2006年10月11日(水)「しんぶん赤旗」

北朝鮮の核実験強行

世界が非難、交渉で解決を


対話で打開めざす

中国

 【北京=菊池敏也】九日の北朝鮮の核実験強行に対して、中国は同日、異例の速さで「断固たる反対」を示した外務省声明を発表しました。

 核実験を実施するとした三日の北朝鮮外務省声明に対して中国は四日、北朝鮮に「冷静さと自制心」を促す外務省報道官談話を発表していました。北朝鮮が中国や国際社会の要求を無視して核実験を強行したことに、中国は外務省声明に格上げし、非難のトーンを高めました。

 北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議が一年以上開かれない状況で、北朝鮮が核実験を強行したことは、六カ国協議の枠組みを崩しかねず、議長国である中国の顔をつぶす行動です。

 中国は、その解決の道は「対話と協議」を通じた平和的解決しかないと強調し、六カ国協議再開を粘り強く追求する立場を確認しています。

 九日夜には、胡錦濤国家主席がブッシュ米大統領と電話会談。胡氏は、外務省声明にもとづき、北朝鮮に情勢の悪化を招くいかなる行動もとらないよう要求する一方、関係国にも冷静な対応を希望しました。また、交渉を通じて問題解決を堅持し、情勢のエスカレーションやコントロール不能を招くような行動は避けるよう求めました。

 中国外務省の劉建超報道官は十日の記者会見で、「北朝鮮は中国の同盟国」との記者席からの発言に「その表現は正しくない」と述べて、改めて北朝鮮の核実験を批判しました。また国連安保理での協議に関連して「適切な措置」をとる必要があると述べるとともに、(1)朝鮮半島の非核化(2)北東アジアの平和と安定(3)六カ国協議の推進―に役立つかどうかを基準に判断すると強調、武力行使には反対する立場を示しました。

核兵器なくす努力から後退

マレーシア外相

 【ハノイ=鈴木勝比古】マレーシアのサイドハミド外相は十日、「北朝鮮の核実験は核兵器のない地域と世界への努力からの重大な後退である」と述べ、北朝鮮に核兵器開発の中止と核実験の凍結を求める声明を発表しました。

 声明は同時に、「核兵器の存続はとりわけ拡散の危険を増大させることで人類に深刻な脅威を与えている。それゆえマレーシアは完全かつ全般的な(核)軍縮の達成が重要であると繰り返す」と指摘しています。

挑発的な行為

米大統領

 【ワシントン=山崎伸治】ブッシュ米大統領は九日、核実験を実施したとの北朝鮮政府の発表について、「国際の平和と安全に対する脅威を成すものだ。米国は今回の挑発的行為を非難する」との声明を発表しました。

 同大統領は、中国、韓国、ロシア、日本の首脳と協議し、「国連安全保障理事会の迅速な対応」で一致したことを明らかにし、「米国はいまも外交に専心する」として、北朝鮮には「六カ国協議の共同声明の実施」を要求。一方で「自国とその利益を守り続ける」とともに、「韓国と日本など地域の同盟諸国に対し、米国が抑止と安全についての約束を全面的に果たすこと再確認した」と述べました。

対北朝鮮政策疑問の声も

米メディア・専門家

 【ワシントン=山崎伸治】北朝鮮が核実験を行ったと発表したことをめぐり、ブッシュ政権のこれまでの対北朝鮮政策に対する疑問の声が米メディアや専門家の中からあがっています。

 九日付の米紙ワシントン・ポストは、北朝鮮の核実験実施を「ブッシュ政権の核不拡散政策の失敗と見なされても無理はない」と指摘。クリントン前政権が「枠組み合意」で北朝鮮の核開発を凍結させ、米大統領として初の平壌訪問も真剣に検討したのに対し、二〇〇一年に成立したブッシュ政権はそれらを引き継がなかったと指摘。

 クリントン政権で国連大使、エネルギー長官を務めたリチャードソン・ニューメキシコ州知事は九日、米CNNテレビのインタビューでブッシュ政権がやってこなかったこととして「北朝鮮との直接対話」をあげました。

全く無責任

英首相

 【ロンドン=岡崎衆史】北朝鮮の核実験について、ブレア英首相は九日、声明で、「北朝鮮政府の全く無責任な行為を非難する」と表明しました。同首相は「新たな挑発行為は、北朝鮮が近隣諸国と国際社会の懸念を無視していることを示し、核不拡散条約と国連安保理決議一六九五にも違反している」と強調しました。

既存核大国の責任問う声も

フランス

 【パリ=浅田信幸】北朝鮮による核爆発実験に対し、十日付仏紙ルモンドはブッシュ政権の対北朝鮮政策の「妥当性」に疑問を投げかけ、核実験強行に至らしめた「米国の責任」を指摘しました。

 同紙は、北朝鮮によるプルトニウム生産の凍結と引き換えに軽水炉型原子力発電所の建設を援助する一九九四年の合意がありながら、二〇〇二年になってブッシュ政権が北朝鮮の「秘密のウラン濃縮計画」を言い立てて「合意」の無効を宣言し、これが北朝鮮による核不拡散条約(NTP)脱退とプルトニウム計画の再開を招いたとしています。

 一方、核エネルギーの放棄を目指す反核団体など七百五十団体を結集した仏ネットワーク組織「核からの脱却」は九日、米仏など核兵器保有国が「核のシミュレーション実験を進めることで、他国に核兵器開発の口実を与えている」と非難する声明を発表しました。

 また、ドストブラジ仏外相は、ジュネーブでの記者会見で、北朝鮮の核実験は「国際的な安全保障に重大な問題を引き起こす」と非難。「国際社会は早急に断固たる態度を取らなければならない」と安保理メンバーなどと対応を協議する必要を強調しました。

平和と安全を危険にさらす

独政府

 【ベルリン=中村美弥子】ドイツ政府は九日、北朝鮮の核実験実施発表について、「域内外の平和と安全を危険にさらすものだ」と厳しく非難。国連安全保障理事会に厳しく対応するよう促すとともに、北朝鮮が六カ国協議に速やかに復帰するよう訴えました。

核兵器の廃絶求める

エジプト

 【カイロ=松本眞志】エジプトのアブルゲイト外相は九日、北朝鮮の核実験実施を強く批判するとともに、六カ国協議による平和的解決を訴える声明を発表、イスラエルを含めた中東の非核化を改めて呼びかけました。エジプト紙エジプシャン・ガゼット十日付によると、同外相は、世界から核兵器をなくすエジプトの立場は明瞭だと強調しました。

 エジプト紙アルアハラム十日付によると、アラブ連盟のムーサ事務局長は九日、声明を発表し、北朝鮮の核問題を六カ国協議の場に立ち戻って解決することを求めました。

 また同紙社説は、北朝鮮の核兵器保有が朝鮮半島情勢の緊張を高めると同時に、日本の平和憲法改悪にも影響を与えると指摘。中国、ロシア、パキスタン、インドなどのアジア地域の核兵器保有国に北朝鮮が加わり、さらにイランが現在核開発に取り組んでいることは、核不拡散条約(NPT)の目的に反するものであると指摘しました。


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