2006年10月2日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

高齢者が元気!

健康も友達づくりも


 経験と知恵が豊かな高齢者が、いま元気です。医療、介護、年金の改悪など、高齢者いじめの悪政が続いていますが、そんななかでも、“老人力”を発揮して、やりがい生きがいを実感しつつ、仲間の輪を広げる高齢者たち。今回は、明るく元気に、さまざまな取り組みを続ける高齢者たちを紹介します。


てくてく

バスハイクで歴史散策

兵庫・姫路

地図

 「安くて、おいしいものが食べられ、珍しいところに行ける」(八十三歳女性)、「知らない人とも友だちにもなれる」(六十六歳女性)―というのは、サークル「てくてく歴史散策」の例会参加者の声です。

日帰りで月1回

 毎月一回、バスを利用した日帰りハイキングを実施してきました。現在七十五回続いています。

 「てくてく」は、兵庫県の播磨地域を担当し、人口五十四万人の姫路市を中心にして活動をしている姫路医療生協のサークルです。

 七年前、組合員の健康づくりの一環として生まれました。最初は保健委員会が中心になって運営、途中からサークルになりました。

 サークル会員は百二十人ぐらいになりました。日帰りハイキングは、口コミで広がり、初めての人が毎月三―四人くらい参加します。未組合員が参加してくれたら、医療生協の組合員になってもらい、医療生協を知ってもらうように働きかけています。

 実施前には運営委員会を毎月必ず持って行き先や内容を決めます。一回五千円を通常費用とし、できるだけ安く、おいしい昼食が食べられて、観光地でない隠れた歴史的文化財を含む穴場を捜し出して実施しています。

遠くは福井まで

 行動範囲は西は広島県、高知県、東は岐阜県、北は福井県、南は和歌山県などまで出かけます。

 会員から希望がたくさん出され、すでに四年先の五十コースまで予定が決まっています。

 十月には初めて一泊のバスハイクを実施する予定で、これも組合員から「一泊のバスハイクがしたい」という要望が出され、実現しました。

 参加者の平均年齢は六十八歳前後、約八割は女性で、最高齢は八十五歳くらいです。バスハイクといっても少しは歩きますから、気分転換、介護予防と健康づくりにもなり、とてもいいのです。知らないところを訪ね、歴史を学び、知的刺激を受けることも、人気の秘訣(ひけつ)かもしれません。また、組合員の親睦(しんぼく)、交流がはかられ、楽しく愉快な一日になるように工夫しています。

 申し込みが遅れると四十五人定員に入れず、キャンセル待ちになるほどで、姫路周辺でも市民権を得るほどになってきました。

 「てくてく」の会員は、生き生きしていて、医療生協の支部活動でも力を発揮し、多くの人が行事や社会的活動などでも大きな役割を果たしてきています。

 (岸本守・姫路医療生協・「サークルてくてく歴史散策」委員長)


楽農(らくのう)

つくって売れる喜び

長野・御代田町

地図

 長野県北佐久郡御代田(みよた)町。東は軽井沢町、西は佐久市と境を接するこの町の豊昇(ほうしょう)という六十余戸の集落に、すこぶる元気な老夫妻がいます。農業を営む市村春重さん(86)と妻の英子さん(77)です。

米、野菜づくりに

 市村さんは、農民連(農民運動全国連合会)の「農産物の輸入に抗してものづくりを」のよびかけに応えて結成された佐久楽農倶楽部の最高齢会員。米やさまざまな野菜づくりに精を出しています。佐久地方は長寿の地として知られていますが、楽しく農に生きる市村さんのような姿にその秘密があるようです。

 水田五十アール、畑六十アールの耕作は、集落でも一、二を争う規模です。実りの秋を迎えて春重さんは間もなくコンバインを自ら運転し、稲刈りを始めます。「コンバで刈れば一反二畝(十二アール)の田も二時間で終わる」―。春重さんは、この年齢でもコンバインに乗れるのだ、と言わんばかりに「コンバ」を連発します。

 九月下旬のある日、二人はいつものように朝五時すぎには軽トラックで仲良く畑に出勤です。

 サヤインゲンを採り、その横のナスを採り、別の畑に回って長ネギを掘り、クマが出るというクリの畑でクリ拾い。八時すぎの朝食までに、自宅前の車庫の隅で、収穫物を束ねたり、袋に入れたりと荷造りに忙しい。

地場産コーナーへ

 そして、商品にできあがった産物を軽トラで町内外のスーパー二、三店舗の地場野菜コーナーに運び、自分で値段を付け、陳列しました。

 サヤインゲンが得意な春重さんは、二百グラム入りのパックを一日に四十、五十と出します。これがたったの百円の値付けですからすぐに売れます。

 春重さんは、その日のうちに売り切れることがうれしくてたまりません。同居する会社員の長男夫妻の子どもたちに小遣いをあげられる楽しみの源泉もここにあります。

 春重さんは、元をただせば国鉄マン。いわば定年帰農のさきがけ的存在です。佐久楽農倶楽部は、四年前の発足時の六倍、約三百人の組織に成長しています。その多くが、元気な高齢者であり、定年帰農者です。

 倶楽部には、米部会、スーパーマツヤ五店舗の地場産コーナーに出荷するマツヤ部会、殿様ねぎ部会、トウモロコシ部会、地油を作る菜の花部会、モロッコいんげん部会などがあります。あまり苦労せず、お金もかけず、楽しみながら農業を続けるというのが、佐久楽農倶楽部の精神です。

 春重さんは、マツヤ部会の有力メンバーであり、農民連の準産直米運動を支える米部会の一員です。この秋もコシヒカリ全量出荷で、「機械の下になったり転ばしたりしなければいいけど」という英子さんも笑顔が絶えません。

 (土屋浄・佐久楽農倶楽部事務局長)


 準産直 農民連の米の産直部会の消費者、米屋さんとの顔の見える産直(産地直結)に対し、中間に卸業者が入る取引を「準産直」と呼んでいます。全農―超大手米卸ラインとは別の新しい流れとして注目されています。


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