2006年10月22日(日)「しんぶん赤旗」

政府政策で医師不足に

医療費削減

シンポで批判続出


 「医師不足の最大の理由は、政府が医療費削減の政策をとってきたことにある」。二十日、東京都内で開かれた「医師需給のあり方を探る」シンポジウム(医療科学研究所主催)で、現場の医師から厚生労働省への批判が続出しました。

 埼玉県済生会栗橋病院副院長の本田宏氏は「高齢化すれば医療費が上がるのは世界の常識なのに、日本では抑制してきた。そのつけが現場の労働条件を悪化させて、各地の医療崩壊となって噴出した」と指摘しました。そのうえで、日本の医師数(人口比)がOECD(経済協力開発機構)加盟国の平均より十二万人も少ないことや、病院の医師や看護師の過酷な労働状況を紹介しつつ、「現在の医療崩壊を食いとめるためには、医師の増員がどうしても必要。国民負担軽減と医療充実を同時に達成すべきだ」と提言しました。

 内田健夫・日本医師会常任理事も「長年にわたる医療費抑制策が、医師不足問題の大本にある」と発言。女性医師の割合が増え続ける一方で、出産・育児で退職してしまう現状を示し、「女性医師が働き続けられる勤務体制の整備が必要」だと述べました。

 長年、へき地や地域医療にたずさわってきた山田隆司・地域医療振興協会常務理事は、地域の医療ニーズに見合った、総合的な診療能力を持った医師が不足している問題があるとして、細分化された専門医の育成だけでなく、幅広い診療に対応できる家庭医・総合医の育成にも力を入れるべきだと強調しました。

 これにたいし、厚生労働省の宮嵜雅則・医師臨床研修推進室長は、「医学部定員の削減に取り組む」という閣議決定(一九九七年)を示しつつ、「医師がやっている仕事を見直さずに数だけ増やすというのは、あまりにも単純な議論」と述べました。また、厚労省の「医師の需給に関する検討会」の委員として“長期的には必要な医師数は満たされる”という推計を出した長谷川敏彦・日本医科大学教授も、医師の生産性を上げれば数を増やさなくても対応できるなどと主張しました。

 これには「国が医師の養成数を規制しているところは、世界で数カ国しかない。国には現場の医師の過酷な労働を改善し、医療を守る責任があるのではないか」(本田氏)とパネリストから批判の声が上がりました。


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