2006年10月23日(月)「しんぶん赤旗」

高齢者 孤立

緊急時、来る人なし 6人に1人

正月三が日も一人きり 35%


 一人暮らしの高齢者の六人に一人は緊急時にだれも来てくれる人がいない。三人に一人が正月三が日を一人で過ごしている―。東京・港区という大都会で一人暮らしの高齢者の社会的孤立が深刻化している実態が明らかになりました。


東京・港区で調査

 「港区におけるひとり暮らし高齢者の生活実態と社会的孤立に関する調査報告」によるもので、同区社会福祉協議会と河合克義・明治学院大学教授の研究室が共同して実施しました。一人暮らしの高齢者の社会的孤立と貧困の最近の実態をとらえた調査として注目されています。

 区内に住む六十五歳以上で一人暮らしの高齢者四千百六十一人の40%を無作為抽出してアンケートを送り、回答した九百六十四人に訪問調査を依頼、今年三、四月に二次調査として聞き取り調査をし、二十四ケースを得ることができました。

 調査報告では、「緊急時にだれも来てくれる人がいない」との回答は15・9%。正月三が日は家族や親せきが集まる機会が多いときですが、「三が日をだれと過ごしましたか」との問いに、35・1%が「一人で過ごした」と回答しています。

 「親しい友人・知人がいない」12・9%、近所づきあいで「あいさつをかわす程度。付き合いがない」42・6%、「社会活動をしていない」と42・5%が答えています。

 「正月三が日を一人で過ごした」「親しい友人がいない」「社会参加をしていない」との回答で複数が重なったケースは22・8%ありました。

 社会的孤立状況は、貧困の広がりを示すものです。調査報告では、一人暮らしの高齢者の約三割が年収百五十万円(都内の生活保護基準)未満で、うち生活保護の受給者(捕捉率)は16・2%となっていました。

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一人暮らし高齢者調査から

孤立4人に1人

 東京・港区の「ひとり暮らし高齢者の生活実態と社会的孤立に関する調査報告」は、一人暮らし高齢者九百六十四人から寄せられたアンケートをまとめ、聞き取り調査のケースを載せています。

 同区の人口は十七万人(二〇〇五年)。高齢者の割合は、九五年は15・1%が〇五年には18・1%になっています。これに比較して高齢者のいる世帯中の一人暮らし高齢者の割合(一人暮らし高齢者の出現率)は七五年が12・9%、九五年31・5%、二〇〇〇年は38・4%と急増しています。

 調査結果では一人暮らしの高齢者の83・4%が女性で平均年齢は75・5歳。持ち家と借家・賃貸住宅はほぼ半々で、単身で居住する期間は十年以上が65・1%です。

 一人暮らしになった理由は、配偶者の死亡が42・3%、未婚が24%。一人暮らしが「不安」「さびしい」と感じているのは36・4%です。現在も通院中が63・8%。日常の困りごとは、家庭内では掃除、洗濯、食事の準備、地域では外出手段、買い物、通院・薬とりをあげています。

 調査報告は、「病気などで体が不自由な時、緊急時に来てくれる人がいるかどうか」「親戚、友人・知人、近隣の人々との交流があるかどうか」を一人暮らしの高齢者の孤立状態を調べる指標にしています。

 「緊急時に来てくれる人がいない」と答えた人のうち、「正月三が日を一人で過ごした」人は70・6%にもなります。

 「正月三が日を一人で過ごした」「親しい友人・知人がいない」「社会参加活動をしていない」が重なり合うケースは、深刻な孤立状態にあります。二つ以上が重なり合うのは22・8%で、〇五年の一人暮らし高齢者四千百六十一人のうち九百四十八人がこの状態にあると指摘しています。

 一人暮らしの高齢者の約四分の一にあたる人が親族や知人、友人、近隣の人と交流がなく、社会的孤立状態にあることを示しています。

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悩み相談できない/病気で将来不安

 聞き取り調査の一部を紹介します。

 〇…八十三歳、女性

 四畳半一間の間借り。専有台所のみで調理台はなく、水道、ガスコンロだけ、とにかく狭い。家賃は月三万二千円。二階にあがる階段が急で手すりにつかまり、後ろ向きで降りる。最長の仕事は家政婦。現在は仕事をしていない。収入は年金、百―百四十九万円程度。正月は一人ですごした。生活上の楽しみはない。社会活動に参加しない理由は「一緒に参加する仲間や友人がいない」。会食サービスやおむすびサービスは知っているが、利用していない。困りごとや悩み事を相談できる人、病気やからだの不自由なとき、すぐ来てくれる人はいない。

 〇…七十四歳、女性

 木造民間アパート、六畳一間で家賃は六万五千円。仕事はしていない。最長の仕事は赤坂のホステスで、高級クラブを経営。現在、生活保護をうけているが、経済状態はかなり苦しい様子。朝六時起床し、病院通いの日々。ヘルパーが火・木曜日に訪問。正月は一人で過ごした。生活上の楽しみはない。困りごとがあるとヘルパーに来てもらうが、来られないときは我慢する。会食サービスは知らない。本人は人と会うのが好きではないと言っていたが、話をすると結構話してくれるので、心の中では誰かに話を聞いてほしいと思っているのではないか。

 〇…七十五歳、女性

 家賃六万五千円の木造民間賃貸アパート。老朽化していて、すき間だらけで寒いうえに風呂がない。現在、仕事はしていない。生活保護。経済的にかなり苦しい。病院に通院している。近所づきあいは、あいさつを交わす程度で、友人は多いようだが、悩みは相談できない。生活上の楽しみはない。生活上の困りごとや病気などで身体の不自由なときにすぐ来てくれる人はいない。はっきりと「自分は孤独だ」と何度もいっていた。友人や親族に生活保護を受けていることを話していない。心臓の病気があり、将来が不安。会食サービスは利用していない。


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