2006年10月2日(月)「しんぶん赤旗」

安倍新政権にどうのぞむか

NHK日曜討論 志位委員長の発言

(大要)


 一日放映されたNHK「日曜討論」での日本共産党・志位和夫委員長の発言(大要)は次の通りです。聞き手は影山日出夫解説委員。


非常に危険だが脆弱な基盤の内閣

 ――志位さんは安倍首相と同じ一九五四年生まれですね。若い世代に政治の舞台が回ってきたと思いますか。

 志位 年は同じですが、考え方は古いと思います。内閣の顔ぶれを見ても、靖国神社参拝派、憲法改定派、教育基本法改定派がずらりと並んでいます。目指すものは、結局、戦後民主主義の政治制度を壊し、平和憲法を壊すことで、ここに(目標が)向けられている非常に危険な内容を持っていると思います。

 同時に、安倍首相の所信表明演説を聞いても、これだけ外交、内政ともに行き詰まった自民党(政治)を、どう打開するのかというのが見えてきません。外交では、小泉首相が靖国参拝を続けたあげく、アジア外交はすっかり行き詰まっている。この状況があるのに歴史認識は一つも語りませんでした。内政では、格差社会と貧困の広がりという問題があるのに、打開策は示せない。非常に脆弱(ぜいじゃく)な、基盤のもろい内閣でもあると思います。

 ――政権発足直後の世論調査を見ると、内閣支持率は60%から70%となっています。これはどう思いますか。

 志位 内容の面への期待というよりも、新しい内閣への期待でしょう。内容自体が国会論戦で明らかになってくれば、大きく変わってくると思います。

論戦で歴史認識をしっかりただす

 ――小泉政権と安倍政権の違いはどこにあるのでしょうか。

 志位 歴史認識が大きな問題としてあると思います。

 小泉首相は、靖国参拝が問題になったわけですが、歴史認識においては、過去の「植民地支配と侵略」の反省を述べたわけです。ところが安倍首相は反省も述べない。ここに非常に大きな問題があると思います。

 ――中国・韓国との首脳会談が実現すれば、安倍内閣を再評価しますか。

 志位 中身がどうなるかによります。歴史認識では三つの点が端的に問われてくると思います。

 一つは、靖国神社の歴史観、つまり日清・日露戦争から始まって中国侵略、太平洋戦争、この戦争のすべてが、“アジア解放、自存自衛の正義の戦いだった”というこの歴史観を、是とするのか非とするのか。私は、安倍さんと一年前にテレビの討論番組で論戦したことがあります。彼は「歴史が判断するだろう」としか言わないわけです。言わないではすまされない問題だと思います。

 二つ目は、「村山談話」の問題です。一九九五年、戦後五十年に出された談話です。過去の戦争について、「国策を誤り」、「植民地支配と侵略」をしたことへの反省を述べているわけです。(安倍首相は)これを引き継ぐと言わないのです。非常に重大な問題です。

 三点目に、一九九三年に出された「従軍慰安婦」問題の河野官房長官談話です。安倍さんは「根拠が崩れた」といって、「修正」を求めてきた経過があります。三点で歴史認識が問われてきます。

 ――国会論戦はどこに的を絞って攻勢をかけていくことになりますか。

 志位 まずは歴史認識についてきちんとただしていきます。この問題では、過去に日本が犯した誤りにきちんと正面から向き合ってこそ、アジアに本当の友人をつくれると思います。

 先日、私は、韓国を初めて訪問して、与野党のリーダー、国会議長と会う機会がありました。三十五年間の植民地支配を強いられた国にとって、非常に痛みと怒りは深いものがあります。同時に、日本とは仲良くしたい、本当の友好を築きたい、そのためには歴史をゆがめることはやめてほしいという願いを強く感じました。本当にアジア諸国と友好な関係をつくっていくうえでも、この問題は避けては通れないと思います。

集団的自衛権行使の検討―狙いは「海外で戦争できる国」づくり

 ――外交の問題で、集団的自衛権の行使の研究に着手すると言っています。ねらいはどこにあると思いますか。

 志位 安倍さんが昨年の講演で、集団的自衛権行使が何のために必要か述べています。“イラクに派遣した自衛隊が外国の軍隊と一緒に活動している場合に、外国の軍隊が襲撃されたときになにもしないでいいのか、だから見直しが必要だ”、こう言っています。結局見直しの必要というのは、そういう場合に外国の軍隊と一緒になって、海外で戦争するところにある。ここが一番の問題です。

 改憲を五年をめどにやろうということも日程にのぼっています。これも「海外で戦争する国」づくりにねらいがあるわけです。ここは断固として反対する論陣を張っていきます。

「再チャレンジ」というが格差社会つくった反省なし

 ――内政では、「成長戦略」とか「再チャレンジ支援策」を語っています。小泉「改革」の負の部分をできるだけ修正していこうという意図は感じませんか。

 志位 「再チャレンジ」というが、はっきり言って中身はなにもありません。

 先日NHKスペシャルで「ワーキングプア」の番組を放映していました。働いても働いても生活保護以下の暮らししかできない人が、四百万世帯にのぼっている事態を告発していました。二十代まではパート・アルバイトでなんとか職をつなげるけど、三十代になったらそれもなくなり、途端に路上生活者にならざるを得ない。こういう実態をつくったのは誰の責任か。労働の規制緩和をやって、派遣労働を拡大してきたのは自民党です。その反省なしに、「再チャレンジせよ、国民はがんばれ」と言っても、これは責任逃れのやり方だと思います。

 ――その基本を直すことが先だと。

 志位 その通りです。経済の問題では、人間らしい労働のルールをつくること、社会保障の充実をはかること。税金は、いまやられているようなお年寄りへの重税、消費税増税という方向ではなくて、大企業は空前のもうけをあげています。バブルのころの一・六倍ものもうけをあげています。減税をやりすぎたわけです。これはもうけ相応の負担を求めるのが筋だと思います。

自民党への審判とともに、「二大政党」ではよくならないと訴える

 ――選挙でオール野党の結集を考えていく余地はあるのでしょうか。

 志位 安倍政権の横暴、暴走に対して国会内での協力は、一致点があればありうると思っています。教育基本法の問題では野党が一致して、与党の改定案については今国会で成立させないという一致点があります。これは非常に大事です。

 同時に、民主党と共産党との間には、政策の基本面で大きな違いがあります。憲法の問題ではまったく違う立場にあります。消費税を上げるという点でも違います。選挙では、自民党政治への審判と合わせて、「二大政党」という形では日本の政治はよくならないと訴えて、日本共産党の前進を訴えていきたいと思います。


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