2006年11月5日(日)「しんぶん赤旗」

教基法見直し「やらせ質問」

青森での「タウンミーティング」

これが問題の依頼文書


 内閣府主催の「教育改革タウンミーティング」で、教育基本法改悪法案に賛成するよう学校関係者に「やらせ質問」をさせていた問題が、大きな怒りをよんでいます。日本共産党が国会で追及しましたが、この問題をいち早く取り上げた青森県教組(一戸義規委員長)と青森高教組(田中清治委員長)が一日の記者会見で明らかにした文書から、「やらせ質問」の実態を改めてみてみます。

ひな型添付して指示
「(2)の質問をお願い」

 「教育改革タウンミーティング」は九月二日、青森県八戸市で小坂憲次文部科学相(当時)を迎えて開かれました。約四百人が参加。「教育基本法案の是非など国民の忌憚(きたん)のないご質問やご意見を期待したい」(内閣府)というのが目的です。

 ところが、開催前に内閣府は「やらせ質問」の依頼文書を作成。このもとで県教育委員会・県教育庁↓中学校長↓PTA関係者へと「やらせ質問」依頼の連絡が徹底されるルートがつくられました。

 八月三十日に県教育委三八教育事務所からある中学校長あてにファクスで送られた「タウンミーティングの質問のお願い」と題する文書には「タウンミーティング八戸質問項目案」という質問のひな型が添付されていました。(資料I)

 それによると、次の三点を示し、「(2)の質問をお願いします」と指示しています。

 (1)時代に対応すべく、教育の根本となる教育基本法は見直すべきだと思います。

 (2)改正案は「公共の精神」などの視点が重視されていることに強く共感しています。改正を一つのきっかけとして、思いやりのある社会の実現を目指していくべきだと思います。

 (3)教育の原点はやはり家庭教育だと思います。

 この文書の内容はあるPTA会長にも伝わります。当日のタウンミーティングでは、このひな型の(3)と酷似した質問も出ています。(別項)

発言の仕方まで指南
「棒読みは避けて…」

 九月一日には県教育庁教育政策課から先の校長に「『タウンミーティング』に係る依頼発言について」という文書が届きました。(資料II)

 文書では、こと細かに発言の仕方を指南しています。

 「内閣府から以下のとおり発言の仕方について注意がありましたので、発言を引き受けてくださった〇〇PTA会長さんにお伝えいただきたいと思います」

 「できるだけ趣旨を踏まえて、自分の言葉で。(せりふの棒読みは避けてください)」「『お願いされて…』とか『依頼されて…』というのは言わないで下さい。(あくまで自分の意見を言っている、という感じで)」

 さらに、「当日の受付で本人を確認し、文科省依頼の発言者については文科省の担当者が後を追っていき、座席の位置を確認します」「〇〇さんは『文科省依頼』に該当していますので、よろしくお願いいたします」という念の入れよう。

 安倍晋三首相は、しきりにいじめ問題で「規範意識がない」と説きますが、いちばん規範意識がないのは政府自らだったことを今回の問題は示しています。


こんなに似ている質問

 【質問項目案】

 教育の原点はやはり家庭教育だと思います。残念なことに、親が親になりきれていない状況も目に付きます。

 【実際の質問は…】

 私、教育の原点は家庭教育だと思います。しかし、悲しいかな家庭の教育力は低下しているといわざるをえない状況であります。確かに親として責任を果たせない状況も目に付きますけれども…

 【質問項目案】

 先ほどの大臣のご説明にあったように、新しい教育基本法に「家庭教育」の規定が追加されることは本当に大事なことだと思います。(中略)また、学校、家庭、地域が連携・協力することも重要です。

 【実際の質問は…】

 大臣のご説明にあったように新しい教育基本法には家庭教育の項目が設けられているということでございますけれども、(中略)学校、地域そして家庭のその役割を明確にすべくいろんなとりくみをしていかなければならない。


(資料T)教育基本法改悪法案に賛成するような質問のひな型を三つ示した文書

表

(資料U)ある中学校長にあてた青森県教育庁教育政策課の依頼文書。発言の仕方まで指示しています

表

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