2006年10月31日(火)「しんぶん赤旗」

リハビリ日数制限

命にかかわる被害も

患者・医師が緊急対策訴え


 病気やけがの後遺症を治療するリハビリテーションの日数が四月から制限され、リハビリを打ち切られた患者がいかに悲惨な状態におかれているか―。二十六日に開かれた「リハビリ日数制限の実害告発と緊急改善を求める国会内集会」(主催=リハビリ診療報酬改定を考える会・全国保険医団体連合会)で、患者や医師から深刻な実態が次々と報告されました。


痛みが続く

 「リハビリを打ち切られてから、経験したことのない痛みが続くようになりました。悪化を予防するには、リハビリを受けるしかありません」

 「ポリオの会」世話役で、ポストポリオ症候群の稲村敦子さんは涙ながらに訴えました。

 ポストポリオ症候群は、ポリオにかかった数十年後に、筋力低下や呼吸障害などの全身症状に襲われる病気です。稲村さんは四月にリハビリを打ち切られ、六月からは痛みのために家事が一切できなくなりました。声を詰まらせながら「高校生の娘に、母親らしいことを何もしてあげられないのが一番つらい。ポストポリオに治療法はありません。痛みをとり、進行を予防するため、リハビリを受けさせてください」と語りました。

可能性奪う

 厚生労働省は今年四月の診療報酬改定で、疾患ごとに保険がきくリハビリの日数制限を設定(表1)。制限を超えると、リハビリが受けられなくなってしまいました。

表1

 その結果、「呼吸器リハビリを打ち切られた患者が、一週間後には自分で痰(たん)を出すのが難しくなり、夜中に痰がつまって死にそうになった」(病院でリハビリに携わる宮崎博子さん)など、命にかかわる被害まで出ています。

 個別の症状を考慮しないで機械的に日数で打ち切るやり方には、「リハビリによって症状が改善する、やらなければ悪化するという人から、どうして取り上げる必要があるのか」(道免和久・兵庫医科大学教授)などの批判が相次ぎました。

 「交通事故にあってから十年間、一生懸命リハビリの指導を受けた人がつえを持って歩けるようになった。適切なリハビリを受ければ、重度の障害を負った人も社会復帰できる」(東川悦子・日本脳外傷友の会理事長)。リハビリ打ち切りが患者の回復の可能性を奪っていることは間違いありません。

 全国保険医団体連合会(住江憲勇会長)の調査では、脳血管疾患等のリハビリ治療を打ち切られた患者が、少なくとも二十四日までに二十都府県で六千八百七十三人いることがわかりました(表2)。

 集会の日、厚労省には「日数制限撤廃を求める署名」が約四万人分届けられました。今年六月に提出された署名と合わせると四十八万人分になります。世論におされて厚労省も「実態調査」に乗り出しましたが、制度の見直しは拒んでいます。

 厚労省は、「日数制限の制度を一日も早く緊急停止してください」という患者・医師らの必死の訴えに、耳を傾けるときです。(秋野幸子)


(表2)脳血管疾患等
リハビリを中止した患者数
都道府県 中止した
患者数
青 森
533
東 京
1114
神奈川
200
山 梨
431
富 山
154
静 岡
439
愛 知
1029
三 重
348
京 都
245
大 阪
298
兵 庫
351
奈 良
195
鳥 取
256
山 口
220
愛 媛
240
福 岡
126
長 崎
220
熊 本
327
大 分
7
鹿児島
140
6873

※保団連調べ。10月24日ま
でに回答があった228医療
機関分をまとめたもの。

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