2006年10月3日(火)「しんぶん赤旗」

主張

教育基本法改悪案

国策に従う人間づくり明白に


 安倍首相は、所信表明演説で「教育再生」をうたい、継続審議となっている教育基本法改悪案の「早期成立を期す」と強調しました。

 教育基本法を全面的につくりかえるねらいは、一人ひとりの子どもたちの「人格の完成」をめざす教育から、「国策に従う人間」をつくる教育へと、教育の根本目的を百八十度転換させることにあります。

「人格の完成」を外す

 小泉前政権はそのねらいを隠し、改定の理由を「時代の要請」であるとごまかしてきました。しかし、安倍首相の場合は、「国策に従う人間」づくりのための教育という危険なねらいをあからさまに語りました。

 安倍首相は、「私が目指す『美しい国、日本』を実現するためには、次代を背負って立つ子どもや若者の育成が不可欠です」といいます。

 本来、「子どもや若者の育成」は、主権者としての成長を目的とされるべきです。安倍氏のように、「美しい国」という自らの国づくりに子どもを利用しようというのは、教育のあり方を根本から覆すものです。

 教育基本法は、戦前、教育を国家権力による完全な支配・統制のもとにおき、やがて軍国主義一色に染め上げられていった歴史の反省にたって、教育への国家権力による「不当な支配」を排したのです。安倍氏にこの認識はまったくありません。

 安倍氏は、「教育の目的は志ある国民を育て、品格ある国家、社会をつくることです」とのべました。ここにも、安倍氏が教育の目的を「人格の完成」から変質させようとしていることがうかがえます。

 政府の教育基本法改悪案は、「愛国心」を国民に強制し、憲法が保障した内心の自由を侵害しようとしています。また、国家の教育への介入を無制限にし、憲法が保障した教育の自由と自主性をふみにじろうとしています。

 安倍氏がねらう改悪の方向が、「人格の完成」をめざす教育本来のあり方と両立しないのは明白です。

 安倍氏が、政府の改悪案に建前として残っている「人格の完成」さえ、まったく無視したのは、特定の価値観の押し付けに凝り固まっているからでしょう。

 教育の目的を、「人格の完成」におくのではなく、「美しい国」という特定の価値観に利用する、安倍首相の教育観は、国民主権の原理にも反することです。現行法第一条が、「教育の目的」を「人格の完成」においているのは、未来のあり方は、人格の完成をめざす教育によって育った未来の世代の判断にゆだねようという、国民主権の立場からです。

 安倍氏は、著書『美しい国へ』のなかでいっています。国が、監査官を全国に配置して、学校と教師を評価し、「問題」のある学校は民営に移管させる。全国的な学力調査を実施し、結果を公表し、結果が悪い学校には「支援措置」をとり、それでも改善が見られない場合は教員の入れ替えを強制的に行う。

 こうした国家統制の教育を行うのは、国民の意思を無視して特定の価値観に立った国づくりのためです。

廃案に追い込もう

 安倍氏は、憲法改悪を明言し、「海外で戦争をする国」づくりと子どもの世界をいっそう競争本位にする「弱肉強食の経済体制」づくりをあらわにしています。この国策に従う人間をつくることが教育基本法改悪のねらいです。競争と格差の拡大、憲法九条改悪につながる教育基本法改悪案を廃案に追い込もうと、世論と運動が広がっています。


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