2006年10月16日(月)「しんぶん赤旗」

対北朝鮮安保理決議

平和的外交的解決へ

国際社会の強い意思示す


 採択された国連安保理決議は、数々の国際合意を踏みにじって強行された北朝鮮の核実験を許さないという国際社会の断固とした意思を改めて示しました。

異例の速さで全会一致採択

 この明確な意思は、決議が九日の核実験表明から採択までわずか五日という異例の速さで全会一致で採択されたことにも現れています。

 決議は、北朝鮮が発表した核実験を非難し、「これ以上の核実験の実施」も、「弾道ミサイル発射も行わないよう要求」。その上で、「北朝鮮が核兵器と核開発計画を、完全かつ検証可能で後戻りできないやり方で廃棄すること」を求めています。

 そのために決議はさらに、非軍事的制裁措置である国連憲章第七章四一条の下での制裁を明記。すべての加盟国に北朝鮮へのミサイルや戦車、大砲などの軍事物資の輸出を禁止、核やミサイル関連とみられる金融資産の凍結や、それにかかわる人物の入国禁止を義務付けています。

 もう一つの重要な点は、問題を外交的、平和的に解決することが国際社会の一致した意思であることを明確に示していることです。

 この立場は、直前まで活発におこなわれた首脳外交にも示されました。十三日の北京での中韓首脳会談は、北朝鮮にたいして、「必要で適切な対応措置」をとることを支持する一方、「対話を通じて平和的に解決し、朝鮮半島の安定的な非核化をめざす」ことで一致しました。とくに「情勢をエスカレートさせ、統制を失う可能性のある行動を回避」することを確認しました。

 両国のこのような姿勢は、胡錦濤主席の特使として急きょ訪米した唐家セン氏を通じて直接米国に伝えられました。

 十四日午後の安保理公開協議での各国の意見表明のなかでも、全会一致で決議が採択されたことの意義が強調されました。ドラサブリエール仏国連大使は全会一致の意義にふれつつ、「制裁措置の有効性を確保するには、貨物の検査を国際法にしたがって進めることが必要だ」として国際法の順守を強調。ロシアのチュルキン大使は「安保理が関連国の参加のもとに共通のアプローチで作業しているときに、各国が一方的に制裁を科すことはこの問題の解決を促進しない」とのべ、今回の合意から逸脱した制裁に出ることをけん制しました。

基本的精神は決議の各所に

 こうした基本的精神は採択された決議の各所に記述されています。

 一つは、憲章七章の引用のあとに、制裁措置を非軍事的な措置に限定するため「第四一条に基づいて措置をとり」と明記したことです。当初の米国案は、軍事的措置に言及した第四二条を含む第七章だけの引用でした。それでは将来、軍事行動の発動が正当化されかねないとの中国やロシアの主張を反映した修正でした。

 また、決議の最後で、「追加的措置が必要な場合はさらなる決定が必要になる」との、自動的軍事的行動への歯止めの一項が加えられました。

 最後まで検討がおこなわれたのは核やミサイル関連物資・技術の禁輸に関する規定でした。当初案は、北朝鮮に出入りする船舶などへの「貨物の検査」の実施を義務付けるものになっていました。

 これについて中国やロシアは「貨物の検査」が、北朝鮮側とのトラブルと軍事衝突に発展しかねないことを懸念しました。実際、これまで国連安保理が採択した対イラクや対ユーゴスラビアへの経済制裁決議にもとづいた臨検や船舶の検査では警告射撃を含む強制措置がとられているからです。

 このため決議では加盟国に義務を課すのではなく、「各国の法手続きに従い」、かつ「国際法にそって、必要に応じて、北朝鮮に出入りする貨物の検査を含む協調行動を取るよう」要請するという表現に改められました。この部分は、採択直前までは、「協調行動をとるものとする」とされていました。

 決議ではまた、加盟国と、とりわけ北朝鮮を含む六カ国協議の当事国にたいして、朝鮮半島の非核化を誓約した二〇〇五年九月の六カ国共同声明の速やかな履行をめざし、「緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎み、六カ国協議の早期再開を促進する外交努力を強める」ことを求めています。

受け入れこそ真の安全保障

 アジアの平和と安定のためには朝鮮半島で軍事的緊張を高めることはなんとしても避けなければなりません。北朝鮮は核兵器開発計画を放棄し、即時無条件で六カ国協議の場に戻るべきです。北朝鮮の国連大使はこの安保理決議の受け入れを拒否すると表明しました。しかし、この決議が示した要求を受け入れることこそが、国際社会との信頼にもとづく関係という同国の真の安全保障につながる道です。(外信部長・田中靖宏)


 国連憲章第7章第41条 国連憲章第7章は「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」を定めています。第41条は非軍事的措置を定め、第42条は、非軍事的措置では不十分であると認めたときの軍事的措置を定めています。第41条の全文は次のとおり。

 安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、且つ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部または一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる。


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