2006年9月23日(土)「しんぶん赤旗」
「不良債権の処理」とは?
〈問い〉 「不良債権の処理がおこなわれた」という言葉がしばしば出ますが、どういうことですか? それができる法的根拠は? また、それが実施された後、どんな影響があるのですか?(東京・一読者)
〈答え〉 銀行は、さまざまな会社(企業)に資金を貸しています。会社は銀行から借りたお金で工場を建設したり、部品を仕入れたり、新たに社員を雇ったりして事業を拡大します。しかし、会社の事業が行き詰まれば、借金を返すことが困難になります。倒産なども含めて借金の返済が順調にいかなくなった状態の会社への貸出金のことを、銀行側から見て不良債権といいます。
銀行・金融機関は、その不良債権を貸借対照表(バランスシート)には利益を生まない資産として計上し、その状態を、「正常先」「要注意先」「破綻(はたん)懸念先」「破綻先」などに分類しています。「要注意先」は借金返済の期日が守れなくなり始めている会社のことであり、「破綻懸念先」は経営が破綻する心配のある企業といった具合です。
不良債権処理の方法は、大きく間接償却と直接償却に大別されます。債務者(お金を借りた側)の返済努力や担保処分などによって一部回収が可能な不良債権を貸借対照表に計上しながら、損失額を予想し、これに相当する貸倒引当金を積む処理のことが間接償却。貸倒引当金とは貸したお金が返ってこなくなることに備えて銀行が積み立てている資金のことです。
直接償却は、時間をかけても回収が見込めないと判断された不良債権を、貸借対照表から強制的に除去することです。具体的には、該当の企業を倒産させたり、債権放棄(借金の棒引き)をしたりというかたちをとります。直接償却は資産の減少となるため、これに相当する貸倒引当金や利益の取り崩しが必要になります。
小泉政権は「不良債権の最終処理」を強引に推進しました。そのために大手銀行には10兆円超の公的資金を投入。金融機関に対して不良債権の査定基準を厳格にすることを求め、「破綻懸念先」以下とされた不良債権は2、3年で直接処理させました。
その結果、ピーク時(2001年度末)に43兆円余あった不良債権残額は、04年度末には半分以下に減少はしました。一方で、再生の可能性のあるまじめな企業を含めた多くの中小・中堅企業が無理やり倒産に追い込まれました。(英)
〔2006・9・23(土)〕