2006年10月30日(月)「しんぶん赤旗」

韓国、対北朝鮮で模索

「包容」と制裁を並行

「これ以外の選択は難しい」


 北朝鮮の核実験で対北朝鮮政策の見直しを求める声が強まったことを受け、韓国の李鍾ソク・統一相が二十五日に辞意を表明、盧武鉉大統領もこれを了承しました。李氏は金大中前政権以来、北朝鮮との和解、交流を進めてきた包容政策(太陽政策)の中心的ブレーン。韓国政府は今後、包容政策の基調を維持しながら、国連安保理の北朝鮮制裁決議の履行に向け国際社会と協調していくとしています。(面川誠)


事業継続を決定

 核実験当日の九日、盧大統領は「この状況で包容政策だけを進めることができるだろうか」と発言。韓国政府高官も相次いで、包容政策の象徴的事業である金剛山観光と開城工業団地開発の「運用の調整」を表明していました。

 全国ネット局MBCの十日の世論調査では、包容政策の「継続」支持が23・8%、「縮小」36・0%、「全面中断」35・9%と厳しい見方が出ましたが、金剛山観光と開城工業団地については「引き続き推進」が42・3%に達しました。

 韓国政府は北朝鮮へのコメ、肥料などの支援を中断する一方、十九日に「金剛山観光と開城工業団地は大量破壊兵器開発と無関係」だとして事業継続を決定しました。

 一方で韓国政府は、潘基文・外交通商相が同日に訪韓したライス米国務長官との会談で、「安保理決議と国際社会の要求と調和するよう、必要な措置を検討する」と言明。安保理決議を履行しつつ、北朝鮮との対話、交流の窓は開け続けるという、難しい政策運営に乗り出しました。

 韓国内では核実験後、李統一相が野党や保守系メディアから批判の標的となっていました。二十五日の辞任表明の記者会見で、「包容政策が収めた成果に対して確信を持っている」と強調するとともに、辞任を決意した理由について、「(包容政策の)貴重な成果が、無差別に俎上(そじょう)にのぼり政争の具にされる状況」を挙げ、自分の存在が政策遂行の障害になることを避けたいと説明しました。

「戦争の危機」に

 北朝鮮の祖国平和統一委員会は二十五日、韓国が制裁に加わるなら「戦争の危機」を呼ぶとの談話を発表。これに対し韓国統一省は二十六日、これ以上事態を悪化させず六カ国協議共同声明を履行せよと反論、南北関係に悪化の兆しが見えます。

 韓国政府は二十六日、対北朝鮮制裁を決めた安保理決議一七一八の履行措置として▽大量破壊兵器、通常兵器、ぜいたく品の供給、輸出、移転の禁止▽制裁対象の個人、団体の資産凍結と資産活用の防止▽北朝鮮に出入りする貨物の検査▽安保理制裁委員会が定める北朝鮮国籍の人物の出入国、滞在禁止―などを発表しました。

 韓国有力紙の論説委員は「休戦ラインをはさんで北朝鮮と軍同士が向かい合うという状況下では、対話と圧力のバランスを一つ間違えば恐ろしい惨禍を招く。包容政策の基調を維持しながら、国際社会と足並みをそろえるという政策は容易でないが、韓国にとってこれ以外の選択は難しいのではないか」と語っています。


 包容政策 韓国政府の対北朝鮮政策。金大中前政権の打ち出した「北朝鮮の武力挑発を容認しない」「吸収統一はしない」「積極的に交流・協力する」の三原則。この政策を引き継いだ盧武鉉政権は、北東アジア全体の平和構築をめざす「平和繁栄政策」を掲げ、南北関係では▽対話による問題解決▽相互信頼優先と互恵主義▽南北当事者の合意を基礎とした国際協力―を原則としています。


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