2006年9月15日(金)「しんぶん赤旗」

侵略の認識が 欠

首相の資格も 欠

“言わない”安倍氏


 「個々の歴史の事実等の分析等については、本来は歴史家にまかせるべきである」

 自民党総裁選で最有力候補とされている安倍晋三官房長官は十一日の総裁選候補者討論会で、日本の過去の戦争に対する認識を問われ、こうのべました。日本による「植民地支配と侵略」へのおわびと反省を表明した一九九五年の村山談話についても「その精神はこれからも続いていく」とのべるだけで、次期政権で踏襲するかどうかを明示していません。

 谷垣禎一財務相が「中国との関係でいうと、これはやはり侵略戦争だった」とのべ、麻生太郎外相が「侵略といわれてもやむを得ない」と語ったのと対照的でした。

 日本の植民地支配と侵略戦争を認め、その反省を示すかどうかは、戦後国際社会の土台にかかわる問題であり、日本の戦後政治の出発点でもあります。現にいま深刻な政治課題となっている日本の外交的孤立の打開をめぐっては、まさに靖国神社が主張する戦争観をどう評価するかが問われています。

 そのうえ次期政権として「村山談話」を踏襲しないとすれば、世界とアジアへの公約を裏切るという点で新たに重大な問題を引き起こすことになります。

 安倍氏は、『正論』二〇〇四年十一月号でも、「国としての成り立ちや歩みが違うわけですからそれをまったく同じ一つの歴史認識として(韓国はじめアジア諸国などと)共有することは土台無理な話」などとのべています。

 こうした議論について日本共産党の不破哲三前議長は、戦争の見方が国によって違うのが当たり前であれば国際連合などでの議論は成り立たない、と指摘。侵略戦争かどうかは、自国の領土拡張や他国の支配を目指したかどうかという客観的基準で明らかになるのだとのべています。この点で日本のやった戦争は領土拡張の野心を最大の原動力とした、まぎれもない侵略戦争でした。

 言を左右にして、自らの歴史認識を示さない安倍氏の姿勢は、侵略戦争と植民地支配への反省のない立場を示すものです。

 実際、安倍氏は「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の事務局長として、「従軍慰安婦」の教科書への記載を激しく攻撃する運動の急先ぽうの役割を担ってきました。

 九七年五月二十七日の衆院決算委員会で安倍氏は、自民党だけでも六十人近くで「若手議員の会」が発足したことを報告しつつ、「従軍慰安婦の記述についてはあまりにも大きな問題点をはらんでいる」「どちらにしろこれは私は事実ではない」と攻撃しています。

 「歴史家にまかせる」などという安倍氏の言い分は、こうした自らの言動を国民の目から隠すためのものといわれても仕方ありません。

 すでに米国の週刊誌『ニューズウィーク』最新号が「周辺国はすでに彼のことを懸念している」と書き、『タイム』も「東京裁判の正当性を疑問視する」安倍氏が首相になれば「(中国や韓国との関係悪化の)傷が悪化する可能性がある」と書きました。

 こうした問題で、明確な歴史認識を欠く人物が首相の資格を持たないのは当然です。(中祖寅一)


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