2006年9月17日(日)「しんぶん赤旗」
“黄色いハンカチの街”夕張に住み続けたい
巨額負債に広がる不安
六百三十二億円にのぼる巨額の負債が明らかになった北海道夕張市。「暮らしはどうなるのか?」。市民の不安が広がるなか、「がんばろう夕張、がんばろう産炭地」の運動が始まりました。(秋山 強志)
公共料金値上げ生活脅かされる
夕張市は、山田洋次監督の映画「幸福の黄色いハンカチ」の舞台として知られ、市中心部は多くの映画館でにぎわいましたが、その活気は今はありません。炭鉱閉山によって人口は往時の十分の一の一万三千人で、六十五歳以上の高齢者がその四割を占めます。
後藤健二市長は六月、自主再建を断念し、地方財政再建促進特別措置法(再建法)にもとづく財政再建=財政再建団体入りを表明しました。
「一部新聞を見ると、夕張市は明日にでもつぶれそうな雰囲気だ。もう住み続けられないのでは?」「こんな夕張に誰がしたんだ!」。市民の間には、生活を脅かされる怒りと不安が渦巻きました。
市営住宅に住む佐々木秀雄さん(84)は「よくも六百億円もの借金をしてくれたものだ。まさかこんなに借金があるとは思わなかった。町工場ならとっくに倒産だ」。商店を営む男性(80)は「前中田(鉄治)市長が悪い。こんなになるまで手を打てなかった。しかし行くところはないから、ずっと住み続けるしかない」。
財政再建団体に指定されると、市営住宅家賃などの公共料金も値上げをせまられます。市営住宅に住む女性(60)は「住宅の修繕が十分できなくても市民は耐えてきた。働いている人は逃げ出したくても逃げられない。このうえ何を要求されるのか」と憤ります。
なぜこれほどまで借金が膨れ上がったのか。
日本共産党国会議員団の調査に対して「財政構造上の収支のバランスが取れない状況は相当以前からあった」と市幹部は説明しました。
特別会計の赤字を一般会計から繰り入れることで、表面上黒字に見せかける不正常な会計操作を続けました。
国の炭鉱つぶし市に重い負担
財政悪化が深刻になった二〇〇二年以降、市民に十七億円の負担増を強いる「行政改革」を実施し、職員数も半減しました。地方交付税はピーク時から三十四億五千万円も減額され、毎年財政不足で収入の八割を交付税に依存してきた夕張財政は、小泉政権による「三位一体」の交付税削減で決定的な打撃をうけました。
現地調査で大門実紀史参院議員は「夕張を追い込んだのは、小泉首相の責任だ」と指摘しました。
巨額の負債の背景には、国の炭鉱つぶし政策と貧困な産炭地対策がありました。かつて炭都と呼ばれた夕張。山と谷ばかりで石炭以外に産業のない町でした。
閉山で人口は一気に十万人減、急速に過疎化・高齢化が進みました。そのなかでの閉山対策。市の財政担当者は「夕張の歴史は閉山対策の歴史だった」と述懐します。閉山対策費は累積五百八十三億円(うち起債三百三十二億円)に上り、市財政を圧迫し続けました。
なぜこれほど出費を強いられたのか。発端は炭鉱資本の撤退のやり方にありました。
北炭は職員を全員解雇し、炭鉱住宅ごと放り出しました。市は五十億円負担して約五千戸の住宅を引き取り、市営住宅として整備せざるを得ませんでした。夕張市には市立病院がなかったことから炭鉱病院を九億円で引き取り、市立病院として再生させました。上水道も同様です。
炭鉱から観光へ転換しますが、市のゆきすぎや無駄もありました。
再建へ共産党も“頑張ろう”運動
十月の市の再建計画申請を待たずに、先取りで「ゼロベース」の見直しが始まっています。第三セクターなどの三百人近い大量解雇の危機がせまっています。夕張商工会議所の沢田宏一会頭は「なんにもなくなったら大変なこと。何か核になるものを残してほしい」と、共産党との懇談で話しました。
日本共産党の、くまがい桂子市議は「これ以上若い人が出て行ってしまうと、仮に再建計画を立てても意味がなくなる。若者が安心して住み、働ける方策を採らないと」と課題を指摘します。
北炭が閉山しても夕張に残ってふんばって生きてきた住民の苦労と誇り。日本共産党はその思いに応えようと、現地の夕張市委員会を先頭に「夕張が好きだから、住み続けるためにがんばろう」「共産党は一緒にたたかう」と市民を励まし、ともに運動を進めています。紙智子参院議員、党道議団らが政府や道と交渉してきました。
市民団体・個人で結成した「財政問題の市長説明を求める市民有志の会」と共産党は、市民説明会を開くことを求める署名活動を開始。商店主らからは怒りが噴き出し「本当にがんばってほしい」と喜ばれています。
自民・公明両党に支えられた高橋道政は、産炭基金からの借り入れ(夕張市など産炭六市町で七十四億円)に対して「ヤミ起債だ」と攻撃し、「一括返済」を一方的にせまりました。党道議団は、この基金はルールにのっとり運用されたものと反撃、産炭地の首長らの共感をよんでいます。
財政再建団体 市町村は、単年度収支の赤字額が一定規模(標準財政規模の20%)を超えると財政再建準用団体の対象になります。財政再建計画を策定し、総務大臣の承認を受けます。夕張市の標準財政規模は45億円。再建の対象となる実質赤字額(起債を除く)は460億円。

