2006年10月20日(金)「しんぶん赤旗」

主張

核武装論議

北朝鮮批判の大義損なうな


 麻生外相が国会で、北朝鮮の核実験に対抗し、日本も核兵器保有の「議論をしておくのは大事だ」との発言を重ねています。自民党の中川昭一政調会長も先にテレビ番組で、日本も核保有の「議論をおおいにしないと」と発言しました。いずれもただちに日本の核武装を求めたものではありませんが、被爆国・日本の政府の外交責任者や与党の政策責任者が、日本の核保有の議論を肯定したのは重大です。

被爆国として論外の主張

 核兵器は、もっとも残虐な大量破壊兵器です。とりわけ広島、長崎で被爆の惨禍を体験した日本国民にとって、核兵器保有など絶対にあってはならない選択肢です。議論を求めただけとはいっても、日本が核武装を狙っているとの疑念を世界に与えること自体大問題です。

 とりわけ問題にしなければならないのは、一連の発言が、北朝鮮の核実験に国際社会が立ち向かっているさなかに行われたことです。国連安保理が全会一致で制裁決議を採択し、国際社会が一致協力して北朝鮮に核兵器計画を放棄させる努力を強めているとき、日本の核武装論議は、その解決に重大な障害をつくりだすことになります。

 国際社会が北朝鮮の核実験を批判し、一致結束して北朝鮮に核兵器の保有と開発計画を放棄させようとしているのは、世界のどの国も北朝鮮が新たな核兵器保有国になることを望まないからです。そのとき日本が核兵器保有の議論を始めれば、それこそ北朝鮮に核兵器の放棄を迫る大義を失い、日本の立場を根本から崩すことになります。

 北朝鮮の核実験に対し安保理決議は、平和的、外交的に事態を解決することを基本に、そのための制裁を国連憲章四一条の非軍事的措置に限り、六カ国協議の当事国は「外交努力を強め、緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎(む)」ことをはっきりさせています。

 日本は六カ国協議の当事国です。日本が“核には核で”の議論を始めることは、北東アジアと世界の緊張を激化することになるのは明らかで、それは安保理決議の精神にも反することです。

 麻生外相は日本の外交責任者として、国連安保理決議の実行に責任を負う立場です。その外交の責任者が、安保理決議に反する発言を重ねているのは絶対に許されません。与党の政策責任者である中川氏の場合も責任重大です。

 日本の核武装を懸念する声は、中国、韓国などのアジア諸国をはじめ、世界に広がっています。中川氏らは、自らの発言がこうした批判を招いたことをどう受け止めるのか。麻生氏や中川氏はもちろん、二人を起用した安倍首相自身も、その責任をあいまいに済ますことができないのは明らかです。

核兵器廃絶に貢献を

 日本が核兵器の脅威をなくしていこうと真剣に考えるなら、本来とるべきは新しい核兵器保有国を許さないのはもちろん、核兵器の廃絶へ積極的に行動することです。

 唯一の被爆国として、核兵器を「持たず・つくらず・持ち込ませず」という「非核三原則」を堅持するとともに、すすんで世界から核兵器を廃絶するための役割を、積極的に果たさなければなりません。

 核兵器の拡散が問題になる根っこには、特定の国には核兵器の保有を認めている体制があります。それを変え、大本から全世界の核兵器を廃絶するためにこそ、日本はイニシアチブを発揮すべきです。


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