2006年11月4日(土)「しんぶん赤旗」
主張
横田空域
米軍支配排し全面返還を急げ
日米両政府は、二〇〇九年の羽田空港の拡張後、離着陸機が大幅に増えるため、在日米軍が管理する横田空域の一部を日本に返還することで合意しました。上限高度を階段的に下げることで、北は新潟から南は伊豆半島までの首都圏を含む広大な空域のうち、西側部分の約四割を返還し、羽田から北部九州などに向かう便数を増やすというものです。
しかし一部返還では民間機の過密運航の根本的解消策にはなりません。米軍の支配を排し、日本の主権を回復することがなにより重要です。一部返還ですまさず、全面返還を急ぐべきです。
なくならない障害
羽田空港は、二〇〇九年十二月から四本目の滑走路の供用を開始するため、民間機の離着陸回数が年間二十九万回から四十万七千回に激増します。過密運航を解消するためには横田空域の返還が不可欠です。
たしかに今回の措置だけでも、中国、北部九州、関西などに向かう一定の出発便は横田空域の上空を飛ぶことができ燃料費節約にもつながります。この限りでは意義があります。しかし、これですますわけにはいかないのが現実の姿です。
南部九州や沖縄方面への出発便は、横田空域を迂回(うかい)する現状は変わりません。緩和されるといっても制約があることに変わりなく、出発便に遅れがでるとの指摘もあります。到着機は横田空域の迂回を強いられ危険はなくなりません。
しかも、今回一部返還される空域の北側の羽田、富山、佐渡島を結ぶ三角形の空域は手付かずです。上限高度は約七千メートルにおよぶため、小松空港(石川県)から羽田に向かう民間機は新潟から大回りをしなければなりません。関西方面から仙台に向かう民間機は、落雷の危険がある積乱雲を避けるため高度を下げたくても横田空域があるためできません。
戦後六十年にもなるというのに、米軍が首都を含む日本の空を支配し、日本の民間機が広大な横田空域を避けて飛ばなければならないということ自体、きわめて異常です。
横田空域の全面返還を実現することは喫緊の課題です。しかし政府は、全面返還交渉どころか、米軍再編の巨額経費の負担を約束して一部の返還ですます態度に終始しました。ひたすら米政府に懇請する日本政府の姿勢は、対米追随姿勢の異常さを示すものでしかありません。
問題は日本政府に主権を取り戻す意思がうかがえないことです。
米政府は日本に横田空域の返還を拒否すると通告しています。横田空域には米軍横田基地(東京都)や厚木基地(神奈川県)があり、横田基地を拠点に戦略輸送にあたる米軍輸送機や厚木基地を足場に低空飛行をくりかえす米空母艦載機のために広大な空域を占拠し続けるというのです。これは日本の主権を侵害する行為そのものです。「ゆくゆくは返還」などという一方で一部返還ですますようなやり方をあらため、主権回復のため全面返還を正面にすえた対米交渉を進めるべきです。
軍事優先からの転換
日米両政府は、自衛隊の管制官を米軍横田基地管制部門に配置することも合意しました。日米が一体となって横田空域を優先的に軍事使用するのがねらいです。横田空域が自衛隊の管理に代わるだけの「返還」では、民間機排除の構図は変わりません。空域は国民の共有財産です。
横田空域の全面返還をめざすとともに、民間中心で一元的管理をする体制づくりが必要です。