2006年10月20日(金)「しんぶん赤旗」

北朝鮮制裁の安保理決議 日本に求められる対応


 日米両政府は十八日の日米外相会談で北朝鮮の核実験問題に対し、同国に出入りする船舶などへの「貨物検査」を含む国連安保理決議一七一八の「着実な実施」で合意しました。一方、日本政府や自民党内では、周辺事態法や船舶検査法を発動し、自衛隊の船舶検査、米軍への兵たん支援を行う動きが強まっています。いま、北朝鮮の核問題解決で日本政府に求められるものは―。


平和解決へ外交努力貫いて

 十五日に全会一致で採択された安保理決議一七一八は、北朝鮮の核実験実施の発表を強く非難し、核関連物資の供給停止などを制裁措置として決定しました。

 重要なのは、決議の冒頭に「国連憲章第七章に基づいて行動し、同章四一条に基づいて措置を取る」と明記していることです。四一条は「兵力の使用を伴わない」、非軍事の措置を定めたものです。軍事的措置を定めた四二条には触れていません。

 さらに、決議は各国に対して「外交努力を強め、緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎」むよう求め、あくまで平和的・外交的な解決を求めています。北朝鮮には▽同国の核問題をめぐる六カ国協議への即時無条件の復帰▽二〇〇五年九月の六カ国共同声明の迅速な履行―を求めています。

 決議に盛り込まれた「貨物検査」についても、「必要に応じて」「自国の権限と法律に従い」「国際法に沿って」とされ、義務ではなく「要請される」と抑制的な表現になっています。

 麻生太郎外相は十八日の日米外相会談で「(決議の)目的は制裁ではなく、北朝鮮に核を廃棄せしめるということで、対話の窓は開けておく必要があり、六カ国協議への無条件復帰を求めたい」と述べています。

 そうであるなら、日本政府としても決議に沿って非軍事的措置に徹し、外交努力を尽くすべき時です。

軍事対応は決議に逆行

 ところが、自民党内では「日本海においてアメリカ海軍、その他の海軍が北朝鮮に向かう積荷の臨検を行う。その時、海上自衛隊はどうするのか」(舛添要一・自民党参院政審会長、十一日)などと軍事対応をあおる発言が飛び出しています。

 政府・自民党内で発動が検討されている周辺事態法は、日米安保体制をアジア太平洋全域に広げた「日米安保共同宣言」(一九九六年)に基づく「日米軍事協力の指針(ガイドライン)」(九七年)を具体化したものです。

 アジア太平洋地域で米軍が「有事」とみなして軍事介入に乗り出した際、自衛隊が補給や輸送、修理・整備などの兵たん支援を実施することを定めた「自動参戦」法です。

 同法の関連法である船舶検査法も、自衛隊が公海で船舶検査を行うとともに、同様の活動をしている米軍への兵たん支援を規定したもので、「有事」対応の法律です。

 こうした軍事対応は、安保理決議が慎むように求めている「緊張を激化させる」行動にほかなりません。それは、平和的・外交的解決を求めた決議に真っ向から反するもので、事態をさらに悪化させ問題解決をいっそう遠ざけることになります。

 政府内ではすでに、米軍艦船が北朝鮮近海で船舶検査に当たることを想定し、▽海上自衛隊の補給艦が給油などの兵たん支援を米軍艦船に実施する▽海自の護衛艦も日本海や東シナ海に展開し船舶検査を行う▽海自のP3C哨戒機などにより上空から監視し、不審な船舶を発見すれば追尾して、米軍や海自の護衛艦に通報する―ことなどが検討されています。

 北朝鮮近海での軍事行動については、自民党内からも「軍事力で抑えようとすれば、必ず報復を受ける。東京も安全ではない。彼ら(北朝鮮)の暴発もある」(山崎拓・安保調査会長、十六日)との指摘もあがっています。

 安保理決議が決めた兵器や装備、核・ミサイル・大量破壊兵器関連物資の移転防止などの措置を厳正に実施するため、日本が非軍事の分野でやるべきことは数多くあります。今、政府に求められているのは、戦争をはじめ国際問題への軍事的関与を禁止した憲法を持つ国として、決議に示されている非軍事の立場を貫き、問題の平和的・外交的な解決のためにあらゆる努力を尽くすことです。

「貨物検査」

 安保理決議は、「核・化学・生物兵器、その運搬手段および関連物資の不法取引を防止する」ため、北朝鮮に出入りする船舶などへの「貨物検査」(inspection of cargo)を挙げています。

 米国は、北朝鮮やイランなどへの大量破壊兵器関連物資の移動を阻止する「拡散阻止構想」(PSI)の一環と位置付けています。ライス米国務長官は今回の日中韓歴訪の目的の一つに「PSIでの協力拡大」を挙げました。

 米国が主導するPSIには強制乗船、物資押収や乗組員の身柄確保といった強制措置が含まれ、実施主体は各国海軍や沿岸警備隊(コーストガード)です。米国の沿岸警備隊は軍隊です。

 中国は「貨物検査」について、「強制措置であってはならない」(王光亜国連大使)と海上での行動に懸念を表明、陸上での「貨物検査」に限定して行う意向です。

国連憲章

 第四一条
 安全保障理事会は…兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、かつ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請することができる。

 第四二条
 安全保障理事会は、第四一条に定める措置では不充分であろうと認め、または不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和および安全の維持または回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる。


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