2006年10月6日(金)「しんぶん赤旗」
放射能漏れ
「米原潜」否定できず
文科省 専門家会合が検討結果
文部科学省は五日、原子力艦放射能調査専門家会合を開き、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)で発生した攻撃型原子力潜水艦ホノルルの出港時に検出された放射能漏れ事故について、断定はさけたものの、「ホノルルの原子炉内で生じた放射化生成物に由来する可能性を否定できない」との評価・検討結果を明らかにしました。再測定でも、コバルト(Co)58が検出されています。
会合では原子力潜水艦の寄港、停泊中、出港時の海水や海底泥の採取、分析方法に問題がなかったことを確認しました。原潜に由来する可能性を否定できない理由として、(1)一九五〇年から八〇年代に行われた大気圏内核実験の影響とは考えられない(2)横須賀市内にある放射性コバルトを使用する四事業所から距離がある―ことなどをあげました。
しかし、海水サンプルから、環境水準を上回って原子炉内で生成される核分裂生成物やコバルト以外の放射化生成物が検出されていないことを考慮すると、「原子炉や冷却系の事故・トラブルに起因して放射性物質が放出されたものとは考えられない」との見方を示しました。
解説
横須賀港放射能漏れ調査
軍事機密の壁
文部科学省の原子力艦放射能調査専門家会合では米原子力潜水艦の寄港時の海水から自然界にはない放射能、コバルト60、58が初めて検出されたことが確認され、その原因についての意見がかわされました。検出されたコバルトが微量であることや、他の放射性物質が検出されていないことから原子炉事故・トラブルについて否定的な見方がありました。
一方、複数の専門委員から共通して出されたのが原子炉作業者に付着した放射性物質の流出説です。これは浜岡原子力発電所などで起きたことで、原子炉の管理区域から退出後の手洗いなどで作業者に付着した放射性物質が発電所構内の複数の浄化槽から検出されたというものです。
また、専門委員から異口同音にだされたのが「原子炉の構造や部材がわからない。推測するしかない」という米原子力潜水艦の軍事機密の壁でした。会合後の記者会見で「米原潜の排水口はどこにあるのか」と聞かれ、文部科学省の原子力安全担当者の回答は「わかりません」でした。
同省は「検出された物質は微量、健康など安全上の問題は考えられない。これ以上の評価・分析は考えていない」とも表明しました。これでは、国民の生命・安全より米軍への気がねを優先したとの批判をまぬがれません。
(山本眞直)