にとって都合のいい質問原稿を事前に渡して、発言させていたのです。権力を使って、国民の声をゆがめる卑劣な行為です。子どもと教育をめぐって真剣な議論が行われるべき場所で、子どもに顔向けできないような不正を、政府が働いたのです。

 安倍首相や伊吹文部科学相は、いじめや高校の必修科目未履修の問題の責任を、個々の教師や学校、教育委員会の“規範意識”にすりかえる答弁に終始しています。しかし、今回の「やらせ」は、「規範意識」が最も欠けているのは政府自身であることを浮き彫りにしています。

 前国会では、教育基本法改悪案が、憲法に反する二つの問題点をもつ違憲立法だということが明らかになりました。

 一つは、国家が「愛国心」を強制することは、憲法一九条の保障する思想・良心・内心の自由を侵害することです。もう一つは、教育内容への国家の無制限の介入に道を開き、憲法が保障する教育の自由と自主性を破壊することです。

 「やらせ」発言は、こうした教育への国家統制や、国家の無制限の介入が大問題となり、教育基本法改悪案が継続審議となっている間に起こりました。政府・与党の世論の誘導は、不正を働いたというにとどまらず、国家統制に等しいものです。

 もともと、教育基本法改悪案の何よりの問題は、これまでの、子ども一人ひとりの「人格の完成」をめざす教育から、「国策に従う人間」をつくる教育へと、教育の根本目的を百八十度転換させようとしているところにあります。

 今回の「やらせ」は、まさに、「国策に従う」ことを、国民に強要する行為です。

 六日の衆院教育基本法特別委員会では、日本共産党の石井郁子議員の質問で、政府が、九月二十日には「教育基本法改正に伴い改正をすべき主な法律」と「教育振興基本計画」について具体的な検討を開始していたことが明らかになりました。教育基本法改悪案が十一月には成立するというスケジュールまで策定していました。

徹底審議のうえ廃案に

 伊吹文部科学相は、石井議員が示した文書を「みていない」とのべる一方、教育基本法の改定案が「通過した場合にどうなるのか具体的に(私に)教えろとはいってある」と答えました。

 徹底審議こそ求められているのに、「成立後」の検討を始めていることは絶対に容認できません。

 教育基本法改悪案は、徹底審議の上、廃案にすべきです。


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