2006年9月29日(金)「しんぶん赤旗」
主張
米原潜放射能漏れ
核事故の危険を示すものだ
米原子力潜水艦が横須賀港を出港したさい、海水から放射性物質が検出されていたことがあきらかになりました。文部科学省が、出港する原潜ホノルル号の艦尾の水を採取したところ、放射性物質のコバルト58、コバルト60を検出しました。これらは自然界には存在しないものです。
米政府は四月に、原子力空母の横須賀配備をせまるため、五十年以上「一度たりとも」放射能を放出したことはないとの文書を発表したばかりです。原子力艦船を寄港させ、新たに原子力空母の配備を強要する米政府と米政府の言い分をうのみにした日本政府の責任は重大です。
米軍の事故隠し
横須賀港で米艦船の寄港に関連して放射性物質が検出されたのを政府が認めたのは初めてです。
放射能測定船が航行する原潜ホノルル号の後方百メートル以内の範囲内で採取した海水から検出したことや、基地内に設置している四カ所の放射能測定器から異常値がでていないことから、ホノルル号が垂れ流しの元凶であることはほぼ確実です。
ホノルル号の放射性物質漏れの原因は不明です。原子炉を冷やす一次冷却水と二次冷却水の間にある蒸気発生器細管に穴が開き、そこから放射性物質が流れでた可能性もあります。米軍が湾内で冷却水を放出し、放射性物質の放出防止の措置をとっていない疑いもあります。
これまで放射性物質垂れ流しの疑惑があきらかになっても、米軍は事実を否認し、日本政府もそれ以上追及してきませんでした。しかし、今回は、言い逃れは通用しません。
米政府は四月公表の原子力艦船の安全にかんする文書で、原子炉は「四重の防護壁」によって放射能の流出はないと強調していました。それにもかかわらず、今回、放射性物質漏れが起きました。原子炉内にとどまるはずの放射性物質が垂れ流しになったのですから、米政府が原因を解明するのは当然のことです。
米政府は今回の事故の原因をすべて日本国民にあきらかにする責任があります。六八年の佐世保港での原潜ソードフィッシュ号の放射性物質漏れ事故では米側は事実隠しに終始しました。放射性物質の放出はないとの言い分を裏付ける科学的説明や資料について「軍機に触れる」ことを理由に提供を拒否しました。このとき、日本の原子力委員会(当時)でさえ「遺憾」の表明をしたのは当然です。
こんな米政府・軍の横暴をふたたび許すわけにはいきません。麻生外相は米政府文書について、「安全性についての確信」を「いっそう裏付けるものとして信じる」と表明しただけでなく、これを理由に横須賀市にたいして原子力空母配備の受け入れをせまった経過もあります。
日本政府は、日米軍事同盟を優先し、放射能放出の責任をあいまいにしてはなりません。米政府に今回の事故の原因を徹底解明し日本に報告するようきびしく要求すべきです。
原子力空母拒否を
アメリカの原子力艦船の事故が多発しているのはよく知られていることです。米政府が原子炉溶融の事態以外は核事故と認めない姿勢をとっているのは恐ろしいことです。原潜ウッドロー・ウィルソン号炉心溶融寸前(七一年)、空母ジョン・C・ステニス原子炉緊急停止(九九年)など原子炉爆発につながりかねない事故もおきています。唯一の原爆被爆国日本の国民は、米原子力艦船の危険と共存することはできません。
原子力空母配備決定の撤回と原潜寄港の中止を要求します。