2006年10月9日(月)「しんぶん赤旗」

主張

米原潜放射能排出

米軍追随の原因調査打ち切り


 文部科学省の原子力放射能調査専門家会合は五日、横須賀港を出港する米原子力潜水艦ホノルル号の艦尾の海水から検出された放射性物質が「ホノルル由来と断定することはできない」との調査結果を公表しました。在日米海軍司令部も同日、ホノルル号の放射性物質排出を否定する調査結果を発表しています。

 日米の調査結果は、日米が軌を一にして原因究明の道を閉ざすものです。これでは、横須賀市民はもちろん、同じく米原潜基地とされている佐世保やホワイトビーチ(沖縄)の地域住民の不安を強めるだけです。

対日約束にも違反

 放射性物質であるコバルト58とコバルト60は、ホノルル号の後方百メートル以内の直近で、日本の放射能測定船がくみ上げた海水から検出されたものです。これらは自然界にはありません。周囲にもコバルトを出す原因はありませんでした。文科省専門家会合の報告で確認されています。

 ホノルル号が排出原因であることはまず間違いありません。放射能漏れをくりかえさせないために、原因を究明することが絶対に必要です。

 ところが、文科省専門家会合の調査は他に原因が見当たらないことから放射性物質がホノルル号の原子炉内で生じたものに「由来する可能性は否定できない」と認めながら、放射性物質が寄港中継続的に排出されたとは考えられないなどといって、ホノルルが排出したとは「断定できない」と結論づけました。可能性があるという以上究明は当たり前です。それなのに排出していないかのようにいうのはあまりにも異常です。

 日本側は、ホノルル号を直接調べることもできず、米側からデータを出させそれを検討したわけでもありません。ホノルル号の原子炉にかんするデータを持ちもしないで、ホノルル号が原因ではないと断定するなどできるはずがありません。

 専門家会合が可能性として認めている冷却水のなかの放射能をおびたコバルトが排出されたのではないか、原子炉を冷やす一次冷却水と二次冷却水をつなぐ蒸気発生器の細管が損傷したのではないかなどの問題は重大な疑問です。それを知ることが今回の放射能漏れの原因解明にとって重要なことです。その道筋を日本側から閉ざすなど言語道断です。

 米側は放射性物質の「意図した排出はない」「排出につながる事故もなかった」と結論づけています。しかし、原子炉の冷却管や蒸気発生器システムの損傷が原因ということもありえます。すべてにふたをするような米軍の態度は、日米とりきめに照らしても重大です。

 米政府は原潜寄港にかんして、放射能をふくんだ「放出水その他の廃棄物は排出されない」と約束し(一九六四年八月)、佐世保港での放射能漏れ事件(六八年五月)にさいしても、通常一次冷却水の放出とそれ以外のあらゆる系統からの放射性物質の排出をしないと約束しました。この約束に照らせば原因の徹底究明は米軍の責任であることは明白です。原因究明の拒絶は約束違反です。

 政府は米軍の言い分をうのみにして原因をうやむやにしてはなりません。徹底究明を要求すべきです。

住民が決める

 政府は原子力空母の横須賀配備を決めました。日米同盟優先、米国いいなりでは横須賀市民と首都圏三千万人の命を守れないことは明白です。

 住民が地域の主役です。原子力空母配備の是非を問うための横須賀市住民投票条例制定を求める署名運動を成功させることが重要です。


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